東の果て編 その16 フードファイター・幼女

さて、本日は領民を集めてのバーベキュー・・・と言うか串に刺したりするのが非常に面倒なのでどっちかと言えばただの野外焼き肉なんだけどね?

てかバーベキューの定義がイマイチよくわからないんだけどさ。

何となくイメージとしては『バーベキュー』イコール『串に肉と野菜を差したやつを焼く』なんだけど・・・参加したことがあるバーベキューで串に刺したやつ、見たこと無いんだよなぁ。普通に焼き肉だった。

サッ○ロポテトのバーベキューはカレー味らしいし。あ、串繋がりだとシュラスコって美味しいよね。でも自由に食える普通の焼き肉の方好き。


て事で(?)街で牛とブタと鶏を何頭(&何羽)か買ってきた。てか、肉、高ぇんだよ!大きさにもよるけど牛一頭で金貨70枚~80枚!

・・・あれ、そんなに高くもないのか?よくわからん。

小売で買うとかなり高い気がするんだけど一頭買いだとむしろかなりお安い気がしてきた。まぁ骨とか食べれないところも多いから比べるのもおかしいか。


家畜なら料理スキルでも解体出来るんだけど、もしかして魔物の解体とかもすることがあるかもしれないので追加で解体スキルを上げてから時空庫の中ですべて解体する。

部位ごとにブロック分けされるしとても便利なのだ。

ほら、普通に解体すると・・・血湧き肉躍るからさ・・・。ぶら下げて血抜きするとか野外で大勢で囲んでたら完全に邪教の儀式じゃん?


ブロックからの切り分けは住民の前で行う。ライブ感って大事だからね?

内臓(モツ)系はどうしよう?俺、一切食べれないんだけど?ハラミまでならギリセーフ。みんなは食べるのかな?

ドーリスに聞いてみたら「むしろ主食ですが何か?」って言われたので煮込みと鉄板焼で供することに。そっちも味付けとかはするけど焼いたりはよろしくね?


てなわけで砂浜に集まった下々の者共。今日は身体の動かない者も年寄りも赤ん坊も馬車(と言う名のロバが引く荷車)で全員集めている。

最初に屋敷の前に集めた時と違い今回は鍬も棒も石も持ってないな。顔も穏やかになって笑顔で雑談してるし。

しかし、そんな事で安心してはいけない。前にも言ったと思うけどマフィアもヤ○ザも相手を陥れる時は笑顔で近付いてブスッといくものなのだ。

気を抜けば一揆、振り返れば一揆、なんとなく一揆、寝返りうつついでに一揆、それが領民と言うものなのだから!!


「あー、本日は呼びかけにより集まって貰えたこと感謝する!伝えている通り今日は食事会だ。酒も用意してあるので大いに飲み食いして欲しい」


うおおおおお!と妙に元気な領民たち。なんだ?やはり一揆か!?もしかすると配る前から賃金が雀の涙だと気付かれたか?


「まぁその前にひと月の全員の働きに対して些少では有るが、あくまでも『些少では有る』がっ、俸給をっ、配らせてもらうっ!名前を確認しながら渡していくのでそちらの白いエプロン姿の麗しい女性の前に一列に並ぶように」


多少蛇行してはいるが真っ直ぐに並ぶ老若男女(男少なめ)。真っ直ぐとは一体。そして少し離れて座り込む・・・何だ?怪我人?

いや、並んでる中にも片手のないおっさんとか足を引き摺ってるおばちゃんとかいるな。

年齢的には十分働き盛りの者もいるのに非常に勿体ないな。

並んでる連中は後にして座り込んでる怪我人?から治療していくか。


「・・・足は昔からか?」


うん、知らないおっさんだからね?コミュ障を最大限に発揮する俺。いや、普段は平気なんだよ?


「あっ、はい、五年ほど前に漁に出ている時に・・・」

「ふむ・・・ズボンを脱いでよく見せてみろ」

「はぁ、見てもあまり気持ちのいいもんじゃねぇですよ?」


尻を浮かせながら器用にズボンを脱ぐ男。うん、小汚い野郎のパンツ姿なんて見ててまったく楽しくはないので早くしてくれ。むしろ貧乏な村だしパンツ履いてないって事もありえたんだよな・・・。

いや、銭湯を建てたからこれでも小綺麗になったほうなんだよ?最初の頃とか(ピー)の(ピー)かと思ったもん。


「これは・・・よく失血死しなかったな・・・」

「はい、前のご領主様が手当をしてくださいましたので」


ポウム家の親戚筋にしては良い人間だったんだなぁ、幼女のお父さん。いや、うちも父親は悪い人間じゃない、むしろ小市民だけど貴族としては善人は方なんだけどさ。

膝の少し上まで食いちぎられた右足の前に手をかざして『それらしい』呪文を唱える。


「光の精霊よ、その御力を我に貸し与えこの者を癒し給え・・・大いなる治癒」


ふさがった疵痕が眩しく輝きだし、ゆっくりと足の形にそれが伸びた後『パッ』弾ける。


「・・・はっ?えっ?はあぁぁぁぁ!?!?」

「これでいいだろう。元通りに動けるようになるまでは少々掛かるだろうが無いよりはマシだろう?」

「はっ、あっ、はい、はいぃぃぃ!!ありがとうございます!ありが・・・とう・・・ございます・・・ぅぅっっ・・・」

「構わんさ。これからもこのヴィーゼンの為に力を尽くして欲しい。ああ、並んでる者も怪我人や体調の悪い者が居れば俸給を受け取った後に私の前に来るがいい!光の聖女フィオーラ様と光の大精霊様のお力をお借りして治療してやろう!!」


そしてまた、うおおおおお!!と大きな声が・・・起こらなかった。むしろみな静かにその場で跪きこちらを拝みだしたからだ。何の新興宗教団体だこれ。

止めろ、成仏するから、拝むなら『光の聖女様』にしてくれ。ごめんよフィオーラ嬢、面倒くさいから丸投げさせてもらうね?後でお社でも建てて聖女の像を飾っておくか。

そしてこの時が『フィオーラ教』誕生の瞬間である。いや、そんなもの勝手に作ったら教会と大げんかになるわ。

とりあえずまだ飯も食ってないので全員立たせて俸給(寸志?)の支給と治療を済ませる。腰が痛い?椎間板の再生すればいいんじゃね?

あ、赤ちゃん連れて来られても祝福とかは出来ないからね?神父さんでも妊婦さんでもないから。仕方がないのでなんとなく頭をなでておいた。


そのあとはワイワイと炭火焼肉パーティ。メイドさんのモツ料理が思ったより大人気で少し驚いた。まぁむっちゃ焼いてるタレと煮込んでるダシのいい匂いがするもんね。あ、俺はいいです。風味もだけど形がね?ニガテなんだ・・・。

そして俺は俺で鉄板でステーキを焼く係である。見よ、このナイフとフォーク捌き!塩はもちろん某外人シェフの様に高い所から・・・振っても風で飛び散ってしまうので普通に塩胡椒を振る。今日はニンニクバターソースで召し上がれ。

繰り返すが肉を取りに来た爺さん婆さん、俺を拝むのは止めろ。そこそこ縁起が悪い気がするから。

ああ、酒はその辺に樽ごと置いとくから飲む人間が勝手に入れてくれなさい。

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