第142話 新規パーティーメンバー
「とりあえず登録と魔物素材の売却は終わったな!!」
「次は宿屋探しですね。」
「誰か新人冒険者にぴったりな宿に心当たりはないか?」
「シルビアさんのところは~?」
「大熊宿か…あそこは高級宿なんじゃないか?」
「い、意外とそうでもないらしいのです!!」
「そうなのか…じゃあ行ってみるか。」
久しぶりのコルセアの街を見回しつつ、大熊宿に到着した。
本来なら明るい気持ちだが、俺は後ろめたい気持ちで宿に入った。
「ようこそおいでくださいました。…あら、皆さんお久しぶりですわ!!」
「お久しぶりです。シルビアさん。」
「アルフレッド様…少々こちらへ来てください。」
「は、はい…」
シルビアさんは俺を見るや否や、ムッとした表情で俺を呼び出した。
自覚はある。
それは、シルビアさんの妹であるソフィアと直接別れの挨拶が出来ないままアインザスを飛び出してしまったことだ。
卒業式の後は何故か学校内に入ることが許されなかったため、俺は急いで別れの挨拶を手紙に書いてアランに届けてもらったが…
「私の妹に顔を合わせないまま飛び出すとはどういったつもりでしょうか?手紙で悲しんでいましたよ?」
「す、すみません…まさか結果開示と卒業式が連続していて、さらに卒業式後は校舎内に入れないなんて知らなかったんです…」
「ソフィアの手紙にも書いてありましたわ。アラン様のお戯れのせいだと…」
「それに、ソフィアは俺達が卒業したらここで働くと言っていたので会えるかと思って来たんです!!」
別れの挨拶ができないまま旅立ってしまい、実は心のささくれになっていた。
なので、近いうちにここを訪れてソフィアに顔を見せようと思っていたのは事実だ。
「そうだったんですわね…ソフィアは明日帰って来ますわ。」
「分かりました。ありがとうございます。」
話がひと段落着き、4人の元へ戻った。
「失礼しましたわ。それでは宿泊の手続きを致します。」
どんな顔をしてソフィアに会えば良いのか?
会ったら何て言えば良いのか?
それが気がかりで、宿泊説明が全く頭に入ってこなかった。
そんなこんなで頭を悩ませているうちに夜を迎えた。
俺は覚悟を決め、眠りについた。
翌朝
『最初に何て言おう?久しぶり…は違うよな。おかえり…も違うだろうし…』
そんなことを考えながら朝食を取っていると、ガチャッと扉が開いた。
そこから現れたのは銀髪のストレートに青い瞳を持つ、メイド服を着た美女だった。
…そう、ソフィアだ。
俺は突然の出来事に驚き、その場を立って扉の方に目が釘付けになった。
「ソフィア…」
「アルフレッド様…手紙読みました。アラン教授のせいなので気にしないでください。」
「あ、ああ…」
「それに、教授には責任を取ってもらいましたから。」
ソフィアの表情に闇を感じ、ゾッとした。
一体アランは何をされたのだろうか?
「数日ぶりだな!!」
「はい。」
「よ、予定通り会えて嬉しいのです!!」
「私もです、イザベル。」
『…ん?予定通り…?』
「私から説明いたします。教授のことですので、こうなることは予期しておりました。そこで、女子で集まって再会場所を決めていたのです。」
「なるほど…俺もここで冒険者登録して、ソフィアと会うことを考えていたけど一緒だったのか。」
「そういうことになりますね。」
実はブルーノ帝国帝都で冒険者登録をし、コルセアに戻ってソフィアと会おうと思っていたが…
それは隠しておこう。
「アルフレッド〜」
「どうしたスー?」
「ソフィアをパーティーの一員にしちゃダメかな〜?」
パーティーメンバーを一瞥すると、全員頷いていた。
ソフィアは本人もそれを望んでいるようで、こちらを見てゴクリと唾を飲んだ。
「むしろこっちからお願いしたいくらいだよ。ようこそ、俺たちのパーティーへ!!」
「…っ!!今後ともよろしくお願い致します!!」
将来建てるであろうパーティーハウスの管理人にぴったりだ。
これは本当に俺が考えていたことだ。
帝都からコルセアには、パーティーハウスの管理人として雇うために来るつもりだったのだ。
「良かったなソフィア!!」
「クレアは予定を忘れてアインザスで冒険者登録しようとしてたけどね〜」
「…そうなんですか?」
「じょ、冗談だよー!!オレがソフィアのこと忘れるわけないだろ??」
「それもそうですね。」
「きょ、今日は新メンバーの歓迎会を開かないとなのです!!」
「そうだな!!今日は一日楽しもうか!!」
「はい!!」
それから大熊宿の食卓で普段は頼まないような高級料理をバンバン注文し、ワイワイ騒ぎながら暴飲暴食した。
成人したのでクレアとスーが調子に乗って酒を頼んだが、不味いと言って俺に渡してきた。
俺は前世で上司によく飲みに連れて行かれたので、酒に強いし味もわかる。
“状態異常無効“のユニークスキルのせいで酔えなかったが、即座に解除してほろ酔いを楽しんだ。
皆が食べ終えると、シルビアさんが支払書をこっそり俺に渡してきた。
クレアとスーが爆食いしているのもあり、そこには大銀貨9枚と小銀貨8枚と書かれていた。
「払えますわよね?」
「あ、ああ。」
『歓迎会とはいえ10万円近く食べるとは…』
「よっ、流石アルフレッド!!太っ腹だな!!」
「ちょっ、クレア!?」
「全額払ってくれるなんて流石アルフレッドだね〜」
「スー!?」
「ご馳走になりました。」
「ソフィアまで…今回だけだからな!!」
「助かりました。」
「ありがとうなのです。」
多少の支出はあったが、ソフィアと再会して楽しく過ごせたのでお釣りが来るくらいだ。
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