第16話 エルフ無双?アフター・対問題児1 ジーノ編
「おー、二人とも制服がよく似合ってるな。さすがは美と戦闘力が売りのエルフ」
「ありがとうございます。嬉しいのですが、戦闘力の部分、必要ございました?」
「我が王も、制服でこそないですが、フォーマルな服装がよくお似合いですよ」
エルフの二人は魔法学園の制服。
学園に行った際、衆目を集めるのは必至である。
「さすがに制服はなあ……。その辺り、国王様が
セージの分の制服も用意はされていたが、今さら着る気にはなれないのであった。
「ですが、惜しむらくも足りない部分がございますね」
「ええ……セージ様はどのような服でも素晴らしくお似合いですが、もう少々」
「足らないもの? 万全のつもりだけど……魔法学園のバッジも付けてるし、他に不足ある?」
セージのバッジは普通の生徒のものとは違い特別性。
教師に匹敵する以上の発言力があることを示している。
「はい。至高の王専用の宝冠とマントが」
「愚民どもはどうやら王の威光が理解できない様子。なので、民度に関係なく理解できる装備を」
「よし、それじゃあそろそろ出かけよう。二人とも忘れ物はないな? 確か学園内にある演習場に直接集合だったか」
もし、【スルースキルのランク】などが存在するとしたら、現在セージが持つ数値はいかほどであろう。
悲しい上昇具合だった。
◇
そして学園内部。
「広っ! さすがは国内最高峰の育成機関。演習場だけでもこれだけスペースがあるのか」
「そういえば、実技試験には得意分野で
「我が王はいかがなさいます?」
「俺? せっかく王様の取り
「我々は受けます。当初、話題に出ていた攻撃魔法の
「王の偉大さを示すため、家臣の実力を見せて
「お、おう。誰に対しての
「セージ様……!」
「とうとう勇者としての自覚を……!」
「いや冗談で言っただけだから。そんな大げさな反応するなって。問題児二人の名前は確か……【ジーノ】と【ベガマイン】だったか。王様いわく、見ればすぐにわかるとか」
「というか……アレなのでは」
「露骨に女性から囲まれた男性が二人いますね」
アイナが指し示した先には、二人の青年。
それぞれに取り巻きがおり、その周囲からは黄色い声が上がっていた。
『まったくもう! ジーノったら非常識なんだからっ! 少しは
『ベガマインさん──貴方はやはり、
セージ達が聞こえたのは、そのうちのごく一部。
他にも取り巻きは複数人いて、それぞれが同じようなことを言っているようだった。
「……間違いなくアレだわ。ギルドで
「なにをおっしゃってるんですか。あんな
「我らエルフ。常に王を立て、一族
「少なくとも、あんな感じではねぇよ! お前らのはチヤホヤというより暴走して強制的に持ち上げてんだよ!! 俺の意向の反映度が
「あっ、セージ様! そろそろあちらで実技試験が始まるようですよ!」
「あの二人も攻撃魔法試験のようです! 参りましょう!」
「だから聞けよ!! なんで毎回、ここぞというツッコみを無視するんだよ!!!!」
三人はそのまま
セージは観覧席に。
エルフの二人もその傍に待機する。
試験は三人ずつ行われる形式。
それは予想通り、目標となる的に攻撃魔法を当てるもの。
それまでは各々、目に届く範囲であれば好きな場所で待機してよいのだった。
ただしもちろん、的と試験中の者からは一定の距離を取らないといけない。
「ふーん。得意魔法で的に当てれば合格ね。
観覧席に座ったセージがそうコメントしていると、さっそくエルフの一人、アイナの名前が呼ばれる。
同時に、問題児の一人であるジーノの名前も呼ばれた。
つまりはアイナ、ジーノ、他の参加者の三人一組である。
「おお、問題児と同じ組みか。アイナ、マニュアルにはちゃんと目を通してるな? 無茶はすんなよ」
重ねて注意喚起をするセージ。
「はい、もちろんです。王の顔を潰さないよう、気を付けて参ります」
名前を呼ばれた三人は所定の位置に
開始の合図もそこそこに、順番に魔法を放ち始める三人。
まず、合格したのはアイナとジーノ以外のもう一人の人物。
使用した魔法は【ウォーターバレット】で、威力はそこそこ。
しかし素晴らしい命中精度を誇り、的のど真ん中に水弾を当て、早々に決めたのだった。
次に撃ったのがエルフのアイナ。
使用するのはエルフ得意の風魔法。
これまた、【ウインドカッター】という魔法で的に命中させる。
本来は真空の刃が相手を切り刻むのだが、ここで全力を出す必要は欠片もない。
ほどほどの威力で
そして──問題児の一人に数えられるジーノの番が回ってくる。
「的当てか……まぁ、いけるかな。それじゃ──【フレイムアロー!】」
高まってゆく
それを見て慌てる試験官。
「えっ!? そんな魔力っ!!」
そんな制止も間に合わず、炎の
防護魔法をかけられているにも関わらず、炎上する的。
「よし、命中だ! ──あれ? 試験官さんや周りのみんながおかしい……? あ! これじゃまだ威力が足らないってことか! それじゃあ──【グラビティプレス!!】」
「待ちなさ──って、あああぁああ!?」
ジーノは追加で重力魔法を放つ。
膨大な魔力で放たれたソレは、標的をペチャンコにした。
もちろん、試験官の制止と悲鳴は聞こえていない。
それを見たセージは絶句した。
「………………」
「王よ、あの者……!」
「まさかマニュアルすら読んでいないとは……」
アイナは合格判定をもらった後、すぐにセージの元へと戻っている。
「まさかエルフと同じ感想をいだくとは…………はぁ~……」
もちろん、魔力や魔法の凄さから絶句したわけではない。
呆れてモノが言えなかっただけである。
『どうしよう。コレ、矯正するとかそういうレベルじゃ……ないんじゃない?』
問題児の酷さが想定よりも上すぎる。
国王へと提出する予定のレポートに問題点を記入しつつ……。
先のことが思いやられ、どうしたものかと考え込むのだった。
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