変革の午後③
ー…なんだ、こりゃ……。
その後、およそ一分未満至福の時を過ごした俺はタイプの違う二人の美女に導かれて、二階のフロアにたどり着いたのだが……その内部を見た俺は度肝を抜かれた。
まず、フロアの広さだが外観よりも明らかに…昨日の入社式で使ったキャパシティ300人の会社の式典会場並みに広かった。
そして、内装も外から見えたいかにもなオフィスの内装等ではなく、まるで高級ホテルのスイートルーム…いや、『ホテルの中の小さなホテル』の意味を持つ『エグゼクティブフロア』のリビングのような豪華で尚且つ上品な内装だった。
そんな、文字通り未知の空間の中央には予想通り三人のそれぞれ異なるスーツにタイトスカート姿の美女が微笑みを浮かべて横一列に並んでいた。…いやはや、よくよく考えてみると初日から此処に至るまで疑問だらけだったな。例えば、『どうしてイオリを始めとした新人組が入社式の日に自由に身動きが取れたのか』。
その答えは単純だ。彼女達が所属する相応の地位を持った人間が最初から『味方』だったのだ。…ホント、ミヒトから来たメールとステキなランチタイムのお陰で完全に『考えるの止めた』状態だったぜ。
「ー流石ですわ、マスター」
「…それはこっちのセリフだ。全く、よくもまあ恐ろしく迅速で緻密な計画を立てたよ。
ーありがとう」
ふと、穏やかな雰囲気のセミロングの巨乳美女が俺の推察を称賛した。だから俺も、その美女…総務部の『花澤部長』を称賛し感謝を述べた。
「…っ!恐縮です」
彼女は顔を緩ませ、まるで満開の桜のような圧倒される微笑みを浮かべた。
「そして、君達も今日まで本当にありがとう。お陰で、『最高の始まり』を迎えられた」
「「「…恐縮です。マスター」」」
そして他の三人…シラトリとお堅い雰囲気を漂わせる眼鏡の巨乳美女『風間人事部長』と、寡黙で大人しい雰囲気のポニーテールを肩に掛けた巨乳美女『秋月経理部長』にも俺は感謝を述べた。すると、三人は『ハナザワ』とは異なるイメージを抱かせる心からの微笑みを浮かべた。
その光景はまさしく『花鳥風月』と言えるだろう。
…しかし、入社式レベルの行事でない限り絶対に同じ空間に集まらない『花鳥風月』がこうして社外に集まっているってだけでも相当な奇跡なのに、その四人の心からの微笑みが俺にだけ向けらている。
ああ、まさに今俺は『天文学的な確率』の奇跡に遭遇しているんだ。
気付けば俺は、ぼんやりと豪華な天井を見ていた。
「…本当に、頑張った甲斐がありましたわ。
だからマスター。どうか、我々に『ご褒美』を頂けますか?」
「…っ!」
四人は文字通りおねだりするように前屈みになった。当然、八つの豊満な果実はこちらに付き出されたので俺は唾を飲んだ。
「…ああ。俺が出来る事なら何でもしてあげよう」
「…感謝致します。
では、その前にまず我々の身分を語る時間を頂きます。
ー…私は、運営を司る『ア』のグループに所属する『参謀』です」
「(…ふむ、どうやら仮の名前…いや、『コードネーム』が欲しいのか。)じゃあ、コードネームは『マーサ』だな」
「っ!ありがとうございますっ!」
彼女…マーサは、華やいだ顔で深いお辞儀をした。
「ー次は、私のですね。
私は、同じく『ア』所属の『テリトリー拡大役』です」
「なら君は、『マルカ』だ」
「…っ、ありがとうございます。…とても嬉しいです」
その瞬間、マルカはぶるりと全身に鳥肌を立てながら微笑んだ。
「次は私が。
私は、同じく『ア』所属の『人員選定係』です」
「なるほど。…なら『マエス』が良いな」
「…ありがとうございます。大切にします」
マエスは爽やかなそよ風のような柔和な笑みを浮かべた。
「最後は、私ですね。
私は、同じく『ア』所属の『御用聞き係』です。…つまり、マスターの要望をマルカに伝える係ですね」
「ほう…。だったら君は『マゴル』だな」
「畏まりました。ありがとうございます、マスターダイスケ」
マゴルはまるで夜空に静かに浮かぶ月のように僅かに表情を緩ませる。…しかし、その瞳は十五夜の満月が如くキラキラと輝いていた。…あ、せっかくだからー。
彼女達の微笑みを堪能していた俺は、ふとある事を思い付いた。
「…どうかなされましたか?」
「…何、ちょっと『大事な事』を思い出しただけさ」
怪訝な顔するマーサに、俺はそう返しながら後ろを振り返る。
「……?」
当然そこにはイオリが居る訳だが、突然の事に不安になった。
「…君にその表情をさせてしまうのは、これで二回目だな。
だから、二回分の謝罪の意味を込めて『ミジュイ』のコードネームを贈らせてくれ」
「……え。……っ!」
唖然としたイオリは、直後両目から涙を流した。
「……っ、あ、ありがとう……ございますっ!」
「どういたしまして。
ーああ勿論、同じく迷惑を掛けた『君』には『ミクト』のコードネームを。そして、『君』には今日までの感謝と再会を祝して『ミクト』のコードネームを贈ろう」
嬉しさで鳴き声になるイオリを微笑ましく思いながら、俺は直感的にリビングの奥にある大きな画面のテレビに向かって言った。
『ーホント、マスターには敵いませんね』
直後、テレビの電源が入り画面にアンリとイリアが映し出された。
「まあ、君が『大事な場面』を見逃す筈はないだろうし、その護衛たる君も居ると予想したまでだ」
『……。…本当にありがとうございます…』
『大切に致します…』
二人は驚きつつも、瞳を潤ませて深いお辞儀をした。
「どういたしまして。…っと、悪いな。
それじゃあ、改めて『ご褒美』タイムとしよう」
「お気になさらず。…寧ろ、その優しき気遣いに感服致しました」
「これは、気合いを入れないといけませんね」
「…ええ。『ステキ』な時間にしましょう」
マルカの言葉に、マエスとマゴルは彼女同様凛とした表情で頷いた。
「…それではマスター。どうか、我々が『生まれ変わる』のを心行くまで後堪能下さいー」
すると、四人の服は一瞬で白いワンピースになった。…うわ、すげー。
純白のワンピースに身を包む四人に、俺はただ圧倒されそしてボディラインがはっきりと分かるその出で立ちに更に興奮した。
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