止まらない妄想

「私の直也さんから離れろー!」


 と抱きついたレーヴァテインを必死に引きはがそうとするサクヤ。


 「貴様!殺す!」


 と瞳からハイライトを消して、何処からかいつものように刀を出したマリー。


 「キャー凄いです!キャアー大人です!」


 と両手で顔を隠すも指の隙間からキスを凝視するリーシェ。


 


「このトカゲ女め。主様を摘まみ食いした代償は命で払ってもらいます」


 と魔法少女の必殺技の構えを見せるカオティックブラックことアスモデウス。


 

「私の直也になんてことを、キーッ、悔しい」


 とハンカチの端を噛んでいるギルドマスターのジョニー。


 

「チュッチュ、旦那様あたいにもお情けをおくれよう」


と殴られようと引っかかれようと未だキスを辞めないに寝取られ妄想の世界の住竜、終焉のレーヴァテイン。


 そしてキスをされたまま少し嬉しそうな顔で硬直している直也。


 

 さっきまで隠れて様子を見ていた住民達はみな興味心身でいつの間にか7人を取り囲んで見守っている。

 7人が愛憎劇を繰り広げていると、突然広場の気温が低下して一同は寒気を覚える。ガヤガヤと様子を窺う住人達の人混みが左右に割れて、ケモ耳シッポの銀髪の美人が姿を現した。青白い顔には表情は無く、口に一房の銀髪を咥えながら肩を落とし、ガクガクと震えながら今にも倒れそうな様子でゆっくりと近づいて来る。


 「直也様一体レーヴァテインと何をしているのですか?裏切りですか?」


  とても小さく低い言葉なのにはっきりの脳の奥に響く声。


 「接吻?キス?ちゅう?何でレーヴァテインと何回も何回もしているのですか?」


  晴れた空に幾つもの火球か浮かびその数はどんどん増えていっている。周りを囲んで様子を見ていた住人達は我先にと逃げだしていく。ガーディアンズの隊員による誘導がなされ一目散に安全地帯へ逃げていく。


  イズナの絶対零度を思わせる目の冷たさに我を取り持出した直也は慌てて事態の収拾に動いた。


 「落ち着いてイズナさん、あなたも僕から少し離れて下さいって!」


  イズナの様子に恐怖を感じて、慌ててレーヴァテインを放そうとするが力強く抱きつき離れない。


 「嫌だ、絶対に離れない!あの時みたいに旦那様はあたいを置いていく気だろう。あんなにあたいの体を弄んだくせに。あたいの体は旦那様なしじゃもう生きていけないんだよ」


 


「人聞き悪いことを言うな!僕は何もしていない」


 イズナが顔をヒクヒクと引きつらせながら、何かを考えているような思いつめた表情になる。


 「間に合わなかったからなの? 私が遅かったからって、一瞬の間にここまでの関係が進むものなの? 私は帰って来てからまだ一度もキスしてもらったことないのに?許せないな。許せないよね?」


 

女性陣がイズナに呼応し騒ぎは広がる。


 「直也さん、上書きのチューを、運命のチューをさせて下さい。私の初めてを貰って下さい」


 「ダメですお嬢様!それは余りにも危険です。まずは私がお嬢様の分まで先に試します。私に50年ほど異常が無ければ恐らく大丈夫かと」


 「大人のキス、私もしてみたいです」


 「主様は私みたいな可愛い小さい女の子が一番好きなんです。みんな主様から離れて下さい」


 「愛の前には性別なんて些細な問題よ。直也はさっき私の全部受け止めてくれたわよね」


  レーヴァテインが腰にしがみついて離れない直也を囲んで、あちらこちらで起こる訴えの声は次第に大きくなっていく。


 「みんな少し落ち着いてくれ。あとイズナさんは危ないから早く魔法を解除して下さい」


 「私はいつ迄経ってもイズナさん。イズナさん・・・。直也様がとても遠く感じてしまいます」


 「・・・」


 直也は腰にレーヴァテインを腰に巻き付けたままイズナの両手を握ってお願いする。


 「オッホン。イ、イズナ、危ないから魔法の解除をして欲しい」


 強く手を握られたイズナはボッと赤くなり


 「イズナ、君が欲しいなんて。なおやしゃま、大胆」


  目を潤ませて大人しく言われた通りに魔法を解除した。目をハートにしたイズナのアっと言う間の堕ちてしまう。


 

「チョロいわね。君が欲しいなんて言ってないけど」


 「チョロいですね。歳の所為で耳が遠いみたいですね」


 「凄くチョロいです!」


 「チョロ過ぎますね。でも主様は小さい子が好みです」



 ボソボソと聞こえて来る声を背にして、直也は腰から離れないレーヴァテインとの対決の姿勢を見せた。


 「あなたも、もう離れて下さい」


 「嫌だ、旦那様から、もう離れたくない。千年だよ千年。あたいに帰ってくるって。帰ったら番いになろうって」


 「そんなことを言った覚えはありません。と言うか、あなたはやっぱりあのチビドラゴンのレーヴァ?」


 「そうだよ、旦那様。あたいはレーヴァだよ。旦那様がいなくなった後、ずっとずっと世界中を探していたんだよ。あたいを恋奴隷して一番良い時期の雌の時間を貪りつくして奪ったのだから、あんなに激しくあたいを旦那色に染めあげたのだから、捨てるなんて言わずに、責任を取って貰って番いになって欲しい」


 「責任を取って貰って番いにって言われても、僕はあなたに何もしていないし、何のことだかも分かりません。まずは、落ち着いて話を」


  レーヴァテインの顔が絶望に覆われ、瞳に狂気が走る。


 「何でそんなことをいうの?あたいを捨てると言うの?基本的竜権すら無視され暗い部屋で嫌がるあたいの純潔を奪った挙句、何度も何度も弄ぶだけ弄んで、骨の髄までしゃぶりつくされ、遊びつくしたあたいの事を捨てると言うなら、ここで旦那様を殺して、あたいも死んでやるから!」


  艶のある綺麗な赤い髪を振り乱し、直也の腰に縋りつきながら、涙を流して訴える。


 「いや、僕はレーヴァから何も奪ってはいませんけど!」


  直也と再開を果たしてからの間も妄想が止まらず、いつの間にか監禁調教までされてしまっていた新しい過去を持つ、悲しみの終焉レーヴァテイン。

 

 彼女の妄想はとどまること知らず、まだ終わらない。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


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