第3話 クリスチャンとクリトリスチャン

 丸裸にされた僕は、お風呂場までママに連行された。そしてママは僕の目の前で服を脱ぎ始めた。久々にママのお尻が見えた。大好きなママのお尻だ。どんな果物よりも甘そうな熟れた桃のようなお尻だ。

 思わず僕は尻尾を振ってしまった。

 ママは僕の尻尾に目を落とすと、長い睫毛を伏せて目を細め、サクランボのような唇を綻ばせた。見慣れても決して飽きることは無い。見るたびにゾクッとさせられる表情である。

 ママの胸は大きからず小さからず桃色の乳首が上を向いている。お腹は引き締まっていて、微かに腹筋で割れている。子供産んだこと有るのかな?

 僕のお腹の方がよほど中年女性らしい。

 再びママの美乳に目をやる。乳房と乳房の谷間には十字架が下がっている。よく見ると奇妙な十字架だ。「十」に「U」が組み合わさっている。いや、「十」ではなく「士」である。「U」が組み合わさり、ワイングラスの様になっている。ワイングラスの中に「十」が収まっている。


「ヰサヲちゃん、ママの胸に見とれてるのね。男の子なんだから仕方ないわね」

「うん、ママの胸大好きだよ。でも、その十字架変わっているね。父さんのと違うね」

「そうよ。好く気が付いたわ。お利口さんね。そうパパはクリスチャンで、ママはクリトリスチャンなのよ」

「クリストリスチャンって?」

「あとでママのも見せてあげるわね。……こら、焦らないでね。男の子なら我慢も出来ないとね」

「はい、ママ我慢します」

 僕は女性のあそこを見たことが無い。夢の中でも、女性のあそこにもやがかかる。時には男と同じ物が生えてたりする。


「クリスチャンとクリトリスチャンの違いって判るかしら?」

「えーと、スロバキアとスロベニアくらいの違いですか?」

「いいえ、オーストリアとオーストラリアくらいの違いよ。スロバキアとスロベニアは、どちらも『スラブ人の国』って意味よ。だから、名前の似た親戚みたいなものね。でもね、オーストリアとオーストラリアは名前が似てるだけで別の国ね。クリスチャンもクリトリスチャンも名前が違うだけで別の信仰ね」

「具体的にどう違うの?」

 ママは例の十字架に両手を添えた。

「ヰサヲちゃん、これが何の形かわかる?」

「何だか、ワイグラスの中に十字架が入ってるみたいだね」

「そうよ、これはね聖杯・餐蔵得サングラールなのよ」

「でも聖杯もキリスト教の話だよね」

「今は確かにそうね。でもね、元々は私たちの聖具なのよ。それをクリスチャンが真似して話を取り入れたのね。聖杯・餐蔵得サングラールって何だかわかるかしら?」

「うーんと、魔法の聖杯なのかな?」

「それは間違いではないけど、本物の聖杯・餐蔵得サングラールは、ヰサヲちゃんの目の前にあるのよ」

 ママは引き締まったお腹を指でなぞった。お臍からヴィーナスの丘の谷間にかけて、その聖杯の形をなぞったのである。

「ママのお腹が聖杯なんだ。確かに神々しくて、わかるよ。本当にママは女神様だよ」

「ヰサヲちゃんは賢いわね。もう話の真実に近付いちゃったのね。でもね、段階を踏んで話を聞いてね」

「うん」

「あなたの名前はヰサヲで、ママの名前は?」

「マリヱ様だね」

「そうよ。ナニか気が付かない?」

「えーと、マリア様とイエス様なのかな?」

「そうよ。私がマリヱで、あなたがヰサヲよ。そして私のお腹が聖杯・餐蔵得サングラールよ。聖杯・餐蔵得サングラールはね、あなたの御魂を収め、あなたの体を創る器なのよ」

「じゃー僕って、本当にママの子供なんだね!」

「そうよ。毎回お腹を痛めて産んだ私が言うんだもの、間違いないわよ」

「僕って、全然ママに似てないから、ママの子じゃないんだって疑ってたんだよ」

「う~ん、お馬鹿さんね」

 ママは僕を抱きしめた。両胸と両腕の温もりに包まれた。


「だって、ママは超美形だけど、僕はチンチクリンのブサメンじゃない?」

「ごめんなさいね。イケメンに産んであげられなくて」

「ママ謝らないでよ。ママは僕の自慢だよ。ママさえ美しければ僕は満足だよ」

「そうなのよ。あなたがお腹の中に居る時に、ママは自分の美しさを分けてあげなかったのよ。だから、そういう可愛らしく愛くるしい姿で生まれて来たのよ?」

「えっ、そうなの?」

「私がね、美しさを分けると少し老けちゃうの。あなたを毎回産むたびに分けたら、おばあちゃんになっちゃうのよね」

「だったら、今のままで好いよ。僕がイケメンに成っても、ママが老けたら意味が無いもんね」

「そうね、いつも、あなたはそう言ってくれるわ」

 ところで、「毎回」とか「いつも」って何なんだよ?


「でもさ~、鏡見ても僕とママって似てる所が無いんだよね」

「ナニ言ってるの。あなたの肌も私みたいにスベスベで張が有って綺麗でしょ」

「生まれて初めて気が付いたよ。ママと同じで綺麗なんだね」

「それにね、ママと同じで腋も小股もツルツルよ。こんなに尻尾が育った男の子がツルツルって有り得ないのよ」

「じゃ、これがママと本物の親子って言う証拠なんだね」

「そうよ。あなたと私には神聖で高貴な血が流れているのよ。胸を張って尻尾を振って誇りなさい。それにね、ヰサヲちゃん今まで病気したこと無いでしょ」

「うん。馬鹿は風邪ひかないって皆から言われてた」

「それは違うわよ。並の人間は馬鹿だから風邪を引くのよ。私たちは高貴な種族だから、殆ど病気なんてしないのよ。ママが病気になったの見たこと無いわよね?」

「うん。……ところでさ~、そうえいば、ママがマリヱで、僕がヰサヲで、ママのお腹が聖杯・餐蔵得サングラールって、キリスト教と関係あるんじゃないの?」

「キリスト教はユダヤ教を真似てるけど、別の宗教よね。クリスチャンもクリトリスチャンも別の宗教なのよ」

「学校でも、キリスト教とユダヤ教は違う宗教だって習った。説明聞いても今一よく判らなかったな。先生に質問したけど、要領の悪い答えしか返ってこなかったよ」

「そういう問題は、簡単なようで難しいのよね。詳しいことは、二人きりでたっぷりお話してあげるわね。今回は、端折って先に進むわね。好く解らなくても、クリスチャンもクリトリスチャンも違うってことだけ、頭の片隅で覚えておいてね」


 こういう話は、授業されると眠くなる。でも、ママに躰を洗ってもらいながら聞くと、何となく判った気に成るな。

 背中にママの乳首が当たって気持ちが好い。僕はマットの上に腹ばいに寝かされて泡まみれである。これが体を清める儀式なんだな。


 体を清めた後、ママは大きなバスタオルで僕をフキフキしてくれた。何年ぶりくらいかな。いつもママからお風呂に誘われてたけど、いつの間にか避けるようになっていた。大好きなのに何でだろうか?


 僕とママは生まれたままの姿で家の中を歩いた。ママに手を引かれて寝室へと入って行った。ママと父親の大きなダブルベッドが横たわっている。

「ヰサヲちゃん、そっちじゃないわよ」


 ママに手を引かれて、ウォーク・イン・クローゼットの中に入って行った。洋服をかき分けて進むと異世界に入るのか?

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