第123話 古代文明都市 進攻
翌朝
「おはようなのじゃ!!」
「おはようございます。早いですね。」
「うむ!!楽しみじゃからな!!」
いつも通りヒカリゴケの発光とともに目を覚ますと、既に師範が起きていた。
それから一緒に早朝訓練と朝食を取り、最下層へ行く支度を整えた。
「…お主、準備はできたのじゃ?」
「はい。」
「うむ!!早速出発するのじゃ!!」
扉を開け、地下10階へ続く螺旋状の通路へ出た。
『えっ…?』
何故かこの通路だけ、光源が電気では無く左右の壁に掛けてあるランタンだった。
黒い装飾品に青色の炎…まるでラスボス前の道のりみたいだ。
『ん…?あっ、これホログラムか。そりゃあ何百年も火が灯し続けるわけないよな。』
この通路だけ豪華なのが気になり、隠し部屋で見つけた地図と説明文を閲覧した。
「地下10階は……が新設した階層である。敵の機械生命体が異様なほど強く、我々は……辿り着くこと叶わず謎に包まれている。」
『なるほどな…』
おそらく国と対峙していたあの開発者が、最後の砦として新設したのだろう。
そこはきっと玉座のような場所で、魔王のロールプレイができるだろう。
『くっ…厨二心が疼く!!俺だったら漆黒の玉座みたいなの作りたいな…』
「…さっきから何をニヤニヤしておるのじゃ?」
「あっ、いえ。何でもありません…」
この世界に転生してからというもの、精神年齢が肉体年齢に引き寄せられている感じがする。
最近自己顕示欲や承認欲求が強まってきているのも納得がいく。
「では進むのじゃ。」
「はい。」
“機械探知“に“魔物探知“、“罠探知“、“構造探知“と“探知“スキルを駆使して移動を始めた。
だんだんと歳を重ねて脳が成長してきているからか、負荷を感じにくくなってきた。
「…罠です。止まってください。」
「うむ。」
“罠探知“により、右壁と地面に反応があった。
右壁は触れることで毒矢が飛んできて、地面は踏むことで毒棘に落とされるようだ。
「…即死する罠です。俺の踏んだところを正確に通ってきてください。」
「わ、分かったのじゃ。」
対騎士団用に罠を張っただけあって、なかなか危険度が高い。
解除するのは難しいので、慎重に罠を回避して進んだ。
「ここも罠です。」
「うむ。」
「ここも…」
「う、うむ…」
「あっ、そことそこも…」
「ええい、一体どれだけの罠があるのじゃ!!」
「し、仕方ないじゃないですか。そんなに怒らないでくださいよ…」
「む…すまなかったのじゃ。」
それにしても、罠の量が異常だ。
大体10m感覚で1つ以上の罠が仕掛けられている。
『…これはなかなか骨が折れるな。』
それから時間をかけて罠を回避して進んだ。
地下10階まであと200mといったところまで辿り着いたころ。
『…っ!!』
今まで”罠探知”にしか反応しなかったが、突如”機械探知”にも反応が現れた。
ラスボス部屋の扉の前に2体の中型と、扉の先に1体の超大型がいる。
『中型2体はDランク魔物、リザードマン型みたいだな。』
リザードマンは沼地に生息する二足歩行の魔物で、硬い鱗で身体が覆われているのが特徴である。
ゴブリンやコボルドより知性や器用さが高く、人間の作った武器を人間のように扱うことができる。
扉の前の2体は、槍を装備しているようだ。
『超大型は…なっ、ドラゴン型だと!?』
ドラゴンは世界三大厄災の1つで、Sランク冒険者が束になって戦っても勝てないと言われている。
扉の先にいる個体は体長は20mほどで、でかい図体と巨大な翼はまるで絵本に出てくるドラゴンのようだ。
扉の方に顔を向けており、気付かれたらドラゴンの代名詞であるドラゴンブレスで即死だろう。
『ドラゴン型をどうしたものか…』
「弟子よ、何を悩んでおるのじゃ?」
「実は…」
今掴んだ情報と考察を、細かく説明した。
ドラゴンの名を出した時に師範の顔が険しい表情になったのは、ドラゴンに対して何らかの恨みがあるのだろうか?
「リザードマンは簡単に屠れるじゃろう。1体ずつ同時に仕留めて扉を開け、ドラゴンの左右を位置取るのじゃ。」
「なるほど…」
そうすればドラゴンはどちらを攻撃するか迷い、一瞬とはいえ攪乱されるはずだ。
その隙に強力な攻撃を打ち込めば…
『…勝てる!!』
罠を回避しつつ作戦を緻密に計画して進み、ついにリザードマン型の近くまで辿り着いた。
2体は槍を地面につけて構えたまま微動だにしない。
地下5階や隠し部屋で手に入れた防具をしっかりと装備し直し、状態を整えた。
そして破壊の両手剣を構え、”闘気操術”を行使して身体能力を向上させた。
「同時に行くのじゃ。3…2…1…今じゃ!!」
「はぁぁぁ!!!」
合図と同時に両手剣Lv.8”グランドハザード”を行使した。
リザードマン型は俺達に気が付いたが、もう遅い。
”グランドハザード”の初撃の広範囲攻撃で2体の体勢を崩したのだ。
俺はそのまま奥の敵に5連撃を、師範は手前の敵に通常攻撃を仕掛けた。
「ちっ…!!」
隠し部屋で見つけた紙に書いてあった通り、異様なほど強さ…というか頑丈さが増している。
体表が非常に硬く、少し傷がつくだけで致命傷にはなり得ない。
「はぁぁぁぁ!!!!」
攻撃力が足りないのならば、攻撃回数で押すまでだ。
何度も両手剣Lv.7”ジェノスストリーム”にスキルチェインし、7連撃を永遠に浴びせた。
リザードマン型は槍で反撃を試みてきたが、攻撃を回避して行使し続けた。
数分後
「これで…トドメだ!!」
小さな傷が積もりに積もり、ひびが入った場所へ両手剣Lv.4”インパクト”で強力な1撃を放った。
ひびはバキバキと音を立てながら全身に広がり、そしてリザードマン型を粉砕した。
「師範、終わりまし…」
振り返ると、師範は既にリザードマン型を倒して座っていた。
やはり師範にはまだ敵いそうにない。
「うむ。ではドラゴン退治といくのじゃ!!」
「はい!!」
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