それぞれの思い語り1

火竜の気持ち


  再会した旦那様は当時とあまり変わらない風貌で、私の記憶に残っている優しい旦那様のままだった。


 あたいは旦那様を思い続けて、探し続けた長い時間を思い出し、感極まって思わず抱きついてキスをしてしまった。


  恥ずかしい。いくら悪い癖もうそうも出てしまっていたとはいえ大勢の前でファーストキスを、あたいも大胆な事をしてしまった。


  少し落ち着いてあたいは、旦那様に抱きつきながら周りを見ると旦那に好意を持つ5人の雌がいた。

 みんなキスをしたあたしに躊躇うことなく嫉妬や反感の感情をむけてきた上に、さらには本気の殺気を向けて来る骨のある奴もいた。

 同族すらあたいのことを恐れて寄り付きすらしないというのに、人の身であたいに挑んで来ようとするとは中々骨のある奴らだ。


 相変わらず旦那は良い雌達に好かれているようだ。それは当然のことだと思う。強くて格好良くて優しい旦那様のことを知ってしまったら、世界中のどんな雌だって惚れてしまうだろう。


  旦那様はいきなり現れたドラゴンのあたいに番いを迫られても迷惑かもしれない。でもあたいはもう後悔したくない。

 あたいはあの時の何も出来ず何も言えずに戦場に見送ったパピーじゃない。旦那様を助けることが出来る、支えることが出来る大人の雌だ。


  絶対に旦那様を手に入れてみせる。絶対に旦那様に愛されてみせる。旦那様への想いは決して誰にも負けないのだから。


 


 


 


 


サクヤとサクラ  


  私は最近良く夢を見る。直也さんと一緒に二人で暮らしている夢。見たことも聞いたこともない平和な国で直也さんと同棲をしている私。優しい直也さんの笑顔、心地いい直也さんの声、安心する直也さんの匂い。彼と一緒に居る事だけで幸せ一杯の私。

 私は直也さんに貰った指輪をいつも大切に身に付け時間があると眺めてしまっている。


 


 

「僕のお嫁さんになって下さい」


  指輪と一緒に直が言ってくれたプロポーズの言葉は、魂に刻まれて永遠に忘れることは無い。


 直と私は「永遠の愛」を誓った。


 いつか時間が2人を引き離しても、私は何度でも生まれ変わり、また直のお嫁さんとして一緒に生きたいと指輪に願った。


 

 

 私は夢から覚めるといつも泣いている。神様ありがとう。また直に会うことが出来ましたと、指輪が私にサクラ様の感謝と喜びを教えてくれる。


 私は最近意識や記憶が曖昧になる時がある。直也さんを直と呼んだり、また私を好きにさせてやるとサクラの心を感じたり、指輪をずっと眺めてしまい、サクラの気持ちに意識に引っ張られてしましそうになったりする。


  私がサクラで、サクラが私。私はサクラと同じ魂を持ってはいるけど、二人は違う自我を持つ別の存在。


 だから、私が直也さん好きになったこの気持ちには私のものはず。私が見つけた私だけの愛情のはず。


  そう思うのだけど、本当の私の気持ちなのか自信を持つことが出来ない。みんなの前では隠しているけれど、ずっとそう悩む日が続いている。


 

 突然直也さんが私の眼の前で、私以外の女性に唇を奪われた。私達は茫然と言葉を失った。


 直也さんは私の一番大好きな人。


 私は直のお嫁さん。


  その直也(直)さんが私以外の知らない女に奪われるなんて、ちょっと許せない。


  レーヴァテインという女の竜は、キスしただけでは飽き足らず直也さんに抱きついて、直也さんの一番を掛けて自分と勝負しろと言ってきた。


  

 ふふっ、最近直の周りには直を慕う女が集まって来る。魅力ある人だから女性にモテることは素直に嬉しいし誇らしいが、私達以外の女と関係を持つことは許せない。そろそろ誰が直の妻であるかを知らしめる時が来たようね。


 私達だろうが私だろうが、この先のあなたと過ごす未来のためだったら、私達は持っている全てをかけてることが出来る。

 

 「永遠」を誓い、私が願った大切な指輪。指輪が輝き続ける限り、私達は迷うことも、失うこともない。


  あなたの隣は私。


 絶対に直也さんと結ばれてみせる。


 絶対に直にまた愛されてみせる。


 あなたへの想いは決して誰にも負けない。私達が魂に刻みこんだのは、あなたへの悠久の愛なのだから。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


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