第17話 冷たい僕
「幼馴染やのに冷たいやろう? 盆も帰ってこうへんし、ホンマ親不孝やわぁ。なぁ小母ちゃん」言ってどさくさ紛れにコタツの上のミカンをもう一つ手に取った。
僕は、恵美の言う事に反論できないでいる。というよりも、それが面倒だと思ったというのが正直なところかもしれない。眼球だけを動かし、母を確認した。気付かれてはいないようだ。
「ミカン頂戴って言え!」
恵美からミカンを奪い取る。それ以外に言い返す言葉が見つからなかった。
「なぁ順平。自殺あったんやろ?」
恵美は悪戯に僕を睨んだ後、母の存在を気にしてかコタツの上に身を乗り出し小声で言った。
「何で知ってんねん?」
口に含んだミカンを噴き出した。慌てて拾う。もう一度口へ運ぶ。
「ネットに載ってたで」
恵美はそう言って、コタツから片方の足を出した。
「友達やってん。いつも一緒に居るメンバー」
「残念やったね。何で自殺なんかしたん? 原因は?」
「僕にも分からんねん……。ずっと一緒に居ったのに……。ずっとな……」
互いに喋らず、気まずい空気が流れる。
「そういえば、前にも変な書き込み見たで」
「そうなん? 僕の大学、そんなに評判悪いんかな」
「順平が居るからな!」
恵美はそう言って笑った。その顔は初登校する子供を見送る母の様な、優しくも憂わし気な表情だった。
「なんでやねん!」と、僕は無理をして笑って見せる。
「でも、順平は元気そうで良かったわ!」
そう言って立ち上がり微笑むと、玄関の方へ足を向けた。
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