暴動鎮圧部隊隊長、イヴァーク

午前五時、起床した私はすぐさま業務連絡を端末で確認し、今日の予定を立てる。テロリスト共の活動も最近は活発になって来ており、大規模な戦いに備える必要もあるだろう。 


 幸い、私の部隊には優秀な人材がいる。テロリストをも打ち破ることが出来るだろう。朝食をとりながら思った。


 今日の仕事は新人指導だ。今年でもう50年になるが、新人教育には慣れない。テロリストとの戦いで命を落とす新人を見るのが、辛い。



 [イヴァーク様へ一通、メールが届いております] 端末から機械音声が聞こえた。メールの内容は、昨夜の警察署襲撃事件の犯人について詳しく書かれたものだった。


 坂井 弥太郎 52歳 職業:探偵

 前科:強盗殺人 窃盗 公務執行妨害

  犯行時刻に、フルフェイスヘルメットを被りコートを着て歩いていたという目撃証言あり。

 

 相変わらず物騒な街だな、ここは、メールを送って来たやつは暇人なのだろう。しかし、情報は確認してみる必要がありそうだ。新人指導の後に、情報課にでも行ってみるか。


  **************************************





 暴徒鎮圧部隊には、様々なスキルが要求される。ワープ対策、ミサイル無効化、レーザー反射、正確な射撃、無尽蔵の体力。それらを新人に叩き込み、優秀な隊員にすることが私の仕事だ。


 「イヴァークさん、宜しくお願い致します! 今日付で着任しました! メアリー•ガレットと申します!」


 女性隊員はいつぶりだ? 元気があってよろしいが、訓練にはついて来れるだろうか。


 「スウェーレシティ、暴動鎮圧部隊隊長のイヴァークだ。今日からメアリー、君の指導を任されている」


 「はい! どんなメニューでさえこなして見せますよ!!!」


 「本当に元気だな、だがその調子がどこまで続くかな? まずは基礎体力の確認から行くぞ。10kmトラックを100周走ってもらう、どんなメニューでさえこなせるのだろう?」


 彼女には厳しいかもしれんが、暴動鎮圧部隊にはこのぐらいの体力が必要だ。思い知ってもらおう。


 ランニングが始まった。メアリーは小さな体躯ながら、綺麗なフォームでトラックを駆ける。周りの隊員が驚くのが目に入った。私も信じがられない。


 100周するのにそう長い時間はかからなかった。メアリーは得意げな顔をして此方に走ってくる。汗ひとつ流した様子は無い、恐ろしい新人が入って来たようだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る