第11話 恐怖に震えるエルフアフター・勇者vs勇者
「ここが目的地の廃墟……」
「廃墟といいますか……」
「まるで、高級な宿みたいですね」
ギルドを出発したセージ達。
多少の障害はあったが、問題なく目的地に着いたのだった。
ここに至るまでは半刻ほど。
敵の護衛や賊にエンカウントするたびに、アイナかエルフィが瞬殺。
ほぼほぼストレートに来たので、本来はそこまで時間がかからないハズだった。
では、なぜここまで時間がかかったかというと──
『我が王が
『ええ! 玉座と共に調達して参りますので──半日ほどお待ちを!』
『いいけど。そう言っておけば構ってもらえると思うなよ? 君ら置いて、俺一人で行っちゃうよ?』
エルフ二人がゴネたからであった。
それはともかく。
廃墟というわりに、中は小綺麗に保たれている。
屋内に入ると敵も出てこなくなり、サクサクと歩を進めてゆく。
「ごめんくださ~い! 予告通り、エルフが来ましたよ~! 罪の告白の準備は出来てますか~? 自分で減刑しないと死刑もあり得ますよ~?」
周囲に呼びかけながら歩くセージ。
「あのう、セージ様」
「その
「え、何か間違った事実でも含まれてる?」
「いえ……」
「なんでも、ないです……」
エルフ二人は否定したかったが、考えるまでもなく否定できる要素がなかった。
完全に自業自得である。
「しかし、ホントにいるのかな。ここまで全然返事ないし、もう奥の部屋に着いちゃうんだけど」
「それなら奥の部屋にいるのでは?」
「最深部で待ち受けるなんて、王でもないのに生意気ですね」
そして、
「義理はないけど、とりあえずノックするか。チワーッ!! エルフでーす!! あなたの死神が来ましたー!!」
セージはノックしながら叫んだ。
「「…………」」
エルフコンビは腑に落ちない表情をしていたが、言葉が見つからず黙っていた。
「返事がないな。もしかして防音されてるのかな? よし、アイナ、エルフィ──」
「御意!」
「突入します!」
通達を終える前に二人は扉を
まるで八つ当たりをするかのような勢いで。
「はい、お邪魔しまーす。……おや?」
一行が室内に侵入すると。
「……え? どなたですの?」
その姿はセージと同じ黒髪黒目。
手には鋭そうな剣を持っている。
「ドーモ、エルフです。いや俺は人間ですけどね。ギルドからの先触れ、来ませんでした?」
「いえ、来てませんけど……。あれ!? 外を警戒してたゴローさんとトシローさんは!?」
「外を警戒? あ、もしかしてギルドの
「お二人は優秀ですので! えーと、その優秀なお二人なんですけど、どこかで見かけませんでした?」
「たぶん……横のエセ双子が瞬殺したのかなと」
「エセ双子……? え、その耳の形。もしかしてエルフ!? すごい、妖精みたいな美人! ホントにいるんだ! ファンタジー!!」
「エルフを知らない……? そういえば【なまはげ】って、一説には妖精の仲間だとかいう話も」
「我が王よ、なにも、今それをおっしゃらなくとも……」
「我々も、少しは良い気分に
「悪かったよ。それで、君が勇者で合ってる? 街や近隣の人に乱暴をした覚えは?」
「はい、私が勇者ですの。乱暴? 住民からお金とアイテムを貰うのは、勇者の特権なのでは?」
「なんでだよ、そんな特権は存在しないよ。俺も免税はしてもらってるけど、さすがに殺人許可証や
「いえ、これは【マサユキさん】がそうしろって。勇者らしい口調をしなさい、と」
「マサユキ?」
セージはキョロキョロと辺りを見回すが、他に誰かがいる気配はない。
「ここにいますよ。マサユキさーん、返事してください」
少女は剣に向かって呼びかけた。
(……なんだよ
「なんだこれ。頭に直接響いてる?」
「これが勇者の聖剣・マサユキさんです」
「は?」
「そのナマクラが……勇者の聖剣?」
そのワードはエルフの
『いや、お掃除棒の方がよっぽどナマクラだよ。ナマクラどころか木の棒だし。エルフって視力弱いのかな』
セージは心の中で悪態をつく。
(ナマクラとは随分な言い草だな。俺は見ての通りインテリジェンスソード。意志ある剣だ。これでも転生する前は人間だったんだぞ)
「転生……?」
(おう。なんつうか、生まれ変わりってやつよ。こっちの世界では無い考えなのか。ともかく、聖剣になった俺は、選ばれし者に絶大な力を与えられる存在になった)
「それは……なんというか──ご
(待て! なんで
「すごく言いづらいんだけど……何かの罰じゃないの? ソレ」
(は?)
