新しい年編 その13 俺と、結婚・・・
「うん、まぁあれだ・・・メルちゃん、じゃなくメルティスの反応が正しいです。あれだよ?言い訳がましい感じになっちゃうけどさ、別に昨日のあれやこれやがあったからじゃなくてですね・・・確かにあれで踏ん切りがついたって部分も無きにしもあらずなんだけど少し前から考えてたことなんだからね?いや、そもそもメルティスに関しては1年近く前からの知り合いで・・・うん、長くなりそうだから細かい話は止めておこう」
うん、ちゃんと自分でも言ってるけど物凄く言い訳がましいであります!
分かってるとは思うけどお出かけ前にもかかわらず2人を呼び出した理由は『昨日の責任を取ること』つまりほら、ぷ、プロポーズだな。
「いやいやいや、そこは長くなっても良いんじゃないかな!?ほら、ふ、2人の馴れ初めから恋に落ちるまでの物語とか切々と語ってもらえたら・・・嬉しいもん」
「・・・あれ?もしかしてどこかのパーティに乗り込んで一族暗殺とかの話では無いのですか?」
「サーラさん、さすがに物騒すぎます。そして私、今なら妬み嫉みで1人くらいなら呪い殺せそうなのでそのお役目を引き受けることも可能だと思われます」
「ドーリス、ステイ。・・・ドーリスはこの戦争が終わってから改めて・・・ね?」
「御主人様・・・そのお言葉は心の底より嬉しく思うのですが・・・何となく出征前に口に出されるのはとても、そう、とても縁起が悪そうに聞こえていまいます」
ちょっとこのまま放っておくとメンタルブレイクしそうなドーリスを宥めつつもメルティスとサーラ、2人の前に跪く俺。
「・・・急な話で申し訳ないが、2人に対して、俺に男としてのけじめを取らせてはもらえないだろうか?メルティス嬢、サーラ嬢、俺と結婚・・・を前提とした感じ的なニュアンスを含んだかもしれないおおらかな気持ちでお付き合いをしてください!!」
「いや、そこはもう『結婚してくれ』でいいんじゃないのか!?わざわざドレスにまで着替えさせたのに婚約だけなのか!?それも言い回しが妙にふわっとしてるな!?お前・・・さては新しい女が出来たら私を捨てて逃げるつもり満々だな!?・・・もう絶対に離れないんだからねっ!!」
「・・・えっ?いえ、なんですか?えっ、これ、ぷ、プロポーズ的な感じのお話だったんですか!?もちろん、もちろんお受けさせていただきますけれども・・・メルさん酷いです!!先にちゃんと教えておいてくださいよ!!私、心の準備とか全然でき・・・できて・・・ふわぁぁぁぁぁぁん・・・サーラはハリス様のお嫁しゃんになりますぅぅぅ!!」
「サーラ!先に泣くんじゃない!!わ、私だって、わたし、だって・・・ハリスぅぅぅ!!」
大泣きを始めた2人が目の前で片膝をつく俺に抱き着いてくる。
あ・・・いや、何でもないです、可愛い花嫁さん・・・になるかもしれない彼女の鼻水とか全然気にしてないです。
「・・・てかこれ、了承を得たと考えて差し支えないんだよね?否定されてはいないよね?」
「御主人様、さすがにこの状況でその反応は朴念仁過ぎるかと思います。あと、行き遅れ真っ最中の私は何を見せつけられているのでしょうか?ちょっと壁とか床とか通りすがりの某とか殴ってきてもいいでしょうか?」
そこそこ高確率でダーク姉妹か衛兵隊長のおっちゃんと遭遇しそうだから暴力は止めて差し上げなさい。
俺に寄りかかり泣き続ける2人。
泣きながらも二人共笑顔なのできっと喜んでくれているんだろう。
・・・俺も泣きそう・・・いや、ここで俺まで泣き出すと収集が付かなくなるから目をウルウルさせるに留めてるんだけどね?
