ep.20

 散らかった服を下着と洋服に分けて行く。着ていなさそうな服は畳んでまとめ、下着と着た服は洗濯機に入れていく。

 色移りしそうな服は別で洗い、待っている間は特にすることもないのでリビングを掃除していく。


 洗濯が終わったらベランダに干す作業を2,3回程繰り返すとやっと洗濯が全て終わった。

 合間にやっていたリビングの掃除もひと段落し、初めて入った時のように綺麗になっている。


 キッチンの道具を借りて、おそらくまだ仕事をしているであろう静さんに紅茶を淹れて持っていく。


「静さん。紅茶淹れましたよ」


 ノックをして部屋へ入ると、俺に気づいた静さんが顔を上げ、ありがとうとお礼を言う。


 一旦休憩するようで一緒にリビングへ戻ると、さっきまでとは見間違えるように変わっている事に驚いている。


「これ…… 全部宇津くんが一人でやったんですよね?」


 確認する様に聞かれたので、勿論です、と自信を持って答える。


「家事の他にも掃除もやってくれてたんですか! お金の方ちょっと増やしておきますね!」


「え、いや大丈夫ですって。掃除の方は暇だったからついでにやっただけですから」


 静さんにお金を貰うことも正直あまり納得していないのにこれ以上多くされたら困るので全力で遠慮する。


「むー、そこまで言うなら…… でも、ここまでしてもらったのに何もあげれないのは…」


「あー、静さんの淹れるカフェオレが飲みたいです。それでどうですか?」


「宇津くんがそれで良いって言うなら…… そのくらいならいつでもしてあげますよ? 」


「そのくらいが一番良いんです。俺は静さんが淹れたのを飲みたいので」


 静さんが淹れるカフェオレは自分で作るものより美味しいので、それが手伝いをすれば飲めるのならお得だろう。そう思って言うと何故か顔が赤く染まっている。

 実は体調が悪くて今まで隠してたのか、そう思い心配して声をかける。


「少し顔が赤いけど大丈夫ですか?」


「は、ひゃい、大丈夫です…」


 顔を俯かせながらそう言ってちまちまと紅茶を飲み始める静さん。まぁ、本人が大丈夫だって言ってるし気にしなくてもいいだろう。


 静さんも喋ることはなく、俺も喋る空気感ではなかったので少しの間紅茶を飲むだけの時間が続く。


「あの、宇津くんこれ今日手伝ってくれたお礼です」


 沈黙を破り、静さんが封筒に入ったお金を渡してくる。大丈夫ですよと遠慮しようとすると絶対にこれだけは渡しますと決意したような顔の静さんがこっちを見ている。流石に受け取るかと思いありがとうございます、と言って封筒を受け取る。


 時計を見るといつの間にか時間が結構立っていて、夕方に差し掛かっている。


「そろそろ帰りますね。また困ったことがあったら言ってくださいね」


「もう帰ってしまうんですか? もう少しいてくれても大丈夫ですよ?」


 そう誘われるがこれ以上は前回桃華に注意されてしまった以上遅くなるわけにはいかないのでしっかりと断る。そうですか… と少ししょんぼりした静さんを見てまた今度来ますからと言うと本当ですか! と嬉しそうにしている。

 

 一階へ降り外へと出る。まだ日は暮れていないので家には間に合いそうだ。わざわざ出送りに来てくれた静さんに今日はお邪魔しましたと言うと、また今度来てくださいね、と念を押される。それに苦笑しながら分かりましたと答えると背を向け帰路についた。







 


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