生命の樹へ
顔を白くして黄昏るマリーを置いて、サクヤは部屋の窓から外に飛び出した。
「サ、サクヤ様、待ってください。私も行きます」
後から声をかけて来るマリーをよそに、サクヤは雷が落ちた場所を走りながら確認する。
落雷があった場所は生命の樹の真ん中の辺りの地上から200m程の場所のようだ。大社の周りには兵士や参拝に来ていた町の住民が集まり、これは一体何事かと騒ぎたてている。
「みんな心配無いわ、落ち着いて」
サクヤは町の住民たちが集まる所に近づいて話をしていると、武装したガーディアンズ所属の兵士が数人やってくる。
「嬢ちゃん!」
駆け付けたて来たのは、まだガーディアンズ3年目で、ナンバーズの序列には入っていないが、若手一番の有望株と見込まれていガーランド・フェザー21歳。長剣を得意武器とし、身体強化のギフトを使った接近戦に特化した戦闘スタイル。竹を割ったようなまっすぐであっさり・さっぱりした性格で同僚たちからの信頼も厚い。
「さっきの一体何事だ?いきなりピカッとして、パリーンからのドーンで、マジでビビったぜ!」
少し興奮気味で話すガーランドは、生命の樹を指さして笑顔で話す。
「ガーランド・フェザー、貴様口の利き方に気を付けろ!」
サクヤの後ろから現れたメイド服姿のマリーが怖い表情でガーランドを睨んでいる。
「お、お疲れ様ッス、マリーの姐さん」
「姐さんはやめろと言っているだろうが!もうお前も立派なガーディアンズの一員なのだから、言葉遣いを少しは改めろ!」
「へへ姐さん、実は先日、小隊長に出世しました」
「なお悪いわ!」
マリーに怒られているガーランドは以前マリーとある事件で鉢合わせ、お互いの誤解から喧嘩となったことがある。当時のガーランドは自分の力に過信をしている所があった。
自分の戦闘能力に自信を持つガーランドを、マリーはその場から動くことなく泣いて謝る迄叩きのめした。その後、誤解は解けて和解をしたのだが、その時のボコボコされたトラウマを越えらないまま、自称“姐さんの舎弟”として現在に至っている。
「ガーランドさん、生命の樹の調査は私が行います。あなた方ガーディアンズ皆さんは樹へ参拝ルートをすべて封鎖し、安全の確認と、調査が終わる迄の間の住民の立ち入りの禁止をお願いします」
「嬢ちゃ、代表、大丈夫なのでありますか?」
「?」
「一人で大丈夫なのか?危なくないのか?俺もついて行った方が良くないか?」
「心配は無用です。おおよその事態の把握はしておりますし、私の魔法だってあります。それにマリーにも一緒に来てもらいます。」
「そうか分かった。だが、何かあったら直ぐに声をかけてくれよ」
「ええ、ありがとうございます」
ガーランドはサムズアップの姿勢でサクヤにウインクをすると、後ろに居る小隊のメンバーに向けて指示を出す。
「お前ら、聞いた通りだ。今すぐにうろちょろしている奴らを追い出して、蟻一匹たりとも侵入させるなよ」
「蟻は無理、せめて人」
小隊の若い女性兵士のミーナが言うと
「馬鹿野郎、お嬢のお願いだぞ、気合を入れろ。よく言うだろう、出来ない理由をみつようとせずに出来ない方法を見つける努力をしろ的な?」
「言わない」
「じゃあ、成せばなる。やる気があれば何でも出来ると思われる?」
どうだ、という感じの少し緊張した顔でミーナの判定を待っている。
「・・・・・・ファイナル、アンサー?」
「インフルエンザ?」
ミーナは深くため息をつき、悲しそうな顔で告げる。
「色々残念。顔は良いのに」
「もう一回だ、もう一回チャンスをくれ、お願いだ」
小隊漫才をしながらワイワイガヤガヤをその場を離れていくガーランドを見ながら
「ガーランドは悪い奴ではないのですが、少し教養が・・・」
マリーはこめかみに指を当てながら呟く。
「ふふっ、元気があって良いじゃないの」
サクヤは生命の樹を見つめて気持ちを切り替える。
「さあ、あそこ迄飛ぶわよ。私の手を握って」
サクヤは自身の魔力を活性化させ魔力をのせた呪文を唱える。
「風の精霊よ、契約に基づき我に力を借し与え給え。風を纏いて自在に操り、大空を舞い飛ぶ力を」
サクヤの周りに風の精霊が大勢集まり、風の渦が身体を包む。足元から風が勢いよく吹き出して身体を浮かす。
サクヤの為に集まった風の精霊が話しかけて来る。
(準備が出来たよ。いつでもいけるよ)
(風の精霊さん、ありがとう)
「
魔法が発動し二人の体はぐんぐんと空に向かって飛び出した。
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