第433話 何時だって、今しかないんです。
めぐみは、完全にフリーズしているピースケに渇を入れた――
「しっかりせいっ!」
「うわぁっ!、ビックリさせないで下さいよぉ……」
「ったく、ビビってんじゃないわよ」
「いやぁ、だって、皆、断ると思っていたし、こんなの、逃げて当然じゃないですか? 予想外の展開です……」
「あららららぁ。漢の中の漢と見込まれた男が、これじゃねぇ」
「めぐみ姐さん、僕だって、やる時はやるんですよっ! 只、死に急ぐ事は無いって思って……」
「優しさは仇」
「…………」
「ピースケちゃん。あんたに、やる時なんて一生来ないわ。そうやって見送る人生よ。何時かやろうは馬鹿野郎って、昔から言うでしょう? 何時だって、今しかないのよ……」
「…………」
喜多美神社の参道に、冷たい風が吹き抜けて行った。そして、その頃、遊び人のスーさんは
「丘の上 ひンなげしの花でぇえ 占うの ウズメちゃんの居場所 今日もぉ ひとり――ぃ いる、いない、いる、いない、帰るぅ――って、帰っちゃダメなんだなぁ、コレがっ!
「コーポ・ミカミ、コーポ・ミカミ……この辺りに間違いは無いはずなんだが……?」
目の前に有るのは、築八十年以上の、今にも朽ち果てそうな、おんぼろアパートだった。木の看板は流木色でコーポ・ミカミのミの字が消え掛かっていた――
「コーポ・神と読むって分けだなぁ。此処に間違いなさそうだぜ」
〝 コン、コン、コンッ! コン、コン、コンッ! コン、コン、コンッ! ″
「はぁ——い、開いてるわよ」
〝 ガチャッ! ギイ――――ィ ″
「ようっ! ミコトっ! 元気か?」
「ちょっと、あんた誰っ! 何処、見てんのよっ!」
「おっと、コイツはすまねぇっ!」
友達だと思って、無防備な格好で寛いで居た女の子は激怒した――
「楳図さんは二階っ! 201号でしょうにっ! この、助平っ! 変態っ! サッサと、出て行ってっ!」
「ゴメン、ゴメン、着替え中に悪かったな。間違いは誰にでも有るからよっ! 許しておくんなっ!」
〝 コン、コン、コンッ! コン、コン、コンッ! コン、コン、コンッ! ″
「楳図さん? お留守ですか?」
ドアに耳を当てても、部屋の中から物音は聞こえなかったが、電力のメーターの回転から、中に居る事を確信した――
〝 コン、コン、コンッ! コン、コン、コンッ! コン、コン、コンッ! ″
「楳図さん、お届け物でぇ―す」
〝 ガチャッ! ギイ――――ィ ″
「あのさぁ……あたいは夜の仕事だからぁ、宅配はさぁ……夕方にしてって、言っているじゃないのぉ。はい……ハンコ」
「ようっ!」
「?!」
「おいらだよ」
「あんたは、
「まぁ、話せば長いからよ、ちょいと上がらせて貰うぜ」
半開きのドアを、こじ開けて、部屋の中に入って行った――
「ちょっとぉ、女の、ひとり暮らしなんだからぁ、遠慮しなさいよっ!」
「聞かれちゃ不味い話しなんだよっ! アマテラスの件と云えば、分かるかい?」
「えっ?」
「此奴を見な」
「この『御札』はっ!」
「その包み紙の裏に、暗号が書いて有る。お前さんなら解読出来るだろ?」
「これは……」
「ゴクリッ……」
「そうだったのね……」
「ミコトちゃん、何て書いて有るんだい?」
〝 ミコト。あなたが、この暗号を読んでいる時、私は中宮には居ない。何者かの手によって誘拐されたか、殺されたかもしれない。でも、この『御札』を持って来た者と手を携え、私を助けに来て ″
「つまり、アマテラスは、身の危険を感じていたって事だなぁ?」
「私は、あの夏祭りの日に、あいつ等に騙されたのよ。アマテラスを喜ばせるためだって言うから快諾したのに、急遽中止になって……そして、行方不明に。私のせいよっ! 私が……」
「まぁまぁ、アマテラスは、誘き出すための罠だと最初っから、分かって居たんだろうよ」
「……え?」
「アマテラスが本気を出せば、相手は、木っ端微塵だぁ。それをしなかったのは、連中の正体を掴み、一網打尽にする計画だったと考えるのが筋ってぇモンよ。自分を責めちゃぁ、いけねぇよ」
「ありがとう……もう、合わせる顔が無いって思っていたの……だから」
「しかし、このおんぼろアパートは、思った以上に、守りが堅ぇなぁ」
「結界が張って有るから、不審者は入って来ないの。無理に立ち入ると、雷が落ちるわぁ……だから、直ぐに分かるのよ」
「そうかい……」
「行くわ……あなたと」
「あ、あぁ」
「でもさぁ。因りによって、あなたとはねぇ」
「まぁ、過去に、散々、悪さをしたからよぉ……合わせる顔が無いのは、おいらの方だ。だからよ、きちんと会って、謝りてぇんだ。あん時ゃ、済まなかったと、一言謝りてぇんだよ」
「そう……あんた、優しいんだね」
「いやぁ、そんなんじゃ……」
「じゃぁ……着替えるわ」
ミコトが、すっくと立ちあがると、丁度、股間が目の前に。思わず絶句して見入ってしまうのは、男の本能だった――
〝 パサァ―――――――――――ッ ″
「うぁっ!」
ミコトは、ネグリジェを脱ぎ捨てて全裸になると、箪笥から下着を取り出し、パンティーとブラを装着すると、ファンシー・ケースからワンピースを何着か取り出して、姿見の前で合わせていた――
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