「いや、だってさ。自分では動けないんでしょ? 例えば全く人のこない空間に何万年も孤独に放置されたとして──精神的に耐えられるもんなの? 俺は無理だな」
(…………)
「それに、無機物ってことは……食欲、性欲、睡眠欲。いわゆる三大欲求が無い。子孫も作れないし美味しいものも食べられない。元が男だったとして、そういう風に少女を見つけてもただ
「セ、セージ様……」
「我が王は時々、エルフよりも
「失敬な。エルフと一緒にはしてくれるなよ。俺は
だが言葉の暴力は振るう。
それが勇者。
「あの! 突然あらわれたアナタは一体、なんですの!?」
そこで置いてけぼりを食らった少女が、存在を主張するかのように声を上げる。
「俺? エルフと国王様が言うには勇者らしい。ここに来たのは治安維持のためだな。その『ですの』っていうの、やめたら? もし気に入ってるなら、余計なお世話だけども」
「ゆ、勇者!? マサユキさん、私以外に勇者がいるんですか!?」
(お、落ち着けカレン! ソイツは偽勇者だ! 俺を使いこなすお前こそが本物! 全力を引き出していいからソイツを倒せ!!)
「は、はい!!」
マサユキは
嫌な現実を直視しないよう、少女に
戸惑いながらも剣を構え、それに応える少女。
「お、対話で終われるかとも思ったんだけど……やるの? 無自覚みたいだから
「我が王! お下がりください!」
「ここは我々が! ナマクラもろとも
「いいよいいよ。対人戦かつ、剣は自分で動けないみたいだし。それじゃ、勝手に先制を貰うとして──禁忌魔法【ポンポンペイン】」
「ひ、ひいいぃいいいいい!?」
「あわわわわわわわわわ!!」
会話の最中、唐突に魔法を仕掛けるセージ。
それを聞いて恐慌状態に
その魔法はエルフの遺伝子にトラウマとして刻まれていた。
【ポンポンペイン】……とても凶悪な対人魔法。無機物や一部の魔物には無効。消毒魔法の【マキロウ】とは真逆の作用を持ち、お腹に存在する目に見えない魔物を活性化させる。あまりにもえげつないので、初代勇者も悪人とエルフにしか使用しなかった。
「なにを──アイタタタタ! お腹が痛たたたた!!」
「それ、弱設定だから。降参しなければ──問答無用でどんどん痛みを強くする」
「参った参りました! 乙女の尊厳が死にそうなので許してください!!」
「勝った」
まだ時間にして数分も経っていない。
少女の降参宣言を聞き、魔法を解除する。
「ポ、【ポンポンペイン】だけはご勘弁をぉおおお!!」
「靴でもなんでも舐めますので!!」
「いや、なんで味方の方がダメージの尾を引いてるんだよ。君ら、魔法食らってないだろ?」
「「…………」」
エルフコンビは何も言えず、なみだ目でプルプル震えていた。
「とりあえず自称勇者の少女は確保。聖剣は……どうするかな。なあ、もう一回転生? するのと、地中深くに埋められるの。どっちがいい?」
(………………
「そうか──その境遇、本当に同情するよ」
こうして、偽勇者事件は幕を下ろす。
後年、エルフの書にはこう記される。
『真の勇者に刃向かいし、偽りの勇者。王の怒りに触れ、その身には禁忌の厄災が降りかかる』
その文字は、書き手がまるで
震えたように、ヨレヨレだったという。
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