背中をさすったり髪を優しくすいたりしながら泣き止むのを待つ。
そして泣き止んだ2人に・・・用意しておいた竜骨の首飾り――もちろん俺と彼女たちの名前と愛の一言『竜の骨は永遠に砕けない硬さ』と入った首飾り――をそっと首にかけて渡すとまたまた号泣されたのだった。
ドーリス?よくわからないが俺に後ろから抱きついて首筋をクンクンしてたさ。くすぐったいから舐めるのは止めなさい。
あと竜の上半身吹き飛ばしたから骨ぐらいなら砕けるとか余計な発言は控えるように。
さて、ようやく泣き止んだ2人の顔をコーネリアス様でも実験済みの洗濯魔法で綺麗にしてから普通の格好にお着替えしてもらって王都のキーファー邸に向かうことに。
2人とも化粧っ気がないから顔を丸洗い出来るんだよね。
洗い終わってから『淑女にその魔法はおかしいだろう!!』って怒られたけど。メルちゃん、怒ってるけど笑顔。
そして普通の格好が黒い鎧姿って言うのも少々おかしな話なんだけれども。まぁ今から向かうのは戦場(予定地)だから。
ちなみに竜骨の首飾り、もちろん『求婚のためだけの首飾り』ではない。
俺の付けているチョーカータイプの親機と連動するようになっていて『俺のMPに支障がない状況(俺のMPが半分以上残った状態)なら2人とMPを共有する事が出来る魔道具』なのだ。
共有と書いて『吸い取られる』と読むんだけどね?
効果を平たく言っちゃえば『2人が装備している竜牙剣の特殊攻撃が今まで以上に使いやすくなる』だな。
戦場に立った時、単騎の相手なら鎧だけじゃなく剣をも難なく断ち斬り、集団が相手なら剣からドラゴンブレスを乱射するという・・・相手にとっては地獄のような光景が頻発するわけである。
まぁそんな効果がどうこうではなく2人ともプレゼントした首飾りをとても気に入ってくれてるようで俺としてもすごく嬉し恥ずかしいです。
屋敷の前で並んでお見送りしてくれるお留守番組の皆に「行ってきます」と伝えた後、2人の腰を両手に抱えて王都に転移する。
なんだろう?朝っぱらからキーファー邸の中庭にそこそこの人数が集合してるんだけど?
一緒に行動予定のヴェルフィーナ嬢とお見送りのヴァンブス公、そしてお屋敷のご当主であるガイウス様と次期ご当主のコーネリウス様、お嬢様のフィオーラ嬢とヘルミーナ嬢まではわかるんだけど・・・どうして今回は特に関係のないアリシア王女やリリアナ嬢にフリューネ候、そしてただの他人の皇太子までいるのかな?
ああ、見送りに来てくれたんだ?
もちろん綺麗な女の子に見送られるのはとても嬉しいんだけどね?
ナンチャッテ伯爵がちょっとそこまで出かけるだけなのにこの国の代表都市の支配者全員と王族が見送りに来てるとかおかしすぎないかな?
てか精霊様達もみんなここで待っててくれたんだ?しばらくは一緒だからよろしくね?
もちろんラッコちゃんは屋敷を出る前に俺の頭の上に装着済みである。ふふっ、うちの子可愛い。
出発の際には俺が精霊さん達を抱っこすると転移の時に危険なので精霊さんには『俺の肩ないし残りの3名の肩及び頭』に乗っかってもらうことになる。
ちなみにペンギンさんはヴェルフィーナ嬢の頭、ウサギさんはメルちゃんの頭、にゃんこはサーラ嬢の頭、子グマはもちろん俺の肩に搭乗する。
精霊子グマ、付き合いが長いからね?頭の上のラッコちゃんにちょっと嫉妬気味。
精霊様の搭乗も全員終わったし、では行ってまいりますと見送りの方々に挨拶して出発しようとしたら
「ハリス、予定よりも少し遅かったわ・・・あら、メルティスとサーラさんの黒い鎧、今日は雰囲気が違うわね?」
「お嬢様、おはようございます。ふふっ、やはり・・・気付かれてしまいましたか?この黒い鎧の胸元に輝く純白の首飾りに?」
「なんなのメルティス、朝からその少々めんどくさい感じ・・・待ちなさい、メルティス、それを外して私に見せなさい、そう、大至急外すのです」
「無理です、だってこれは・・・私の大切な、私を大切にしてくださる殿方から頂いた大切なものなのですから」
お嬢様に絡まれたよ・・・。
あと危険だからメルちゃんはあまり爆発物を刺激しないように。
それ、俺の命の危険がヤバくなるヤツだから!!
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