第51話 エロ同人みたいに!!
「全く気が付かなくてごめんなさい!!」
光さんの家に帰った後、まず勇美さんの土下座が繰り広げられた。
廃倉庫において彼女が不在だったのは、案の定怪人に気付かないまま熟睡していたから。なので舞さん達には放置されていたらしい。
「私も申し訳ありません。目玉が見ていたとはいえ、咄嗟にガラスを割ってしまい……」
土下座中の勇美さんだけではなく、フェーミナも頭を下げていた。
光さんはバツの悪そうな顔をしながら、
「そんなかしこまらないでよ。フェーミナは別に悪い事した訳じゃないし、勇美も……まぁ結構爆睡してたね。見た時はびっくりしたよ」
「本当に面目ない……」
「もう顔を上げてって。にしても悠二クン達が言う目玉とさっきの怪物、一体何だったんだろうね?」
「目玉は分からないけど、怪物は多分怪人だと思う」
光さんの疑問に俺が答えると、全員の視線がこちらに集中した。
「怪人ってあの特撮の?」
「うん。怪獣がいるんだから怪人がいてもおかしくないと思うよ。モンスターって言ってもいいかもしれないけど」
「あーなるほど。悠二君よく分かったね」
舞さんにそう答えたら納得してくれた。
廃倉庫から連想したなんてメタな事は言えないのだが。
「怪人はよく分かんないけど、小さい奴もいるのは厄介だなー。それで2人はあの鎧の人の正体知っているんだよね?」
光さんが尋ねたので、俺はすぐに頷いた。
「間違いなく。一応住所も知っているけど、今回は俺と舞さんだけで行くよ」
「いきなり大人数で押し寄せると、あの子動揺するかもしれないしね」
俺の提案に舞さんが付け加える。
正体が正体。さすがに全員で赴いたら絶対に戸惑うはずだ。
「では、その鎧の女は悠二さん達に任せます。私はあの機械目玉を警戒しますので」
「俺も気を付けておくよ。それじゃ光さん、今日は泊まらせてくれてありがとう」
「どもども。それよりも悠二クン」
「ん?」
光さんが急に胸元を掴んでいた。
まるでそこに視線を向けさせるようにして……、
「勇気出たらいつでもOKだからね♪」
「…………!」
間違いなく深夜の事だ。彼女はそれを誘っている。
胸元に視線を送らせるような動作と、グラビアアイドルのような流し目。
つくづく何で彼女からエロさが感じるのか……全身がムズムズしてしまう。
「光、どういう事なんだ?」
「フフっ、ナイショ!」
「ええーなんでだよ、気になるじゃないかー」
光さんと勇美さんが戯れている中、俺を睨み付けるフェーミナ。
そんな射貫きそうな目で見られても……。
********************************
光さん宅から出た俺達は、まっすぐある場所へと向かった。
出る時に数分は「いやぁ楽しかったなぁ」「そうだねー」と舞さんとたわいもない会話をしていたが、それから話題がなくなって口数も自然と減った。
そんな中で思い出してしまうのが、布団の中で裸で寝る光さん。
「脳内に焼き付く」なんて言葉があるが、俺の場合は焼き付きすぎて思い返すたびに性的な気持ちが湧いてしまう。下手したら虜になっているのかもしれない。
「なんか最近、光ちゃんの様子が変わったかも」
舞さんが上の空でそう言った。
すかさず俺は脳内から光さんを消す。
「そ、そうかな……いつも通りだと思うけど……」
「いや、変わっていると思う。それに勇気が出たらーなんて言ってたけど、本当に何があったの?」
まるで探りを入れるような刑事の目をしてきた。
俺はまさに、その刑事に尋問されている容疑者そのものだ。
「……いや、その……」
「……あっ、ごめん! 別に怒っている訳じゃないの!」
しかし舞さんがハッとした表情をして、疑いの目をやめてしまった。
「本当にごめん。悠二君も光ちゃんも大切なのに、どちらも疑っちゃって……何これ嫉妬? なんというか、その……」
「…………」
何だろう……今の舞さん、すごい可愛い。可愛すぎて辛い。
あれこれ戸惑っている姿も、俺達を大事に思っている姿も愛らしい。
いつしか俺は彼女の服を掴んで、ピッタリと身体をくっつき合った。
「えっ?」
「今の舞さん……可愛くてつい……」
舞さんへと見上げた俺の顔は、まさに理想のショタフェイスをしているはずだ。
ナルシストかと思うだろうが、今が今だからそうなってもおかしくない。
そんな俺を舞さんが見た瞬間――ガバッと俺を抱擁してきた!
「可愛い! ごめんね悠二君! やっぱりあなたの事好き!」
「ちょ、ちょっ、舞さん……早く行かないと……」
「うん分かってる……! でもこうしたい……あと5分以上……!」
家の中でならともかく、さすが外でそれはちょっとな気持ちが……!
嬉しいは嬉しいのだが……!
「それは後にしよう! ね! 今は
「……そうだった……すいません……」
「う、うん……べつに大丈……」
「その代わり、あとで悠二君でチャージするから期待してて」
「マジっすか……」
まさかの言葉に驚愕してしまう。
最近の舞さん、かなり大胆になっているような気が……。
妙な約束をされた後、俺達は再び歩を進めていく。
そうして目の前にありふれたアパートが見えてきた。あれが目的地だ。
アパートに着いてから、部屋がどこなのかをポストで確認。
2階の奥だと分かり、そこのインターホンを押してみた。
「はい……」
茶髪のお下げをした女の子が扉から出てきた。
名前は彩木玲央。女の子の皮を被ったキモオタだ。
「やぁ、さっきは……」
「やめて!! 私を売り飛ばす気なんでしょう!? エロ同人みたいに!!」
「何でだよ!!」
酷い言いようなので思わず突っ込んでしまった。
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