アウトキャスト・オンライン

鳴雷堂 哲夫

#1 アウトキャスト・オンライン

 「ねぇねぇ、兄貴!ゲームやってみない?」




 「ゲーム?いったい何のゲームよ?」




 あれは大学の暇な夏休み中のことだ。


『おれ』こと月影楼雅は、妹である月影玉兎とスマホで会話中、最近やっているゲームの話題になったのだった。




 「アウトキャストオンラインってゲーム、聞いたことない?」




 「あぁ、ネットの広告とかで宣伝してるあれね。それがどうかしたのか?」




 「わたしアウトキャストプレイしてるんだ。β版からプレイしてるんだよ!」




 「へぇ、おまえがああいうの遊んでるなんて意外だなぁ。」




 「それでねぇ……むふふ~。じつはねぇ……なんと!わたしアウトキャストの招待券を一枠分持っているのです!パチパチパチ!」




 「ほぅ、そりゃすごいな。で、おれにそれ譲ってくれるわけ?」




 「そうだよ。いらないなら友達に譲るけど?」




 「オンラインゲームねぇ……。うーむ……まぁ暇だし、やってみるかな?」




 「うん、それじゃメールで送るね!」






 まぁ、そんな感じでおれこと月影楼雅は、アウトキャストなるゲームを遊ぶこととなったのだった。




 「さて、いったいどんなゲームなんだろな?公式サイトでPVでも見てみるか。」




 以下、公式サイトや動画サイトなどでざっくり集めた情報。






 アウトキャスト・オンライン。


それは最終戦争後の荒廃した世界を舞台とした、多人数参加型オンラインゲームである。




 ベセスダのフォールアウトシリーズにインスパイアされた日本のゲームクリエイターたちが製作した、新感覚ポストアポカリプスアドベンチャー。




 物語はこうだ。


最終戦争が起こり、人類の大半が絶滅した植民惑星メガ・フロンティア。


生き残った僅かな人類は地下にドーム状都市『ヘイヴン』を建設し、そこでひっそりと暮らしていた。




 しかし、地下都市には定員があり、人口がある程度増えると市民を地上へと追放するという慣習があった。




 地下都市ヘイヴンを追放された彼ら(プレイヤーのこと)は、アウトキャストを名乗り、過酷な地上世界を逞しく生き抜いていく。




 さて、肝心のゲームシステムはどんなものかというと、まぁようするに和製フォールアウトのようなものだと思ってくれればいいい。




 FPS要素の強い戦闘。




 醜怪だが、ユニークでどこか愛らしいクリーチャーたち。




 バギーやホバークラフト、戦闘ヘリといった多種多様な乗り物。




 各所に点在するリアルな廃墟。




 拳銃にアサルトライフル、狙撃銃にロケットランチャーといったかっちょいい銃火器の数々。 




 多様な種族に癖の強い兵科。




 個性的で、狂気に満ちたNPCたち。




 そしてこれが一番大事なのだが、なんと日本人好みのアニメっぽいキャラでもプレイできるとのこと。




 それらの要素が我が国のゲーマーたちの心を鷲掴みにし、今では参加者に人数制限がかかるほどの超人気コンテンツとなった……らしい。




 玉兎のやつめ、なかなかおもしろそうなゲームを勧めてくるじゃないか!




 キラキラしたファンタジーとは対極に位置する泥臭い世界観に、おれの心は一気に鷲掴みにされた。




 それに戦闘がFPS形式なのはありがたいな。


FPSはそこそこ得意な方だ。


まぁ、大学受験やらなんやらでしばらく遊んでなかったけど。


腕はなまってないはず……多分。




 おれはさっそく公式サイトからゲームをダウンロードし、インストールを完了させる。




 おっと、ちょうどいいタイミングで玉兎からメールが来たようだ。




 メールにはアウトキャストの招待券と、「はじまりの街の酒場で待ってるよ、兄貴!私のプレイヤーネームはエリルだよ~!一緒に楽しもうね~!」との妹からの一文。




 「さて、アウトキャスト・オンラインとやら、どれほどのものか試してやろうじゃないの!」




 おれはVRゴーグルをかぶり、ゲームを起動させる。


そして、ゲームのスタートボタンをクリックした。


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