第27話 仮の同棲結婚

 アレクセイとコーネリアが王都に帰ってきて1ヶ月が経った。今、二人は新居で同棲生活を始めている。しかし、お邪魔虫の様に彼らの両親も住んでいるのだ。


 何故こんな事になったのかというと、アレクセイは、既に伯爵家を継いでいるから当然、王都に新居がある。そこへコーネリアと一緒に住みたいと願い出た。しかしなので正式な婚姻届は出ていない。未婚の男女が監視のいない場所で、一緒に生活するなど外聞が悪いと両家の親から反対を受けた。


 どちらの家も自分たちの屋敷に住まわせると言い張った。結果、アレクセイは間をとって、母親監視の元に仮結婚生活を始めたのだが、おまけで二人の父親まで付いてきたのだ。


 「あの、父上そろそろ自分の屋敷に帰ってはいかがですか。母上だけで大丈夫なので…」


 「何をいうか。アイーダがいない屋敷に用はない。ローランドがいるから安心だ。心配はいらない」


 「そ…そうですか…」


 力なく返答するアレクセイ。一方コーネリアも


 「お父様、お母様。お願いですから私たちの事に干渉するのは控えて下さい。二人共、大人なのですから、それにアレクセイ様が結婚前の私に何かするような方でないのはご存知でしょう?」


 「うむ、そこは信用しているが、それはそれ、これはこれだ」


 「まあ、コーネリア。殿方なんて二人だけになった途端、オオカミに変わるのですよ。襲われたらどうするのです」


 コーネリアからしたら今更そうなっても構わなかった。一年も触れ合うことを禁じられ、アレクセイの我慢の限界を超えた時、他の女性に目移りするくらいなら体を繋げて、自分に縛り付けてしまいたいのだ。


 コーネリアがそう思うのには訳があった。領地に行っている間でも友人からアレクセイの人気が高くなっている。コーネリアとの結婚が白紙になったら、誘惑する令嬢が出てきそうだと手紙に書かれていた。それに呼ばれたお茶会でも皆がアレクセイを褒め称え、コーネリアを幸せ者だと言いながら、ギラギラとした野心をむき出しにしている未亡人もいたのだ。


 コーネリアの不安は王都に帰ってき更に増していく一方で、夜会の度にあちこちからの視線を感じて息苦しさを感じていた。


 だが、コーネリアの不安をよそに、コーネリアとアレクセイが出会ったデビュタントに王家から招待状が来たのだ。この国のデビュタントは社交界デビューする子ども達とその家族が主役なので、高位貴族でも王家から招かれた貴族が出席している。誰もかれも呼べばかなりに人数になってしまう為、慣れない子供達を早く家に帰すために簡素化されている。これは5代前の国王の時に改められたことで、当時長丁場になった為、泥酔状態の大人や人ごみに酔った令嬢、途中悪ふざけをしだす令息等が続出し、会場が混乱したことが原因だった。


 そんなデビュタントの舞踏会にギャロット伯爵の名前で招待状が届いた。その真意が解らない。それに友人から忠告を受けている件の令嬢は今年のデビュタントするのだ。内心嫌な予感しかしないコーネリア。それに気づくことなくアレクセイは久々に揃って出席する公の場に、最愛の妻を着飾る事に夢中になっている。



 波乱のデビュタントの幕開けが開けた。

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