ep.25
「大丈夫ですか!」
扉の奥から桃華の心配している声が聞こえる。
「特に怪我をしてる訳じゃ無いし大丈夫だ」
「よかったです!扉開けますね」
先程まで鍵の掛かっていた扉が桃華の手によって開かれる。
「やっと出れたー、ありがとね桃華ちゃん」
しばらく薄暗い場所にいた所為か外へ出ると眩しさに目を細める。埃臭い空気もなくなり清々しい気分だ。
「何で出れなくなった時にすぐ連絡しなかったんですか」
「…いやぁ、連絡来るまでスマホの存在忘れてて」
俺がそう言うと二人が呆れた目で見てくる。悪いのは俺なので素直にすみませんでした、と謝ると次は気をつけてくださいね、と言って許してくれる。こんな事、次があって欲しくないのだが…
「とりあえず、早く教室戻りますよ!お弁当を食べる時間が無くなっちゃいます」
「そうだね、行こう?宇津くん」
「お、おう」
橘さんの宇津くん呼びに中々慣れない。中であんな事があって橘さんはいつも通り
なのに俺だけが意識してるみたいだ。やけに
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橘さんから『好き』と言われてこれからどうなるんだ、と不安に思ったりもしたが、変わったことは俺を宇津くんと呼ぶようになったことと、少し距離感が縮まったことぐらいしかなかった。
名前呼びされるのは一週間もすれば慣れてしまうのだが、距離感(物理)が縮まるのはいつまで経っても慣れないと思う。例えば、
そんな事もあったが無事に橘さんの猛攻を耐えて、俺たちはゴールデンウィークを迎える。ただ無として過ごした去年と違い、今年の俺にはしっかりと予定が入っている。桃華とのショッピングと、橘さんの荷物持ち。一か月前の俺に言ったら多分信じないだろう。
まぁ、予定が入っていると言ってもその二つだけなので今日は自由なので朝から
桃華とリビングでくつろいでいる。目の前には紅茶とクッキーそしてテレビには借りてきたラブロマンスの映画。
今までラブロマンス物の映画は見ることが無かったのだが見ていると案外面白い。登場人物の心情などが俳優の演技を通じてしっかりと伝わってくる。借りてきた桃華はキスシーンやベッドシーンなどで恥ずかしくなって手で目を隠すのだが指の隙間からチラチラと見ていて微笑ましい。
「こういうの初めて見ましたけど、面白かったですね!」
「だな、こういう映画も案外悪くないな」
桃華もこの映画は面白かったようで満足している。時計を見ると昼前をさしている。
「昼ごはんどうしましょうか…」
「んー、…あ、外で食べないか?」
せっかくの休みなのだし桃華にはゆっくりしてほしい。それに、前に静さんからまた来てくださいね、と言われているのでカフェでランチを食べたい。桃華もいいですね!と乗り気になっている。そして、急遽ランチを食べに行くことが決まった。
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