四話 第一村人

 んで、丁度朝日が登ったころなんだが……


 どうやって入ろうか。

 城壁を登ろうにも、なんか変な魔力が城壁を覆っていて、嫌な予感がするんだよな。だが、普通に入り口もないし。


 どうしたもんか。

 まぁ、城壁の周りを回ってみるか。


 朝日によって作り出される城壁の影に向かうように、俺は回っていく。そして朝日が全くもって見えなくなった西方面に行った時、目の前をフードを被った子供が駆けた。


 おっ、第一村人発見だ。

 こんな朝に小学一年生ぐらいの身長の子供が草原でかけているのは気になるが、まぁ、よし。彼について行こう。うん、多分男の子だろう。


 俺は今、小さなトカゲだが“身体強化”を使って、少年に追いつく。そして、こっそりと地面すれすれにはためくローブの端にしがみつく。

 そして、バレないように肩へとよじ登っていく。


 “隠密”も発動させて、より一層バレにくいようにする。


 んで、どうしよう。第一村人を発見した喜びから、つい肩へ乗ってしまったけど、この男の子がどう動くか知らないんだよな。

 まぁ、城壁の近くにいるから城壁内の子供だとは思うが、それにしても“魔力感知”で周囲の魔力を探っても、親らしき気配は感じない。

 男の子だけなのか?


 うーん。どうするか。

 いや、どうでもいいか。


 何かの縁だ。この子供に張り付いていよう。


 幼い子供の荒い息遣いが聞こえる。

 フードを被っているから、顔はよく見えないが、可愛らしい声だ。ただ、何となく肩の形や足つきから男の子だと思う。


 にしても何しているんだろう。この子供は。

 そもそも子供なのかも分からないんだよな。なんせ、ここはファンタジーの世界だ。子供体系の大人がいてもおかしくはないんだよな。ファンタジーだし。


 と、男の子について思いをはせていたら、男の子が急に止まった。そして、しゃがんだ。

 うん? どうしたんだろう。


 俺は男の子に気配が悟られないように、しゃがんだ男の子の手元を覗き込んだ。 

 あ、草を毟ってる。

 いや、毟っているわけではなく、採っていると言った方がいいだろうか。丁寧にとある草を根元から折って、右らへんに集めている。


 ……あ、男の子が採っている草は他の草よりも魔力が多く含んでいる。

 

 この世界の植物や鉱物など全てに魔力が含まれているのだが、しかし、中には含まれている魔力濃度がとても高い植物がある。

 その植物は食べるととても美味しいし、怪我の治りが早くなるので魔草と俺は呼んでいるのだが、男の子が採取しているのを見ると、人間の間でもある程度の価値があるんだろう。


「るバラくすrwるwか」


 男の子が呟いた。明らかに言葉だったが、意味が分からん。まぁ、その内わかってくるだろう。

 と、そう思ったら男の子から魔力が放出されて、男の子の目の前に集まってくる。そして、やがて男の子の目の前が青白い光で包まれたかと思うと、光が弾ける。


 そこには、広辞苑一冊が入るかどうかのポーチがあった。急に現れたのだ。しかも、それは魔力を纏っていて、その魔力は男の子の魔力だ。

 

 この世界にきて、魔物や鳥などに教われている内に個体ごとに魔力の色というか波動というかそういうものがあると分かってきた。まぁ、それは魔力感知の精度が上がったからなのだが。

 まぁ、それは兎も角、目の前のポーチからは男の子の魔力が感じられた。


 もしかして、魔法だろうか。それとも祝福ギフトだろうか。まぁ、分からない。


 けど、男の子はそのポートの中に先程採取した魔草を丁寧に仕舞っていく。それから全てが仕舞い終わったら、再び何か唱えた。

 そして、ポーチが青白い光に包まれて消えていった。


 それから、男の子は一声入れながら立ち上がり、駆け出した。躊躇いなく、草原をあっちこっちへと走る。

 そして、ところどころで屈んで、そのたびに魔草を採取している。魔草はある一定の範囲で群生しているのだが、男の子はだからといってその群生地二生えている魔草を全て採りつくしたりはしていなかった。

 

 群生を刈りつくしてしまうと、今後それが育たなくなるかもしれないのがキチンと分かっているのだと思う。

 大人に教えてもらったのか、そもそも男の子が大人なのかは判断がつかないが、それくらいの知識はあるらしい。

 まぁ、当たり前か。


 そうして、男の子に張り付いてから一時間後くらいに、男の子は草原を駆けるのをやめて、城壁の方へ向かって歩き出した。

 城壁へは駆けないらしい。

 落ち着いた足取りで、しかし、歩き慣れているのか前世の俺と同じくらいの速さで歩いている。小学一年生の体格でそれだけのスピードを歩いて出せるとは、普段から走り回っているのか。


 まぁ、一時間駆けまわってはしゃがんでを繰り返していたから、体力があるのは確実だったのだが。


 そして男の子は西門といえばいいのか、城壁についている鉄の門の前に立った。

 それから、コンコンと鉄の城門を叩くと野太い低い男性の声が聞こえた。


 それにしても、聴覚の感覚が前世の人間の聴覚と同じ感じだ。いや、前世よりも小さい音や高い音、僅かな振動が聞こえるようになったが、しかし、それでも聴覚が似ている気がする。

 そしてそれは視覚にもいえるのだが。


 と、そんな考え事をしていたら、鉄の城門の中についている小さな扉が開き、男の子はそこを通った。

 そして兵士みたいな男性に青白いカードを見せた。男性は頷いた。男の子は町中へと走り出した。

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