決戦、秘密の部屋!50%の力

「飛翔斬鉄一閃」


 ジョニーが魔力をまとわせたミスリル製の長剣を目にも止まらない速さで右薙ぎに振りぬくと、剣に纏った魔力が剣線に沿って刃となり放たれ空を走る。


 「フッ!」


  直也は軽く息を吐いて飛び上がると、自分に向かって力一杯に放たれた矢の様なスピードで飛んでくる魔力の斬撃を躱した。


 「あら、随分と簡単に避けてくれたわね。割と本気だったのよ」


 「いや、割とって言いますけど、避けなきゃ死んでましたよ。今の」


 「避けなきゃってね直也、あなた簡単に言うけど見えない魔力の刃なんて、普通は簡単には避けられないのよ。まあ、いいわ、次からは、もっともっとサービスしてあげるから」


 ジョニーはミスリルの剣を肩に担ぐと


 「直也、今度は本気でいくかね!」


  そう言うと、ジョニーは魔力を高めて身体強化を行い戦闘態勢をとる。先ほどまでのジョニーとは打って変わって、目線が鋭く力強くなる。魔力を通した体は一回り程大きくなっているのか大きく育ち、ピクピクと脈打っていて鎧の固定具がはち切れそうになっている。


 「ウオオオリィーヤー!マッスル、50パー!!」


  ジョニーの叫びと共に魔力が体から吹き出し、着ていた鎧や服がはじけ飛んだ。ジョニーが来ていた服や鎧が成長した筋肉によって千切れ飛んでしまい。唯一ショートパンツのようになってしまった元カーゴパンツを履いている姿になっていた。


 「ジョニーさん、少し変わり過ぎじゃないですか?」


  ぱっと見て背も少し伸びているようだし、体については異常ともいえるほどに発達した筋肉がキレまくり、ワセリンでも塗ったかのように照かっている。


 「俺のギフトは筋肉の操作。体中の筋肉の質や量をコントロールできる。その上に魔力での身体能力の強化もすること出来るから、まあまあ得意な俺には丁度の良い能力だな」


  言葉使いも親衛隊隊長時の時と同じようになっている。どうやら気持ちが昂ると言葉使いが変わってしまうタイプのようだ。

 実際に今のジョニーは言葉だけではなく、先ほどの数倍の力を身に宿している。


 「直也よ、お前は今のままでもいいのか?」


  ジョニーの言葉に我を取りも出した直也は腰を落として両腕を顔の前でクロスさせて


 「そうですね。僕も本気の力を出さないと拙いですね」


  直也は「ハアッー」と気合を入れる。青白く光る霊気が体から噴き出すとジョニーの顔に驚きが浮かんだ。


 「直也よ、お前はこれほどの力をもっているのか。・・・だが、お前の力はまだ上があるのだろう?」


 「ジョニーさんこそ、まだまだ全力ではないですよね?」


 「今の力で50パーセントってところだな。では、いくぞ」


  ジョニーは長剣を床に放り投げた。それに気を取られてしまった直也の隙をついて、一瞬で距離を詰めて直也の正面に現れたジョニーは、直也の顔面目掛けて右のフックを叩き込む。


 「ウラァー!」


  気合を入れて放たれたフックは直也を捕らえたかに思えたが、間一髪で左腕でのガードが間に合った。が、ジョニーはガードした手を無視するようにさらに力を入れて腕を振り抜いた。直也の体はその力に抗うことが出来ずに、体ごと吹き飛ばされた。


 (嘘だろ、この力。思っていたよりもずっと重い)


  壁に激突してようやく動きを止めた直也。クラクラする頭を振って立ち上がる。


 「直也よ、お前は少し気を抜きすグアァ」


  腕を組んで仁王立ちで直也に話をしていたジョニーの鍛えられた腹筋に、直也の右の拳が突き刺さっていた。直也が腕を抜くとジョニーが腹を手で押さえて片膝をつく。


 「ジョニーさん、隙だらけでしたよ」


  直也はわずかに口から流れる血を腕で拭いながら、ニヤッと笑いながらジョーにを見る。ジョニーもまたニヤリと笑い返しながら立ち上がり、


 「フフフッ、俺も少し話をし過ぎたようだな」


  二人はお互いの手が届くところにいる。見つめ合う二人はそのまま腕を構え腰を落として三戦立ちの姿勢と取ると丹田に力を込めた。


 「ウラァー!」


 「ハアッー!」


 気合と共に二人は壮絶な殴り合いを始めた。お互いがノーガードでの拳の応酬である。しかも相手の拳を避けようともせずに全てを身に受けている。常人どころかB級クラスの冒険者でも一撃でノックアウトされる威力をもつ一発を凄いスピードで打ち合っている。二人が纏っている霊力と魔力がぶつかり合うと反発しているのか光が飛び散る。


 「ハハハッ、楽しいな直也よ」


「ええ、癖になりそうなほどに」


  二人はうっすらと笑いながら、止まることなくお互いの体を打ち抜き合う。顔を胸を腹を。休むことなくひたすら笑い合いながら殴り合っていた。


 


 


 


 一方その頃。


 「えーと、やはりいくら調べても魔法少女という職業はありませんね」


 机の上に何冊もの専門書を重ねた女性職員。


 「そんなの、私は知らないわよ。だったら新しい職業でいいじゃない」


 「そうは言われましても。魔法少女とはどういうものなのですか。魔法使いでは駄目なのですか」


 「駄目よ、まったく違うじゃない。大体魔法使いなら、少女じゃなくてもいいじゃない」


 「はあ?」


 「少女!ここが一番の肝なのよ。少女が魔法の力を使って戦うの」


 「では、やっぱり魔法使いで良いのではないのでは?」


 「フッフッフッ、魔法少女はね戦うために魔法の力で変身するのよ」


 「・・・変身ですか?」


 

 一体この娘は(アス)は何を言っているのだろう?ギルド職員だけではなく、サクヤ、マリー、リーシェをも巻き込み、新職業候補・魔法少女の謎はより深まっていくのでった。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


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