第30話秩父ミューズパークのシャクナゲ

   ㉚秩父ミューズパークのシャクナゲ


平成17年5月7日


ミューズパークへは良く行っているのに


全然気がつかなかった。


テレビの花の情報でシャクナゲが咲き始めたというので


行ってみる事にした。


いつもの所に車を入れていつものように愛犬を出して


散歩しながらシャクナゲ園を探すと小さな立札が見つかった。


いつも愛犬を散歩させる場所のすぐ目と鼻の先にある。


道路を渡って見に行くと暗い山の中に入る細い道がある。


下り坂になっているその道を歩いてゆくと右の下の方に


シャクナゲらしい紫ピンクの色が見えて来た。


道はそのまま下ってしばらく行くと右手に曲がっているようだ。


そのあたりがシャクナゲ園らしい。


下まで行って戻って来るのも大変なので愛犬を妹に


任せて車にスケッチ道具を取りに行く。


最初はたいしたことないんじゃないかと疑っていたが


降りるにつれシャクナゲの花が見えて来ると


何でこんなにたくさんの花が咲いているのに


ミューズパークの園内地図にでかでかと乗っていないのか


と思う。


用もないのに愛犬の散歩だけに立ち寄る事も有ったのに


今まで存在を知らなかったのだから・・・


もっと早くに知っていればもっと早くに会えたのに。


樹の高さもあるので結構前から花はあった筈である。


だんだんと心が弾んで来る。


どの花を描こうか、何処から描こうか。夢中になって


花のスケッチと景色のスケッチを描いていたが


ふと気がつくと誰もいない。


独り占めできるのはうれしいのだが、こんなにたくさんの花が


きれいに咲いているのに他に見に来る人がいないのが寂しい。


混んでいるのは嫌だがあまりに誰もいないのも心細い。


花を見ている筈の私がいつの間にか花に見られているのを


感じる。


花の視線を感じるのだ。


もちろん気のせいだろうが・・・花の精霊が私を観察しているのだ。


愛犬と妹はとっくに飽きてしまったのか姿が見えない。


この森に取り込まれてしまわないうちに帰る事にした。


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