北都・公爵館 閑話 メイドさんリターンズ&女の戦い

 少しだけ時は遡り・・・こちらまたまたメイド寮の夜の食堂。

 ハリスが毎日お風呂に入りたいのでそのお零れで毎日入浴できるようになったメイドさん達が湯上がりホカホカで集まっておりました。


「ふぅ・・・今日もお風呂気持ちよかったね。て言うかこんな毎日お風呂に入れるとか完全に上級貴族様の贅沢だよねぇ」

「うんうん、ハリスくん様に感謝だよね。もう足向けて寝られない、むしろ足で踏まれながら寝たい」

「あなたの性癖はどうでもいいわよ・・・。それよりもあれよ!最近みんな妙にお肌も髪もツヤツヤしてるでしょ?お使い先でたまに他所のお屋敷の子と会うんだけど肌のもちもち感とか透明感が明らかに違うのよね」

「あー、それ、私も思った!やっぱりあのハリスちゃん様印の石鹸としゃんぷー?のおかげよね?」


「石鹸、臭いがあんまり好きじゃなかったけどハリスたんのは匂いがまったく違うもんね!お花の香りの石鹸とかどうやって作ってるんだろう?」

「石鹸もだけどさ、しゃんぷー?アレ凄くない?て言うか私、指先に怪我してたのに髪の毛洗ってるうちに治ってたんだけど・・・」

「いやいやいや、いくらなんでもどんな効果なのよそれは・・・。さすがにないでしょう?」

「あなたも!?私も腕に火傷してた時に髪の毛洗いながら『泡がしみるな―』と思ってたらお風呂上がりに火傷が綺麗に治ってた事あるよ!!」


「なにそれ恐い・・・。てかさ、石鹸とかもだけどあのお湯!毎日魔法で出してくれてるけどさ、魔法の水ってうんぬんかんぬんで若返りの効果があるって何かで読んだことがあるんだけど・・・」

「うんぬんかんぬんの説明しなさいよ・・・若返りって言うより体調とか魔力の流れを整える効果があるらしいわよ?だから特に疲れ気味の子とかはお肌に凄く良いんじゃないかしら?」

「マジで!?だったら飲まなきゃ駄目だよね!?ハリスたんの入浴後のハリス汁を!!」

「彼、自分が上がる時にいつもお湯の張替えしてるでしょ、お湯を流すんじゃなくて持ち上げて捨てるみたいな感じであっという間に。それにお肌に良いって言ってるのにどうして浸かるんじゃなくて飲むのよ」


「それとあなた達さ、お湯の補充してもらう時絶対に全裸待機してるよね?私結構な頻度でハリスくんを呼びに行く係にされてるんだけどアレってズルくない!?もちろん呼びに行く係もお話が出来るから良いんだけど・・・」

「あー・・・だって・・・ねぇ?お風呂場だから合法的にお肌を見せつけられるし?お顔が真っ赤になるから可愛いのよね~。いつか血迷って襲ってくれないかな?」

「姉弟なんだからあんなに照れなくてもいいのにね?」

「ちげぇよブショタラコン。私わざと手ぬぐい濡らして透けさせるサービスしてるよ!」


「なによそのブショタラコンって・・・。あなたはいつも攻め過ぎだとおもうわ。お手洗いの一件で懲りなさいよ・・・」

「あ、私いつもハリスくんの洗濯物担当してるんだけどさ」


「チッ」

「チッ」

「チッ」

「チッ」

「チッ」


「チームワークの揃った舌打ち止めて!?彼の下着って凄いの!」

「えっ?もしかして貝殻とかそう言う?」

「それどこの海岸のマーメードよ・・・。そうじゃなくて素材って言うか布って言うか」

「あ~、確かにすっごい良い生地使ってるよねアレ。お嬢様の下着と比べても木綿同士なら肌触りが段違いにいいもん」


「どうして肌触りなんて知ってるのよ・・・。いつも使ってる手ぬぐいじゃなくばすたおる?も凄いよね、触らせてもらったけど凄く気持ち良かった!あれ、欲しいなぁ」

「触らせてもらったの!?お○ん○ん!?気持ちよかったの!?!?」

「落ち着け変態。アレも良いものだけど私はお嬢様のお部屋にあるお人形が欲しい!ものすごく可愛いのよ!」

「可愛い!?お○ん○んが!?」


 その日も遅くまで彼女たちの会話はとめどなく続くのだった・・・。


 ―・―・―・―・―


 ところかわりましてこちらはお嬢様主従。


「ああ・・・メル・・・どうしましょう、私もうアレ無しでは生きていけないかも・・・」

「アレ・・・ですか?えっと、何の事でしょうか?」

「アレよアレ、ほら、小さいお部屋に付けてもらった」

「ああ!洋式便器という奴ですか!」


「大きな声で言わないでよもう!凄いわよねアレ」

「そうですね、臭いもしなくなりましたもんね!」

「あなた、一度助走を付けて殴るわよ?いい?お姫様のそういうのは最初から臭いなんて一切しないの、分かったかしら?」

「えっ?でも・・・」

「アーアーアーアーアー!!きーこーえーまーせーんー!!」


「まぁそれはいいのよ!座り心地もいいし、水ですぐに流せるから何より清潔だし。そして何よりアレよ!トイレットペーパー!」

「あの字の書きにくい紙ですよね?あれ、インクは滲むしペン先ですぐに破れるし・・・」

「どうして態々アレに字を書こうとするのですか・・・。肌触りもよいですし、何より贅沢に使えるのがいいわね」

「そうですね!お小水の時にも遠慮なく使えますもんね!それに擦ってもお尻の・・・」

「だから大きな声でそういう事を言わないで頂戴!まったく、あなたは少々、いえ、多大にデリカシーと女らしさが欠けているのです」


「うう・・・えらい言われよう・・・」

「いつまでもその様ではお嫁の貰い手が無くなり・・・いえ、既にもう・・・」

「そこは諦めないで下さい!!そもそもお仕えする方を差し置いて嫁に行く訳にもいかないではないですか!」

「あら、つまりあなたが結婚『出来ない』のは私が結婚『しない』からだと言うのですか?」

「そうです!お嬢様が未だ結婚『出来ない』ので私も結婚『しない』のです!」


「・・・」

「・・・」


「いえ、この話題は誰も幸せにならないのでここで止めておきましょう・・・」

「そうですね・・・」


 そう言いながらも『コイツよりは先に嫁に行ってやる!』と心に誓うお嬢様と騎士様だった。

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