第94話 親
私は、両親が好き。
でもそれって本心なのかなと思う。
物心着いた頃から両親は仲が悪かったし、家庭環境も悪かった。
それでも幼少期は愛されている実感があった。
いよいよ歯車が狂い始めた頃には母親は酒に溺れていた。飲んで飲んで飲んで飲んではキレていた。
父親にキレて子供にキレて毎日毎晩怒鳴っていた。
当時は親が嫌いだった。
正直殺してやろうとも思った。
さらに不幸なことに同時期に恋人に振られ、私はやけくそになりグレた。
家にいたくなかったから同じくグレた友達数人と遅くまで外で遊ぶようになって、勉強もしなくなった。
さらにリストカットのし過ぎで学校から家に連絡が入ってしまうような生徒だった。
そして当たり前のようにいじめられていたので行きたくなくなって、学校をサボって近所を徘徊していたら先生に見つかり連行された。
その後無理をして通っていた時期に体調を壊しまくってしまった。熱が出たりしたが親は病院代がかかるから病気になるなと怒られた。
それでも私は実際放置されてた。
私が自分の思い通りにならないから怒られてはいた。
ある日ついに私に向かって母は死ねと言った。
その頃には酒を飲んでいない時間でも関係なく私に怒鳴るのが普通の生活だった。
そこにいるだけでため息をつかれる存在だった、家でも学校でも。落ち着けるのが自分の部屋じゃなくて、勝手に居着いていた彼氏の部屋というとんでもない事態だった。
さすがに翌日の晩に父に諭されて土下座して泣いて謝ってきた。
許せるわけが無いと思ったが何も言えずにいた私に父は「許せないと思うけど、本当に反省しているから許してやって欲しい」と言われた。
じゃあ最初っから言わなきゃいいのに。
私はその言葉を飲み込んで、うん。とだけ言った。
薄っぺらい謝罪だなと思った。それに許せないなんて思うことは他にもたくさんされてきた。
母は私を抱きしめてわんわん泣いていたが、そんな事はどうでもよかったし嬉しくもなかった。
どうせ変わらないだろと思ったから。その予想は的中して、その後数年は何も変わらない生活だった。勉強をしていたら「勉強しろ」と言って怒鳴られた時は意味がわからなかった。その頃からは毎日のように死にたいと思っている(現在進行形)
時が流れて、親は歳をとり丸くなった。
もう怒鳴ることもないし酒に溺れることもなくなった。
相変わらず夫婦仲は悪いようだけど、私はもう実家を出ているので関係ない話だ。
今では父とも母とも普通よりは仲がいいと言えるほど会話を交わすし、何なら子供の時よりも愛されていると思うがそれは手がかからないからだろうなと思ってしまう。
正直言って、私は両親を憎んでいたけど嫌いにはなれていない。
普通とはかけ離れた家だったが幸せだった時も確かにあった。
本当は交流も全部無くしてしまった方がいいんだろうと毎日毎日思っているけど、そんな事を今の親に伝えて傷付けてしまうのは私にはできない。
自分は親から嫌な扱いを受けたのに、子供から捨てられる親の悲しみを考えてしまう。
精神病は、脳の疾患。
思春期に親から受けた脳のダメージは癒えることがないらしい。
これを洗脳以外のなんだと言うのか。
綾瀬は優しすぎるから利用されるんだよ と言われる。
…優しくなんてない。
本当は人の何倍も誰かを憎んでる。
ただそれを表に出せなくて、自分に自信がなくて。
無駄に我慢できるから。耐えて耐えて耐えきれてしまうから。理不尽を受けても怖がるだけだから。
ただの弱虫になってしまっただけ。
そんな日の連続で生きてきた。
今振り返れば3歳から今までずっとずっと誰かに虐められて生きてきたなあ。
正直、不登校にならないのが不思議だった。なんでこんなに辛いのに我慢できるんだろうと。
無駄に根性があるせいで限界が来るのが異様に遅かっただけかもしれない。
残念なことに去年の夏から、なるべくして立派な社会不適合者が完成した。
きっとこれを見た人の中には、他人のせいにしてばかりだからこうなるんだ甘えるなと感じる人もいる事かと思いますが、私も好きでそうなった訳じゃないです。
もう他人のせいにしてないと生きていけないのでそうして生きていきたいと思います。
それにしても文字におこしてみると予想以上に酷い人生を送っているなと、他人事のような感想が浮かびました。
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