第2章 冒険者になろう
職業のすすめ
朝のラブコメも無事終了し、4人は朝食へ向かう。社に併設する屋敷の食堂へ行くと既にテーブルには朝食の準備がされていて、よそわれたばかりの美味しそうなスープが湯気を立てている。一緒にいたのにマリーはいつの間に他のメイドに準備する指示を出していたのだろうと、感心しながら直也は朝食が用意されている丸い4人用の食卓テーブルの席に腰をおろした。
直也の左右の席にサクヤとイズナが座り、直也の直ぐ後ろに一片の迷いも無く、マリーが控える。
「マリーってシラサキ家のメイドだったと思うのだけど?」
と、サクヤは直也の後ろに控えたマリーに皮肉っぽく伝える。
「直也様は、シラサキ家初代様の恋人であり、始祖にあたられる方です。言ってしまえば超ビップ。メイド長たる私以外の者には 、とても、とても直也様の御世話を任せる訳には行きません」
「その割にはさっきは直也、直也と呼び捨てにしていたみたいだったけれども?」
サクヤとマリーの会話が徐々に延焼を広げ、自分への2次災害の危険性が見え始めたところで
「まあまあ、折角のおいしそうな食事が冷めてしいしますので、先に頂きましょう」
と直也は二人に声をかけた。
言い争うのをやめて、直也の方を見た二人はある異変に直ぐに気が付いた。武闘派ケモ耳団長のイズナが、いつの間にか直也と肩が触れ合いそうになるほどに近づいて 、
「直也しゃま」
と、直也の顔をハートになった目でうっとりと見つめて尻尾をパタパタさせながら、今にも抱きついてしましそうな感じになっている。
「イズナ様、もっと離れて下さい!」
と瞬間湯沸し器のように熱く興奮したサクヤとマリーは突っ込むが、先ほどの、恋人同士のようなラブコメを思い出して、妄想の世界の住人になっているイズナには全く言葉が届いていない。
直也は3人の様子を見て溜息をつくものの、騒がしくても明るい食卓が好ましく思われ、みんなに気が付かれないように、こっそり微笑んだ。
「働こうと思うんだ」
朝食を食べながら直也がみんな伝えた一言が、思いの他に波紋を呼んだ。
「直也さんは代表秘書が良いと思います」
「では、直也様をガーディアンズの副団長に」
「直也は私に御世話されるのが仕事だ」
3人仲良くタイミング良く、声をかぶらせ自分の意見を伝える。
「ん?」と3人は首を捻らせつつお互いを見合う。
そして、火ぶたは切って落とされた。
「直也さんは、町の創設関係者で神様のお使い様です。ゆくゆくは町の代表になってもらうために、私の専属秘書になっていただきたいと思います」
セフィロトの町の代表は直系一族の世襲、一族の後継者、またはその姻族の者しか代表になる事は出来ない。
「直也様は、その他の追随を許さぬ力の使い手、世の人々を救うため、私の真のパートナーになって世界中を新婚旅こ、げふん、げふんいや失礼。世界中を救う副団長になってはどうだろう」
「直也は私と一緒に居て、私に養われるのが仕事です。私が二人の新居を立てますので引っ越しをしましょう。先代様からは拾っていただいた際に、いつでも自分好きにして良いと、言っていただいておりますので」
「聞いてない、私そんなの聞いてない」
またしても、わいわいがやがやと騒がしくなる食卓で、直也は自分の希望をみんなに伝える。
「みんなの気持ちは嬉しいけれども、僕は自分の力でもう一度人の役に立つ、人に喜ばれる仕事をしてみたいんだ」
直也の言葉に3人が同じ職業に辿り着く。
優しく、凄い力を持っている直也が出来る、人のためになる職業。
(あれなら、直也さんと二人っきりのパーティーを組んで、ウフフ)
(直也しゃまと一緒に夫婦で魔獣狩り、エヘヘ)
(直也と一緒に深夜の大人の野営会、ムフフ)
三者三様、と言うかほとんど同じことを考えてトリップしてしまった3人。
「なにか、おすすめの職業ってある?」
直也の質問で、妄想の世界からこちらの世界に戻ってきた美女3人は、
「冒険者がいいと思います!」
と、声揃えてそう言うのであった。
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