第85話 疑惑
「師範!!弟子アルフレッド、到着しました!!!」
「その笑顔はなんなのじゃ…?どうせ今の戦いに触発でもされたのじゃろ?」
「はい!!」
「はぁ…まあやる気があるのはいいことじゃの。早速訓練施設で稽古を始めるのじゃ!!」
今日は走らずにゆったり移動するようだ。
せっかくなので、移動中に師範と話をしよう。
「師範、質問してもいいですか?」
「なんじゃ?」
「ライオネルもかなり強いですが、後継者候補に取らないんですか?」
「お主何を言っておるのじゃ?龍人族を吸血鬼にできるわけないじゃろうが。」
「…え?」
「あぁ、そういえば伝えるのを忘れておったのじゃ。吸血鬼は人間にしかなれないんじゃよ。他種族が吸血鬼になろうとすると間違いなく死ぬのじゃ。」
『そんな重要なことを言い忘れてたのかよ!!やっぱり362歳だから仕方ないか…』
「お主…今年齢について考えたじゃろ?」
「ひっ…そんなことないですよ…」
心の中でロリババァと言ったときとは全く異なり、すぐ右から尋常じゃないほどの殺気が放たれた。
どうやら年齢はタブーだったようだ…
「勘違いじゃったか…すまぬ。許すのじゃ。」
「は、はい…」
今後は年齢について、絶対に何も考えないようにしよう。
俺の命が危うい。
「…っと、着きましたね。今日の稽古は何を?」
「昨日と同じじゃ。片手剣でひたすらに案山子の魔道具に打ち込み続けるのじゃ。」
「はい!」
今日の予定は2試合だけで10:00前に終わったので、日が暮れるまで8時間ほどある。
明日は決勝戦なので体力は残しておきたいが…
『…とりあえず始めるか!!』
「あ、そうじゃ。すまぬが妾は用事があるから自主練しておるのじゃぞ。」
「はい。」
きっと麻薬騒動の後処理だろう。
先程師範の部屋に行ったとき、目の下に隈ができていることに気付いた。
やはり睡眠時間を削って仕事していたのだろう。
『…俺も頑張るか!!』
昨日と同じく両利きになるために左手に片手剣を装備した。
右手には盾を装備し、普段とは逆の構えで案山子に打ち込んだ。
数時間後
「おっ、ちゃんと励んでいるようじゃの。」
「師範!!おかえりなさい!!」
「うむ!!差し入れを持って来たから昼食休憩にするのじゃ!!」
「おぉ…!!美味しそう…!!」
木でできた籠の中には、ハンバーガーやサンドイッチのような食べ物が詰まっていた。
前世ではよく休日に食べていたものだ。
「ブルーノ帝国の特産品なのじゃ!!ちなみにこれは妾が発案した食べ物なのじゃ!!」
「師範が…っ!!もしかして世界中に多くの新しい食べ物をもたらした美食家エレノアって…」
「うむ!!妾のことなのじゃ!!」
「おぉ…おぉぉぉぉ!!!!!!」
麺類やパン類、発酵食品や加工食品など、この世界の食文化のほとんどが美食家エレノアが開発してもたらしたと言われている。
やはり長く生きてるだけあって…おっと、これ以上は危ない。
「じゃ、じゃあ早速…」
ハンバーガーのようなものをいっぱいに頬張った。
パンの間にはチーズと肉が挟まっていて、前世で言うチーズバーガーだった。
「美味しい…!!」
「そうじゃろうそうじゃろう!!」
師範にこんな側面があったとは。
見た目が幼女で力もあり、家庭的な一面もある…一部の人がドハマりする属性持ちだろう。
『待てよ…?』
これほど多くの地球食を再現していると、師範が転生者か転移者という可能性が払いきれない。
ここは1つ、鎌をかけてみよう。
【…How did you cook this?】
試しに”言語理解”のユニークスキルを解除し、前世の共通言語である英語で話しかけてみた。
転生して英語を使わなくなってから12年が経過し、発音やアクセントはたどたどしかったが…
どう反応するだろう?
「…?お主、何て言っておるのじゃ?」
「あっ、すみません。口に含んだまま喋ってしまいました。これどうやって作ったんですか?」
「うむ!!これはじゃな…」
どうやら師範は本当にこの世界の住人らしい。
英語で質問したとき、聞き取れなかったようで口をポカンと開けておどおどしていた。
疑いが解けて良かった。
それから楽しく昼食を取り、打ち込みに戻った。
「ふぅ…さて、稽古再開じゃ!!妾は仕事に戻るのじゃ。」
「はい!!」
再び稽古を始めて数時間後
「ピロンッ!!」
「今のは…システム音だよな?」
ステータスを開き、スキル欄を見てみた。
すると、片手剣のLvが5→6に上がっていた。
「どうしてスキルLvが上がったんだ…?」
何故スキルLvが上がったことに驚いているのか。
実は、今まででスキルLvが上がったのはソードスキルを反復練習したときだけだったからだ。
『…いや、よく考えてみればソードスキルを反復練習してTP切れを起こしてる間は通常攻撃をしてたな。』
つまるところスキルLvが上がる条件は、そのスキルの熟練度に関係している。
おそらくソードスキルを反復練習した方が熟練度の上昇する値が大きく、通常攻撃では小さいから今まで誤解していたのだろう。
試しに熟練度について意識しながら片手剣Lv.6の項目を”鑑定”してみた。
すると、”熟練度0/1,000,000”という表記が現れた。
『やっぱり…!!師範もいないことだし、少し実験してみるか!!』
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