第69話 剣闘祭 第2回戦 vsカサンドラ校

翌朝




俺はクレアが目覚める前に起き、宿の裏庭で軽く訓練をした。




「朝から精が出るネ〜!!」




「おはようメリッサ。」




「今日の試合頑張ってネ〜!!うちを儲けさせてヨ!!」




「まあ俺の出番はないけどな。」




「それってどういう意味かナ?」




「…タダで情報やると思うか?」




「ちょっ、アルフレッドきゅん⁉︎酷いヨ…!!」




「冗談だよ。クレアが1番手に回ったからな。あいつの5人抜きだ。」




「なるほどネ〜…良いことを聞かせてもらったヨ!!」




「そりゃ良かった。そろそろ準備するからまたな。」




軽く汗を流したあと、自室に戻った。


すると、そこには赤面したクレアがいた。




「どうした?」




「ここ…アルフレッドのベッドだよな?」




「ああ。」




「つまりオレは…一線を越えたのか⁉︎」




「…いや、昨晩対策会議してすぐ寝落ちしたんだよ。寝てる中持ち運ぶのも忍びないからな。俺のベッドを貸してただけだ。」




「そうか…」




あからさまにしょんぼりしている。


…それなら据え膳を食ってしまえばよかった。




「それより早く準備しろ。今日はクレアが戦う日なんだから。」




「そうか…そうだったな!!準備してくる!!」




1番に準備を終えたので、4人を待って一緒にコロッセオへ向かった。


控室に着いて全員分の装備を選ぶや否や、急いで賭場へ向かった。




「オヤジさん、アインザス校1番手クレアの5人抜きに金貨1枚!!」




「はいよ。…ってか坊主、1戦目もうじき始まるぞ。大丈夫なのか?」




「ギリギリ間に合う!」




「そうか。気張れよ!!」




「ああ!!」




多くがアインザス校の勝利にBETしているためオッズは低いが、それでも2.8倍だ。


大量の利益にワクワクしながら控室へ戻り、すぐに準備を終えた。




「早かったですね。」




「急いだからな。クレア、頑張れよ。」




「おう!!オレに任せろ!!」




一昨日のイザベルもそうだが、本番で緊張しないのは才能だと思う。


俺は自分の番が来たら絶対緊張してしまうだろう。




「よし、じゃあ行くぞ!!」




「おう!!」




「アインザス校の入場だーー!!」




「おおおおおおおお!!!!!」




「第1回戦で活躍したイザベル選手は4番手に回り、クレア選手が1番手に代わったようです。」




「果たしてクレア選手の実力は如何程なのかーー!!」




カサンドラ校は戦順を変えていないようで


マクレイを先頭に整列している。




「それでは第2回戦1試合目を始めます!!」




俺達はクレアとマクレイを舞台に残し、壇上から降りて見守った。


マクレイの得物は片手剣と盾…クレアの両手剣と特に有利不利はない。




「それでは両者武器を構えて…試合開始!!」




「おらぁぁぁ!!!」




クレアが咆哮と共に距離を詰めた。


マクレイはその場で防御の構えを取っている。




そう、これは対策会議で考えた戦略だ。


マクレイは相手が自分より弱い時しか積極的に攻めないチキンである。




クレアはその対象に当てはまらないので、防御の構えを取ってカウンターを狙う。


また、盾で武器を弾いて相手の体勢が酷く崩れたときしかカウンターをしない。




しかし、体幹が異常なほど強いクレアにその戦略は通用しない。


なのでクレアに積極的に攻めるよう、言い伝えてあるのだ。




「クレア選手の猛攻が続きます!!マクレイ選手、防御に達することしかできません!!」




『クレアの攻撃を防ぐか…なかなかやるな。』




しかし、猛攻を防ぐことでマクレイの盾は耐久値がみるみる減っている。


そろそろ盾を壊すか、隙を見つけて傷を負わせたいところだ。




『武器が壊れたら次の試合からしか交換できないからな…』




耐久値はクレアの両手剣の方が若干多いが、マクレイには片手剣もある。


もし両手剣が壊れたら、負けるのはクレアだ。




『俺の金貨1枚が…頑張ってくれ!!』




猛攻が続くこと10分余り。


マクレイが猛攻に耐えかねて行動を起こした。




『チャンスだ…!!』




盾が壊れるのを恐れたのか、今度は片手剣で防御しようとした。


盾Lv.2“シールドバッシュ“で盾による攻撃を狙っているようだ。




クレアは座学が苦手だが、戦闘のことになると別だ。


盾の攻撃を狙っていることを瞬時に察し、あえて盾を持つ左手の下へ潜り込んだ。




これによって“シールドバッシュ“は空振りし、システムアシストの勢いで体勢を崩した。


防御のために構えていた片手剣は意味をなさず、かえって回避の邪魔となった。




クレアはマクレイにできた隙を見逃さず、潜り込んだ後右下段から左上段へ斬り上げた。


その刃は胸当ての下へめり込み、そのまま力任せに胴を両断した。




「試合終了ーー!!勝者、アインザス校クレア選手!!」




「おおおおおおおお!!!」




「アインザス校は今年も粒揃いですね。」




「温存している残りの3人はどれほどの実力なのか気になりますね。」




解説が盛り上がっている間に、クレアの両手剣を予め用意してきた予備と交換した。




その後は一方的だった。




マクレイがあっさり敗れたのを見て2番手は自信を失い、本来の実力を発揮しきれずに両断された。


残りの3人はステータス値でも劣っているので、瞬殺だった。




「アインザス校の勝利ーー!!アインザス校が今年も強い、強すぎるーー!!」




「第1回戦に続いて第2回戦も5人抜き…過去最高記録が出るかもしれませんね。」




そんな解説を背に、堂々と控室へ戻った。

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