シンデレラ(締切10/9)

シンデレラ1

 こんばんは、シンデレラの父です。


 私は物語が始まる前、今で言う過労死でこの世を去りました。


 その後二番目の妻や義理の娘達はおろか、実の娘であるシンデレラにも忘れられていて、ろくに弔いもしてもらっていません。

 それも当然の事です。

 私は仕事ばかりで家族を顧みず、更にはシンデレラが虐待されていた事にすら気づかなかった。

 そんな男が神の元に行ける筈がありません。


 今は罰として姿を変えられ、この世に留まっています。


 さて、我が娘シンデレラのお話ですが、皆様は大方ご存知でしょう。

 ですが、私も少し絡んでいた事はご存知ないでしょう。




 それは、舞踏会の日。

 妻や義理の娘達が城へと出かけた後の事でした。


「ああ、泣くのはおよし」

「おばあさん、誰?」

「私は魔法使いさ、さてと」

 魔法使いの老婆は魔法で家を綺麗にし、我が娘シンデレラに綺麗なドレスを着せ、ガラスの靴を履かせ、かぼちゃの馬車を出し、鼠たちを馬に変えてくれました。

 それを見たシンデレラは笑顔いっぱいで馬車に乗って城へ行き、後はご存知の通りめでたく王子様と結ばれました。



 さて、私が何処に絡んでいたかと言いますと


 それは王子様が持ってきたガラスの靴をシンデレラが履いた後。

 魔法使いの老婆が現れ、シンデレラに魔法で綺麗なドレスを着せた後、祝福の言葉を送りました。


「おばあさん、いろいろありがとうございました」

 シンデレラは目を潤ませ、魔法使いに頭を下げました。

「いいんだよ、私が勝手にやった事なんだからねえ。それじゃあね」


「待ってください、ひとつお聞きしたい事があるのですが」

 王子様が魔法使いを呼び止めました。

「はい、なんでしょうかねえ?」

「あなたはもしや、シンデレラの亡くなられた母上では?」

 王子様がそう言うと、シンデレラもハッとして魔法使いを見つめました。


「おや、何故そう思うのですかいな?」

「お顔は似てませんが、雰囲気がそっくりです。もしや神様が母上を魔法使いとしてここに使わされたとかでは?」

「全然違います、私はその子の母親じゃありませんよ」

 魔法使いはそう言って姿を消しました。




 王子様、それはないでしょう。

 シンデレラは姿形もその雰囲気も全て母親そっくりです。

 決してこんなには似ていませんよ。


 ですが、そう言ってもらえて嬉しかったですよ。

 ありがとうございました。



 さてと、そろそろ私はお暇します。

 皆様、どうぞこれからもシンデレラを見守ってやってください。

 ごきげんよう。

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