第23話 生存確認

『すいません!電話、貸してもらえますか!』


隣の旦那さんが、慌てた様子でやってきた。

聞けば、買い物に行っている間に、奥様がドアチェーンをして少しだけ玄関のドアを開けた状態にしてしまったらしく、何度玄関チャイムを鳴らしても呼びかけても返事も無いので、家の中に入れないとのこと。

奥様はご高齢だ。

少し耳も遠いので、もしかしたら眠ってしまって、玄関チャイムが聞こえないのかもしれない。

電話番号をお聞きして、わたしの携帯から電話をしてみた。


玄関の隙間から、電話の呼び出し音が聞こえる。


「●●さーんっ!●●さーんっ!」


玄関の隙間から何度も呼びかけながら、わたしは電話をかけ続けた。

旦那さんも同様に、何度も奥様の名前を呼んでいる。


少しずつ、心配になってきた。


奥様はご高齢だ。

もしや、中で倒れているのではないだろうか、と。


ふたりで我が家のベランダに回り、【非常時はここを突き破ると隣に行けます】というアレを、ブチ破ってみようと試みる。


・・・・ブチ破れなかった。

非常時、どうしてくれんだよ。


焦りながら、ふと、隣のベランダを覗いてみると、ベランダから部屋に通じるドアが開いているのが見えた。


・・・・行くか?

行くしか、無いか?


うちは、落ちたら間違いなく命は無いだろうと思われる高さの階にある。

幸い、わたしは高所恐怖症ではない。


行くか。


腹を括り、ベランダの壁伝いに、隣のベランダへ渡る。


無事、隣のベランダに降り立ち、室内に入ると。


「・・・・・!!」


起き抜けとおぼしき奥様が、驚いた顔で私を見ていた。


怪しいものではありません!

状況的には、十分怪しいかもしれないけどっ!


わたしは焦りながら、若干早口で事の経緯を説明した。

その後、奥様は旦那さんにこってり絞られたと言う・・・・


そしてわたしは。

家族から猛烈なクレームを受けた。

そんな危ない事は二度としてくれるなと。


・・・・案外チョロいもんだな、隣に行くの。全然怖くなかったし。


と思った事は、内緒にしておこう。

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