第42話 ロマンチストか現実主義か
幼い頃。
『E.T.』という映画を観に、両親に映画館へ連れて行ってもらった。
当時から感情移入度が高く、テレビ・映画・本などにのめり込むタイプだった私は、映画の終盤になると、前の席にかじりついて、オイオイと涙を流していたという。
母は、そんな私の姿を見て、こんな心配をしていたそうだ。
『どうしましょう。あの自転車が欲しい、なんて言い出したら』
『E.T.』をご存じの方であればお分かりだと思うが、映画の中では、E.T.を乗せた自転車に乗って、主人公の少年が空を飛んでいるシーンがあるのだ。
そして。
映画館には、その主人公が乗っていたものと同じ自転車が展示されていたと言う。
映画を観終った後、母が私に聞いた。
「自転車、欲しい?」
私は、即答したという。
「いらない」
私の即答に、母はとても驚いたそうだ。
私には、残念ながら、その時の会話の記憶は、全くない。
だが、私自身の事だ。なんとなく、想像はつく。
きっと私はこう思ったのだ。
それはそれ。これはこれ。
この自転車を買ってもらったところで、空なんて飛べるはずが無い。
と。
ただ、『E.T.』は今でも好きな映画の1つで、DVDも持っており、これまでに何度も観ている映画。
SFもファンタジーも大好きだが、現実との境界線はきっちりわきまえている。
これはきっと、幼い頃からずっと、変わっていないのだろうな。
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