第58話 剣闘祭 開会式

それからメリッサや4人と観光したり模擬戦をして数日が経ち…


ついに9月10日を迎えた。




俺達はというと…選手入場口の手前で整列している。


何十人も集まっていて、人混み酔いしそうだ。




「緊張するぜ…おいアルフレッド?」




「…あ、ああ。そうだな。」




入り口からちらっと中を覗くと、何百人も収容する観客席が溢れかえっていた。


前世も含め、こんな大きな舞台で活動したことは1度もない。


身体は強張り、思考も落ち着かない。




『こんな大勢に見られながら戦うのか…絶対に失態は見せられないな…』




この前まではたくさん戦いたいと思っていたが、いざ本番になると嫌になってきた。


前世の通勤・通学時と同じくらい嫌だ。




『そういえばまだトーナメント表発表されてないな…初戦にならなかったらいいんだが…』




もし初戦になったとして、1番大変なのはやはり1番手のイザベルだろう。


戦順が最後になって本当に良かったと、しみじみと思った。




「…おいアルフレッド!どうしたんだ?らしくないぞ?」




「クレアは…いつも通りだな。羨ましい。」




「そりゃあ目の前にオレより緊張してる奴がいるからな…落ち着くだろ。」




「あはは…」




入場は学年ごとではなく学校ごとで、俺達1年はアインザス校の最後尾にいる。


…先頭じゃなくてよかった。




「これより、剣闘祭出場者の入場を始める!!」




「おおおおおおお!!!!!」




「パラパパ〜」




「…っ⁉︎」




突然ファンファーレが演奏され、この世界にも楽器が存在していたことに驚いた。


この世界でも演奏ともに入場するらしい。




「まずは前回全学年で1位を総なめした、アインザス校!!」




「おおおおおおおお!!!!!」




「今年も魅せてくれーーー!!」




「期待してるぞーーー!!」




3年主席を先頭に、コロッセオの舞台へ入場してゆく。


先輩達は堂々と歩いており、俺達1年はそれを真似する様にして後をついて行った。




『…あっ、エレナ先輩だ。2年生の代表に選ばれたのか…!後で挨拶しにいこう。』




「次は前回総合部門第2位、我らがコルセア校!!」




「おおおおおおお!!!!!」




「今年こそアインザス校をぶち倒せ!!」




「期待してるぞーーー!!」




『あれは…この前街中で見つけた男子5人組だ…!!地元民だったのか。』




それから次々と入場していき、選手全員が舞台に上がった。


最後に入場した学校の足踏みが止まると同時に、演奏も終了した。




「まずはブルーノ帝国の総ギルドマスター様からの話がある!!」




司会の紹介を受け、幕から人影が見えた。


その正体は身長は130cmほどの童顔で、紫がかった白髪のロングに赤い瞳をした幼女だった。




「妾がブルーノ帝国の総ギルドマスター、エレノアなのじゃ!!」




『のじゃロリババァ属性来たー!!幼女はいいよなぁ…!!』




おっと。


前世の性癖が出てしまった。




ブルーノ帝国は世界で最も領地が広く、戦力もずば抜けている。


種族と年齢…もとい隣国の総ギルドマスターがどの程度の実力か気になり、“鑑定“した。






名前:エレノア=ブラッドボーン 種族:吸血鬼 年齢:362歳 Lv.216




HP 841,080/841,080 TP 1,000,592/1,000,592 SP 0




STR 300 VIT 260 DEX 240 AGI 250 INT 250 LUK 120




スキル


片手剣Lv.10 両手剣Lv.10 二刀流Lv.8 盾Lv.10 体術Lv.10 




ユニークスキル


眷属化:対象を任意で眷属にすることができる。与える血の量によって眷属のステータス値は大きく変動する。


再生:弱点で攻撃されるか血液を失わない限りHPは減らず、死ぬことはない。


擬態:任意で想像した生物に擬態することができる。※無機物は擬態不可。


日光無効:吸血鬼の弱点である日光を無効化し、デイウォーカー(日の下を歩く)吸血鬼となる。※ただし、銀や十字架などの他の弱点から受けるダメージが倍増する。






『なっ…⁉年齢も年齢だがこのチートみたいなステータス値は何なんだ…!!スキルLvなんてカンストしてるし…二刀流なんて聞いたこともない…!!』




人間の寿命では、この境地まで絶対に到達できないだろう。


その上長寿な吸血鬼種故の強さだが…パワーバランスが崩壊している。


ツッコミどころが多すぎて頭がおかしくなるので…考えるのを辞めた。




「妾は眷属…もとい、後継者を探しているのじゃ。向こう数十年探し回っているが…まだ見つかっておらぬ。この大会で見つかることを心より期待しているのじゃ!!」




「おおおおおおおおおお!!!!!」




『後継者か…選ばれたら嬉しいなぁ…』




折角の異世界生活…今は力を付けてSランク冒険者になることを目標として生きているが、スローライフも送りたい。


しかし、人間の寿命では満足に楽しむことができないだろう。


そのためにも、後継者に選ばれて永遠に等しい寿命を手に入れたいところだ。




「長々と話してもつまらんからこれくらいにしておこう。では…ここに剣闘祭の開催を宣言するのじゃ!!!」




「おおおおおおおおおお!!!!!!」




「エレノア様、ありがとうございました!!さて、それでは早速トーナメント表を発表します!!」




上空の司会席から、巨大なトーナメント表が下ろされた。


合計出場校は64…優勝するには6連勝する必要があるのか。




「期待の1日目第1試合は…アインザス校vsフリューゲル校です!!!」




「なっ…!!初戦かよ…」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る