第2話 ヤバイ奴しか居ない世界



最初に1時間ほど生徒会長が地域の文化、俺達の通う高校のプレゼンを行っていた。

意外にわかり易く纏められており、思わず感心してしまった……やっぱり腐っても生徒会長なんだなぁ。


それが終わってからは、レクリエーションという名目の『お遊び』の時間となる。

まさに地獄時間だが、適当に将棋とかチェスでボコって楽しもう……と、俺はそう考えていた。



「はい、王手っ!」


「ぐぬぬっ!」



──しかし、将棋の対局を行なっている小学生に雄治は連敗している……それも完膚なきまでに。


お相手はレイナと名乗ったハーフの女の子である。

初対面でおんぶを要求する人懐っこい9歳の少女だ。



「……こうやって……あ、王取っちゃった」


「………あ、負けた」


「お兄ちゃん、だらぶちだねー」


「はぁ?どういう意味だい?」


俺は近くにいる金城さんに尋ねた。

因みに彼女はオカッパの女の子とオセロをしており、接戦の末、最終的には相手に華を持たせるという見事な接待オセロを繰り広げている。


そんな金城さんは神妙な面持ちで質問に答えてくれた。



「雄治様……それは悪口ですわ」


「んだと?」


負けて悪口まで言われるのか?

なんだこのガキ……やっぱり女が苦手になって正解だったわ。腹立つわマジで何なん意味わかんねーし。



「お兄さん!レイナとばかり遊んでないで!瑠美と一緒にチェスしよう!王様から動かないと部下がついてこないだろ、ごっこしよ!」


「嫌だ!このガキに勝つまでやる──え?なにそのごっこ遊び?ヤバくね?」


「やだ〜!夕美と遊ぶの〜!お兄ちゃんに一目惚れしたんだも〜ん!お兄ちゃん半◯直樹ごっこしよう!大◯田常務の役やって!」


「俺を土下座させたいの?」



──薄紫色の髪の少女・瑠美からチェスに誘われ、青い髪の少女・夕美からはしつこく求婚されている。


そうなのだ……坂本雄治は、女子小学生達から異様なほどにモテていた。

石田が居るグループの女子ですら、石田に一目置いてるものの、こんな風に迫ったりはしていない。


雄治の女性不信が功を奏しているのか……

子供を相手にしているとは到底思えない辛辣な雄治の態度……子供相手に一才の忖度なく、全力で勝とうとする大人げ無いところ。

それに加え、口は悪いが乱暴したり本当に傷付けるような事は言わない。


そんな姿が少女たちの心を擽っているらしい。



(ふふっ、子供の扱いも良いですわ。これは将来子供が出来ても安心ですわね!)


……等と的外れな事を考える可憐。

しかし、少女達に囲まれる雄治の姿は、彼女の目にとても煌びやかで美しく写っていた。



(ガキどもが死ね)


雄治が内心どう思ってるかは別として……



──────────



遊びの時間が終わり、再び生徒会長が話を始める。

空き教室を借りて、その黒板に字を書きながら話す生徒会長の姿は、まさしく先生そのものだ。


その証拠にサポートとして待機してる、聖堂小学校の先生に全くと言っていいほど出番がない状況。

まともに仕事してる姿は初めて見たけど、今日一日で高宮生徒会長への尊敬度がだいぶ上昇した。

良かったですね、俺に見直されて。



「ふふふ〜ん、ふ〜ん」


「……じぃー」


──全員が席に座って高宮の授業を聴いている。

右側のレイナが鼻歌を歌い、左の夕美がジッと雄治の横顔を見つめている。

そして、前の席で可憐が残りの二人に挟まれていた。



「…………」


静まりかえるとやっぱり余計な事を考えてしまうな。

両隣りのメスガキが、何かの拍子で騒ぎ立てる可能性が脳裏を過ぎる。

俺のことを痴漢呼ばわりするんじゃないだろうか?レイナは歌ってるのではなく俺の悪口を口ずさんでるんじゃないのか?夕美がジッと見つめているのは俺を貶める方法を考えてるんじゃないのか?


……そんな風に考えてしまう自分が情けない。

学校行事という守られた状況なのに、これだけ不信に思ってしまうんだから、もし街中で同じようなシチュエーションに出くわしたらどうなってしまうんだろうか?


そう考えると、ただただ怖かった。



「…………」


「…………」


あと、後ろに座っている姉ちゃんと石田の圧が凄いのマジで何なの?

ってか俺の背後に座らないで子供の相手しろよ、俺ですら頑張ってるのに。


しかも、ぶつぶつと何か話をしているし。



「全く見損なったぞ坂本、子供相手に」


「ほんとほんと。てか何で小学生にモテてんの?明日からお姉ちゃんランドセルで登校したろか?ええ?」


「というより坂本のお姉さん。坂本の左隣に座ってる少女、ずっと坂本を見詰めてますよ?」


「マジか?さぞ良い眺めだろうね!はん!──でも何でだろう?雄治って子供に好かれるタイプだっけ?割とそうでも無かった気がするんだけど?」


「人は日々成長しますよお姉さん……特に坂本は」


「ははっ!言えてるっ!」



…………


…………



「──はい!生徒会長!」


「え?どうしたの後輩くん?手なんか挙げて?」


「後ろの石田君と、坂本優香さんがうるさくて授業に集中できません!!」


「……坂本ちゃん……石田くん……今すぐ廊下に立ってなさい」


「「あ、はい」」



……高校生にもなって馬鹿だなぁ〜


もっと小学生を見習えよ。





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読んでくれてありがとうございます。


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これからも宜しくお願いします!










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