ep.4
世界観の説明とやっと最後のヒロイン登場です
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玄関を開けると俺の親父、瀬見矢託が立っていた。
「久しぶりだな!宇津!」
親父はそう言うとのそのそと家に上がる。
靴を脱ぎ、リビングに行くと昼食の天ぷらうどんが置いてあるのを見て目を輝かせる。
「お、天ぷらうどんか!豪華だねぇ」
「親父が帰ってきたの、一ヶ月振りくらいだろ?たまには豪華なのもいいかなって思ってさ」
俺がそう言うと、親父は大袈裟に泣いた真似をしながら、俺はいい息子を持ったなぁと言いながら抱きついてこようとする。
「ちょっ!そんなことする暇あるなら、スーツ脱いで手洗ってきてよ!」
そのまま渋々、スーツを脱ぎ手を洗いに行く親父を見て、はぁ、とため息をつく。何でもう三十代も後半なのに、中身が子供なんだ……実の父に抱きつかれても嬉しくないっての。
親父が戻ってくると、二人で昼食を食べながら親父から学校での生活など聞かれた。友達はできたか?恋人はできたか?できたら、遠慮せず家に呼べよ。友達がいない俺にはお節介が過ぎるな、と思いながら適当に親父の質問をいなしていく。
昼食を、食べ終わると親父は少し寝ると言いながら自室に篭った。時間は一時過ぎ、俺も特にやることもないので、自室に篭りラノベを読んで過ごした。
本を読んでいると時間は早く過ぎ去るもので、窓の外を見ると雨が降っている。そういえば、今日は午後から雨だったなと思うと洗濯物を外に干しっぱなしだったことを思い出す。急いでベランダに出て洗濯物を取り込むとどうやらギリギリセーフだったようで、濡れている様子はない。
夕飯の支度をするために下に降りると既に親父が起きていて、ビールとつまみを食べながらテレビを見ていた。
親父の姿を横目に夕飯の支度を始める。特に特別なものを作るつもりはないので、ささっと作れる炒飯と中華スープを作り始める。
夕飯は一時間もかからず作り終わり、適当に親父と俺の分を皿に盛り付けた後、二人で食べ始める。親父は務め先では10秒でチャージするゼリーやカロリーをメイトするものしか食べていないようで、料理をいちいち褒めて美味そうに食べてくれるので作り甲斐がある。
食後は親父の買ってきたケーキを二人で食べた。やはり、洋菓子専門店のケーキは自分で作る物より美味しい。
ケーキも食べ終わり、テレビを見ていると獣人についてのニュースが流れていた。どうやら最近獣人の発生数が増えているらしい。そのニュースを見て親父がため息を吐く。親父は県の獣人対策課に勤めていて、どうやらここ最近忙しい理由は発生数が増えていることにあるようだった。
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現在、日本は世界で唯一の獣人発生国家となっている。人間は獣人と人に分かれており、獣人は五感に優れていて、人は脳が獣人よりも優れていると一般では言われているが、正式には分かっていない。
また、獣人は発生する。発生する条件は定かではないが、今まで発生した瞬間が発見されたことは公式では一切無い。この事から、一部の者からは獣人が発生する条件は人目がない事、と言うものもいる。
発生する場所に監視カメラがあったとしても発生する瞬間はカメラが何故か映らなくなってしまうため、民間企業と協力し、その地区の職員がカメラの映らない場所へ直接出向き、獣人の保護をしている。
基本発生する獣人の年齢は10〜20代のみであり、一人一人に名前が与えられている。自身は同じ年齢と同等の知識があり、自分がどこから来たのかなどの記憶は一切無い。
保護された獣人は一ヶ月ほど専用の施設で過ごし、18歳以上の獣人は国からの援助によりほとんどが一人暮らしを始める。17歳以下は本人からの強い希望などが無い限り、獣人限定の建物で過ごす。
獣人の権利は人と同じで当然、結婚も認められており、結婚した者の子供は獣人の子供が産まれてくる場合がある。
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夕食の食器を洗っていると、親父からつまみを買ってきてと頼まれる。それくらい自分で行きなよと言うと、どうやらドラマがいい所で見入っているらしく返事が返ってこない。財布借りるよと声をかけてから、傘を取り玄関を開け外へ出る。雨は少し落ち着いたようで小雨がぽつぽつと降っている。
家から徒歩五分ほどのコンビニへ入ると、若い男性がいらっしゃいませー、と言いながら品出しをしているのが見える。さきいかと柿ピーを親父に買い、買い出しを行かせた費用として、ちょっとお高いスイーツを買って外へ出ると丁度雨が止んだらしい。雨の上がった空には満月が浮かび、月明かりが夜を照らしている。
帰り道を歩きながら明日の予定や学校の事を考えていると、ふと何かに誘われたように明かりの灯っていない路地を見る。
路地の水溜りには月明かりが反射し幻想的な雰囲気を漂わせている。その真ん中に一人の少女が立っている。月明かりに照らされた髪は深紫に輝き、頭の上にある猫耳が彼女が獣人であることを示している。色白の肌にくっきりとした眼、雨にあたり濡れたのであろう服が肌に付き扇情的な見た目の完璧な美少女がそこには立っていた。
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