第15話 ここにいたい

テストが始まった

帰宅時間が早くなった

だから先輩といる時間が

長くなった


あと2日でテストが終わる

テストが終わったら

もうここには

来れないのかな


教科書を

ぱらぱら

文字を追う

記憶は不可

汗が

タラタラ


もう黙っていられない

僕は本当は言っちゃいけない

と思われる

一言を


「僕、テストが終わっても先輩とここで過ごしたいです」


先輩は冷たいでも

暖かいでもない

瞳で

僕を見る


「僕は君が思ってるほど良い人間じゃないんだよ」


僕はそれでも

沸騰しっぱなしの気持ちを

止められる

はずもなくて


わめ

薬罐やかん

みっともなく

ただ


湯気が冷めていく


「僕はね、好きな人を見捨てたんだ。そういう人間なんだ」


コーヒーの香りが

しない

空気が

僕の首を絞めた

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