新しい同居人編 その14 ヴァンブス家の人々
乗り心地と安全性と頑丈さ以外はそれほど性能を突き詰めてるわけでもないのでそこそこおおらかな(大雑把な)作りの事もあり、特に車体に故障もなく2日目の夕方には『西都セルメル』に到着する。
メルちゃんも『操車スキル』が有るからか1時間くらいで操縦を覚えてくれたし長距離の割にはのんびりとした旅だった。
俺は前と後ろを休憩の度にいったりきたりしてたけどさ。
だって運転席で1人とかメルちゃんが寂しいじゃん?そして2人で交代しながらの運転とかちょっとしたカップル気分だな。
きっと2人の仲も大いに進展したのではないかと思われる。
休憩の時に魔水晶の使用状況の確認と交換もしてたんだけどそんなに消費量は多くないみたい。
台車の浮遊装置は交換無しで30時間くらい、機関の方も10時間くらいはぶっ通しでも持ちそうな感じ?
まぁ普通に出回ってるのよりも大きな魔水晶を使ってるからってのもあるんだけどさ。
てかメルちゃん、暴走することもなく綺麗な姿勢で安全運転だったのに少し驚いた。久々の凛々しい騎士姿にちょっとときめいたり。
だってキャラ的には絶対に薄笑いしながらアクセルベタ踏みすると思ってたもん。・・・いや、それはきっとサーラ嬢だな。次点でリリアナ嬢も運転席に座らせるのは危険だと思う。
「いや、君、これ、おかしいよね?馬車とは比べ物にならない、それこそ座って居眠り出来るような乗り心地なのに10日かかる距離を2日で走り抜くなんてありえないよね?あとあの馬の模型みたいなのは何のために付いてるのかな?」
「嫌ですねヴェルフィーナ様、馬車なんですから馬が牽いてるのは当然でしょう?」
「目に見えない速さで足を動かす馬とかいないからね!?」
「フィー、細かいことばかり言うと婿殿に嫌われるぞ?」
馥郁おやじ、いつものことながらスキあらば娘を押し付けようとしてきやがる・・・。
とりあえずここに来た目的を果たしておかないといけないので西都にあるお城(お屋敷?)に一室を貸してもらって転移場所に設定する。
特に魔法陣とか設置するわけでもないんだけどね?まぁ俺の私室になる感じだな。
いや、それほど親しくもない他所様のおうちに私室とかちょっと意味がわからないんだけど。
そして何故ご家族のご寝室の隣に部屋を用意するのでしょうか?
あと大きなベッドとかもいらないです。そしてエルフさんのお部屋ではないので私物を運び込もうとしないで下さい。
転移場所の確保が終われば特にすることもなく手が空いている俺は晩餐の用意。
俺一応お客様だよね?どうしてごはん作ってるんだ?
だってさ、申し訳無さそうにお願いされたんだもん。ヴェルフィーナ嬢・・・のお母様に。
お名前は『アリーサお姉様』。あれ?何故こんな所にエルフの女王様がいらっしゃるのかな?儚げな雰囲気がとてもいいと思います。ボディラインの透けて見えるような薄い布とか羽織ってくれませんかね?
「お客様に対してこの様なはしたないお願いをするのは大変申し訳無いのですが、キーファー公爵様のお宅での晩餐会での素晴らしいお料理のお話をうちの者からお手紙で伺いまして。ご迷惑ではありましょうが是非ご相伴させて頂けないでしょうか?」
「その様なご遠慮は一切御無用に願います。お姉様がお望みなら今すぐに竜の肉でもご用意いたしましょう」
「ハリス!?私が風の魔水晶を求めた時と態度が違いすぎないかい!?そしてフィオーラの母君もリリアナの母君もうちの母上もお姉様って年齢じゃないからね!!」
「ヴェルフィーナ、お黙りなさい、その様に乱暴な言葉づかいをしているからあなたは未だに婚約者もいないのですよ?」
「その通りです。もっとお姉様の優雅さや優美さを見習うべきですよヴェルフィーナ様」
「君はどこから目線でお説教をしているのかな?そもそも君が一言『はい』と言えば私の婚姻は決まるのだけれどね?あと2人で睦まじげに手を取り合うのは止めたまえ!!」
「それに関しましては高度な判断とさらなる情報の精査を必要といたしますので現時点でのお返事は差し控えさせていただきます。あと手は放したくないです」
名残惜しくはあるがこれ以上ここで粘るのは危険が危ない様だ。厨房を借りてとっとと料理の用意を始めよう。
内陸の街だし海老フライをメインにしたら珍しがってくれるかな?
牡蠣フライ?あれって食べ慣れない人間は生臭いとしか思わないと思うんだよなぁ。
「ふふっ、あなたが初めて気に入った殿方と言うからどの様な方かと思っていたけれどとても面白い方ね?」
「そうですね!他人事として見ればきっと面白いでしょうね!!」
「そして若い方に求められるというのはなかなかに気分の良いものなのですね」
「勘違いしないで下さいね?アレは早くに親元を離れたので母性に少し飢えているだけらしいので!決して私が母上より魅力がないなどと言った理由ではないのですからっ!!」
キーファー家に続きヴァンブス家でも謂れのないマザコン疑惑を広げられるハリスであった。
そしてその日の晩餐に集まったのはご当主と奥様が三名、近くのお屋敷でのんびりと暮らしている公爵家の先代様と奥様、このおうちのお嬢様が三名。
キーファー家とは違い奥様方三名が普通に仲良しっぽい雰囲気でギスギスしてなくて少し驚き。さらに王都にもお二人奥様がいらっしゃるらしい。
・・・とても、とても不愉快な気分なのである!!
てかこちらのお家、お子様が『美人三姉妹』なんだよなぁ・・・。浅井家かよ。いや、あそこ男の子もいたけどさ・・・小谷城が落城した際に、ほら、ね?
つまりここん家、婿を取るか近い血筋から養子を入れるか考えてるって事だな。
うん、気のせいだと思うけど奥様方の値踏みするような視線で非常に居心地が悪いです。
そう言えば他のお家でご当主様の先代様(ガイアス様のお父さんとか)が出てきてないので『みんな早死にしてる?』とか思われているかも知れないけど普通にご領地や王都の邸宅で暮らされております。
家督を譲った後も一緒に暮らしてると『現当主とは名ばかりで役立たずの傀儡なのか?』と思われちゃうらしい。
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