#15 生徒会本来の立場





 昨日と同じような1日を過ごし、そして放課後の生徒会室にみんな集合した。


 いつもの様にセツナさんの号令で始まる。



「えー、みんな揃ったので生徒会臨時ミーティングを始めたいと思います。 今日はまず最初にムギくんからみんなに報告があります。 ではムギくん、よろしくね」


『はい。 みなさん、色々とご心配かけまして、すみませんでした。 気持ちの方が落ち着いてきたので、昨日自分なりに冷静に整理して考えてみました。 結論から言いますと、穏便に別れる方向で彼女と話をしたいと思います』


「なるほど・・・よかったらそう結論に至った理由を聞いてもいい?」


『はい。 最近の彼女の振る舞いを直接見てしまうと、凄いショックで悔しくて滅茶苦茶凹みました。 特に、自分には見せてくれたことのない様な笑顔を杉村に見せてる姿は、もの凄い敗北感でした』

『最初は怒りの感情を爆発させたい衝動もありましたが、昨日のミーティングで安井君に「大げさ」って言われて冷静になれたんです』

『それで、一人で考えてたら、確かに10年以上の付き合いのある僕よりも他の男に愛想よくされるのは辛いですけど、逆に僕は彼女のことを笑わせることが全然出来ていなかったんだって気付きまして、そんなんだからぞんざいに扱われるのも自分が不甲斐ないだけなんだって』

『だから、ここで僕が怒りに任せて騒いでも、みっともないだけだと思いまして、一度彼女と話をしてから、別れようと思います』


『あと、彼女たちに何等かの制裁を与えるというのは、生徒会として問題だというのも。 確かに倫理的に問題があったとしても、法律や校則を違反した訳ではありませんし、それなのに生徒会として罰を与えるのは、ただの私情による権力乱用になってしまいます。 あと、罰により彼らの学校での立場が悪くなるというのも、やはり問題だと思いますし』



「そうね、私たち、色々と浮き足立って冷静さを失ってたのかもね。 例え彼らのことが憎くても、それでも生徒会は彼らを守るべき立場なのよね」


 セツナさん、生徒会長の立場捨ててもぶっ飛ばすって言ってたし、確かに冷静ではなかった



「じゃぁー このまま二人のことは放置するんですかー?」


「いえ、放置はせずにマークを継続するべきかと。 確かに制裁することに問題があるのは同意しますが、だからと言って、ムギくんだって我々が守るべき本校の生徒ですよ。 彼らがムギくんのことを害する存在である以上、放置するべきではないかと思います」


「つまり、我々生徒会としては、現状維持ということで?」


「そうね、杉村の調査の継続、ムギくんのフォロー、そしてムギくんは池内カナとの話し合いと決着。 そのあと私とムギくんの交際開始ってとこかしら」


「えー なんかー 会長だけ特してないですかー?」


「そうよ、そもそもなんでセツナちゃんがムギくんの彼女になることが既定事項になってるのよ!」


「そうですよー わたしだって今回は頑張ったんですよー」


「うるさいわね。こういうのは早い物勝ちよ!」


 またメンドクサイのが始まった。




「今日のミーティングこれで終わりなら、僕帰りますね。 杉村の調査は続けますので。 それじゃお先に失礼します」

 そう言って、安井君は一人先に帰って行った。



『あのー、僕は今夜にでもカナちゃんと話し合いしたいので、今からメールで連絡してみますね』


 セツナさんたち3人が言い争いをしているのを放置して、カナちゃんに送るメールを打ち込むことにした。


 文面を色々考えたけど、『今夜時間ある? 会って少しお話したいんだけど』と簡単な内容にして送った。




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