〈赤の竜〉、現実世界に目がとまる

 まだ知らない世界がある、と、〈赤の竜〉は、時々感心する。


 たとえば〈クギバネ〉の苦手とする音を鳴らす、あの楽器のある世界。感情のない〈赤の竜〉の、少なくとも気を引き付けた。


〈排除〉することとなるか。


 まだ、そこまでではない。


〈ヒノハナ〉の性質も多少把握されたようだ。


 だが、それは知恵ある者たちの中に眷属を送った、その時から織り込み済みだ。


 それら、ではない。


 おそらく、それら、ではない。


 あの〈モノ〉は、それら、ではない。





〈赤の竜〉。



 いつのころからか定かではないある〈モノ〉がその身中に宿ったことを感じていた。


 いつからか。


 この世に自分が生じたその時からなのか。


〈モノ〉は〈赤の竜〉に、その使命を遂行しろと促してくる。


〈その使命〉。


〈混沌〉と〈安定〉。


 永く、しごく単純な、その繰り返しと覚えていた。


 そこに、なにか干渉をされているところまでは〈赤の竜〉は察していた。


 しかし、わかるのはそこまでだった。

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