第16話 結果開示

システムアシストとは違う軌道の攻撃もスキルチェインも防がれて焦ったが、何とか1撃与えられてよかった。


”上弦蹴り”で場外まで蹴り飛ばせていたら猶更よかったんだがな。




「それにしても小僧…どうやってその技術を身に着けたんだ?」




「それは…内緒です。」




「そりゃそうか!何はともあれ小僧は文句なしの合格だ!!帰って親御さんに自慢してやりな!!」




「はい!!」




軽く会釈をした後、俺は冒険者学校を後にした。




「あ、坊ちゃん!!遅かったな!!」




「遅くなってすみません。受験番号が最後だったもので…」




「なるほどな…じゃあ帰りましょうか!!」




「はい!!」




試験の合否は2週間後に冒険者学校に張り出される。


合格は確定らしいので、緊張せずにのんびりと開示を待っていよう。




3日後




「御者さん、ありがとうございました。」




「おうよ!坊ちゃんもお疲れ様!!」




途中でスライムの群れに遭遇するというハプニングが起きたが、俺がさっと始末して先に進んだ。


弱い魔物で良かった。




屋敷の門をくぐると、そこには父上と師匠が立っていた。




「ただいま帰りました。父上、師匠。」




「ああ。」




「おかえりなさいませ、坊ちゃま。」




「それで…試験はどうだった?」




父上が珍しくそわそわしている気がする。


それほど心配してくれているのだろう。




「無事合格しました!!学費も免除です!!」




「結果の開示はまだですが…」




「アルフレッド、中で詳しく聞かせてくれ。」




「分かりました。」




1度水浴びをして楽な格好に着替えた後、執務室に集まった。




「それで…どういうことだ?」




「入学試験の審査員を倒したら、審査員席にいた不死身のアランが声をかけてきて…」




「不死身のアランだと…⁉確かに今年から冒険者学校の教師をすると情報が流れていたな…」




「1撃でも与えられたら学費を持ってやるという提案を受けて模擬戦をし、何とか1撃与えることに成功したんです。」




「何だと…⁉」




先程から父上が百面相をしていて、なかなか面白い。


こんなに落ち着きがない父上は生まれて初めて見た。




「アルフレッド、あの不死身のアランに1撃与えたのか…?」




「はい。…といっても両手剣は全て防がれ、決めたのは体術でしたが…」




「そうか…そうか!!よくやった!」




「ありがとうございます。」




父上の満足そうな顔を見ることができてよかった。


もしかして学費が浮いたことに喜んでいるのか…?




「…お館様は不死身のアランが目標なんですよ。両手剣の訓練ばかりしているのもその影響です。」




「なるほど…」




10日後




「では…行ってきます!」




「行ってらっしゃい。」




「気をつけるのよ〜」




「Sランク冒険者になるんだぞ!」




「頑張ってね!」




「ありがとうございます…!!」




これでペンシルゴンの名を捨ててもう屋敷に戻れなくなるというのに、あっさりとした別れだった。


というのも、父上から




『Sランク冒険者になったら名を名乗って構わない。』




と言われたからである。




「信じてくれてるんだろうが…期待が重いな。」




3日後




アインザスに到着した。


合格は確定しているが、それでもやはり緊張する。




『大人の事情とかで合否判定を覆されたりしないよな…?』




そんなことを思いながら足を運び、冒険者学校に着いた。


合否の開示は前世と同様、合格者の受験番号を紙で貼り出す方式のようだ。




「499番は…まじか。」




探す必要もなく、見つけることができた。




『特待生主席合格 499番』




と巨大な文字で、かつフォントを変えて記載されていたからだ。




「これは…ちょっと恥ずかしいな。」




俺はそそくさと門をくぐり、入学手続きへ向かった。




「小僧!!ちょっと待て!!」




「アラン…教授。どうかしましたか?」




「小僧は特待生だから場所が違うんだ。着いてこい。」




「分かりました。」




教授の案内の元学校の奥へ進んでいくと、別校舎にたどり着いた。


そこはまるで屋敷のように綺麗な場所だった。




「ここは…?」




「特待生、つまり成績優秀者用の校舎だ!」




「おぉ…!!」




「成績が落ちたら校舎も変わるから気をつけろよ?」




「は、はい…」




中に入ると、そこには寮母がいた。




「あんたが今年の主席かい?」




「はい。」




「そうかいそうかい!!なかなかいい男じゃないか!!」




「あ、ありがとうございます…」




「主席様の部屋は最上階全部さね!」




「えっ…⁉︎」




「側付きもいるから貴族様と同じさね!明日来る予定さね。」




まじか…


屋敷では専属メイドがいなかったので、何なら貴族以上だ。




早速寮生登録を終え、最上階に向かった。




「おぉぉぉ…!!!!…え?」




一面に赤いカーペットが敷かれており、そして就寝用、勉強用、訓練用に部屋が3つ用意されていた。


また、部屋や廊下の壁には金や銀でできた装飾品がたくさん飾られていた。




「…もはや王室だな。」




屋敷の自室は質素にしていたので、全然落ち着かない。




「…慣れるのに時間がかかりそうだな。」




そんなことを考えながらベッドに横になると、気持ちが良すぎていつの間にか寝てしまっていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る