ep.6
アラームの音が鳴り響く。もう少し寝ていたいと思う気持ちを抑え、アラームを止めベットから起き上がる。見た所、夜のうちにまた雨が降り出したようでカーテンの隙間から外を覗くと灰色の雲が空を覆っている。
いつものよう朝食の準備をするために下に降りると、バターの香りが漂い台所に誰かが立っている。
「あ...宇津さん 、おはようございます。台所お借りしていますね。」
どうやら、桃華が朝ごはんを作ってくれているようだった。しかし、昨日は親父と意思の確認などで夜遅くまで話しており、俺より遅く寝たはずなんだが......と疑問に思い聞いてみると
「昨夜はあまり寝つけなくて、今朝も早く起きてしまったんです。それに…… これからはこの家に住まわせていただく訳ですし朝ご飯くらいは作らないとなって思って」
と言うことらしい。今日からは同じ屋根の下で生活することになるんだし、気を遣わなくても大丈夫なのになと思う。
桃華に朝食作ってくれてありがとね、と一声かけてから言われた通りに顔を洗いに洗面所へ向かう。顔を洗い身だしなみを整えてからリビングに戻るといつもと違い豪華な朝食が並んでいる。親父も起きだしたようで先に座って朝食を食べている。
朝食はフレンチトーストにスープとしてポトフがついていて席につき、いただきますと言って俺も朝食を食べ始める。
いつも、朝食を作っている側だったので誰かに作ってもらうというのは久しぶりで新鮮だった。フレンチトーストは中までしっとりとしていて甘すぎず、故に上にのっているはちみつの甘さが引き立っている。ポトフも朝食だからかあっさりとした味になっていた。
「どうでしょうか…」
俺も親父も朝食がおいしすぎて、黙々と食べていたようで桃華が心配そうな目で聞いてくる。
「あぁ、ごめん。今まで食べた中で一番美味しくて夢中になって食べてた。桃華がこんなに料理上手だとは思わなかったよ。毎朝、食べたいくらいだ」
あまりにも美味しくてまくし立てて喋ってしまい、後から自分が最後に何を言ったのかに気づき慌てて訂正する。
「あ、いや、毎朝ってのはこれからずっとって意味じゃなくてだな!あー、あれだ、えーと、桃華が家にいる間っていう意味だな、うん」
そう、焦って訂正する俺を見てふふっと笑い わかってますよ と言い、桃華は朝食を食べ始める。
「はぁ...... イチャイチャするのもいいけど、程々にな。父さんは今日からまた出ないといけないから。桃華ちゃん、宇津のことよろしく頼むね」。
「はい!頼まれました!」
そう元気に返す桃華を見て、満足したのか準備をして職場に向かっていった。
朝食を食べ終わると、二人で家事の当番や桃華の部屋を決めていく。テーブルに座り、紙に役割を書いていく。
食事の準備は桃華自らやりたいですっ、と立候補したので採用した。食材を買うときは二人で行き荷物を俺が持つことに。掃除は食事の用意もやってもらっているので流石にやらせるわけにはいかないので俺が担当に。洗濯物はどちらも下着を見られるのは恥ずかしいとのことで、時間を決めて各々が洗濯することになった。
桃華の部屋は二階部分の俺の部屋の隣が開いていたのでそこに。家具などは一緒に買いに行くことになった。
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昼食も食べ終わり時計は三時を差している。桃華がいれてくれた紅茶を飲みながら一息つく。テレビを見ながらおぉ、と言って目を輝かせている桃華を横目に微笑む。今の桃華の格好は俺の貸しているシャツに高校のジャージを着てもらっているので、服も家具と一緒に買いに行かないといけない。
桃華を見ていると、これまでの生活を思い出す。誰もいない家に帰り独りで過ごす。今までは気づかないふりをしていただけで自分は寂しかったんだなと思う。桃華と過ごしていると、心の中に空いた穴がふさがる様な、そんな感覚がある。
桃華と出会った時、夜は好きかと聞いてきた時、桃華も寂しかったんだと思う。誰もいない場所に生まれて、雨が降っていて、暗くて。あの時の儚げな姿と月明かりに照らされて見えた不安げな眼。これからは、彼女をそんな風にはさせないと密かに心に誓う。
多分、ここから新しい俺が始まる。そんな予感に胸を馳せる。
「改めて、よろしくな。桃華」
桃華は自己紹介を聞いてふふっと笑うと、こちらを向いて満面の笑みを浮かべる
「はい!よろしくおねがいしますねっ!宇津さん!」
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これでやっとプロローグ部分が終わりです。
これから、他のヒロインたちとも絡めていきたいと思いますのでよろしくお願いします!
ヒロイン視点も書いてみたいので次は桃華視点になると思います。
感想・レビュー・評価していただけると泣いて喜びます!
追記
冒頭にメモ書きが堂々と書いてあってすぐに消しました。
投稿する前にはしっかり読むようにします....
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