第114話 古代文明都市 隠し部屋

「ふむ…すんなり開いたのじゃ。」




「開きましたね。」




「…ところでお主、装備を選び終えたんじゃな。」




「あっ、はい。どうですか…?」




「ふむ…なかなか似合ってるのじゃ。」




「ありがとうございます!!」




師範のチェックは合格だったらしい。


…まあ不合格だったとしても俺はあまり気にしなかったが。




それはさておき、今はこの扉の向こうだ。


ひとまず”機械探知”と”魔物探知”を行使したが、どちらも反応はなかった。




『一応他の生命体の探知も…試してみるか?』




”探知”を派生させて”人族探知”を習得し、それと”悪魔族探知”を行使した。


しかし、この2つにも反応はなかった。




「中には誰もいないみたいです。」




「ふむ…そろそろ日の入りでヒカリゴケが使えなくなる頃じゃし、この部屋の探索は明日に回すのじゃ。」




「分かりました。」




中が気になってうずうずするが…


機械生命体が押し寄せてきたりしたら大変なので、師範に言われた通りにしよう。




翌朝




「む…おはようなのじゃ。」




「おはようございます。俺と同じ時間に起きるなんて珍しいですね。」




「扉の中が気になって居ても経ってもいられなかったのじゃ。」




「一緒ですね。」




「うむ。ほれ、さっさと準備するのじゃ!!」




「はい。」




軽い朝食とウォーミングアップを終え、再び扉の前にやって来た。




念のため、もう1度中に生命体がいないか“探知“で調べた。


加えて“罠探知“も行使した。




「…やっぱり何もいないみたいですね。」




「罠はあるのじゃ?」




「いえ、無いみたいです。」




「ふむ…今から中に入るのじゃ。少し離れてるのじゃよ。」




「はい。」




武器を構えて待ち、師範が扉をそっと開けた。


ギィィ…と音を立てながら、特に何事もなく開いた。




「…ふむ。妾に付いてくるのじゃ。」




「はい。」




そこは縦横5m、高さ8mくらいの小さな部屋だった。


左右の壁には武器、中央にはセット装備が飾られている。


奥には机があり、机上には沢山の書類が散らばっていた。




「ここは…?」




「何じゃろう…検討もつかないのじゃ。」




「ですね。罠も…無いみたいです。」




「うむ。妾は奥の書類に目を通すから、お主は“鑑定“を頼んだのじゃ。」




「分かりました。」




まずは壁に飾られている武器を“鑑定“しよう。


片手剣に両手剣、短剣、細剣、槍など見た限り全種類の武器が揃っている。




『さて…始めますか。』




それからじっくりと時間をかけて全ての武器を“鑑定“した。


もちろん全て覚えていられないので、紙に書き出している。




結果、全てC〜SSの高ランク武器ばかりだった。


共通点としては、全武器に“機械特攻“というエンチャントが付与されていた点だ。




『この部屋は…もしかしてレジスタンスの拠点か?』




そう考えると、色々と辻褄が合う。


例えばこの施設には不似合いな鍵を使っていた点や、高ランク武器が博物館の方に展示されていない点などだ。




それに何より“機械特攻“のエンチャント…


こんなにピンポイントなエンチャントは初めて見たが、古代文明期の技術なら十分あり得る。




『…ひとまずセット装備も“鑑定“するか。』




セット装備とは、言葉の通り全身1セットの装備である。


中にはセットで装備することで追加効果を得られるものもあるらしい。




こちらもじっくりと時間をかけて1つ1つ“鑑定“した。


とはいえセット装備は5つしかなかったので、すぐに終わった。




結論から言うと、全てかなり壊れ性能だった。


ランクはSが3つとSSが2つで、ステータス値を激増させる効果がついていた。




「弟子よ、終わったのじゃ?」




「はい。師範は?」




「何が書いてあるのかさっぱりなのじゃ…でも地図と敵の分析は見つけたのじゃ。」




「おぉ…!!俺も目を通してみますね。紙に書き出しておいたので、確認お願いします。」




「分かったのじゃ!!」




さて、ここからは“言語理解“の出番だ。


机上に置かれている紙に向けて行使してみた。




「後に……を読んだ者へ。ここは……実験施設である。………機械を研究していたが……に施設が占拠されてしまった。……施設は彼の玩具箱となり、我々は実験動物にされたのだ。……者よ、どうか最下層にある……を破壊して欲しい。」




『なるほど分からん…』




著者の願いを叶える気は毛頭ないが、どのみち最下層に行くつもりだった。


掠れて読み取れない何かを破壊するかどうかは、実物を見て価値を考えてから決めよう。




「何か分かったのじゃ?」




「いえ…何も読み取れませんでした。」




「うむ。さて、ひとまず装備と武器をいただくのじゃ。」




「そうですね。今装備と武器替えますか?」




「うむ。妾はこの装備と片手剣がいいのじゃ。」




「じゃあ俺はこれとグレートバスタードソードを貰いますね。」




俺が選んだのは以下の2つである。




1.“闇のセット装備SS“:黒いモヤを放つ真っ黒な装備。“被ダメージ30%減“の効果を持つ。(長袖、長ズボン、フード付きローブ、靴のセットなので“ブラックナックルグローブと併用可)


2.“破壊の両手剣SS“:漆黒の両手剣。“機械特攻“が付与されている。




『全身真っ黒で装備も黒とか…ちょっと嫌だなぁ。』




「お主…黒が良く似合うのじゃな。」




「えっ?ありがとうございます。」




師範のチェックが合格なら多分大丈夫だろう。


残ったセット装備と武器を“アイテムボックス“に収納し、隠し部屋を後にした。

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