第三十七話 戦闘後のスリカ視点
クロノとの勝負に負けて、転移魔法で大佐の部屋に戻ってきた。
「いたた……」
デコピンの衝撃で、おでこが赤く腫れて痛い。
「そんな時は確か…………あった」
自分専用の異空間アイテムボックスから湿布を取り出しておでこに貼る。ひんやりとした心地良い感覚とともに、痛みはすぐ引いてくれた。
でも、勝負に負けた悔しさは引いてくれなかった。
自分の最下級魔法『ファイヤーボール』はとてつもなく巨大だけど、そんなに威力ないから効果が無いのはともかく、広範囲殲滅型中級魔法『ガトリングレイン』でも無傷だし、上級魔法である絶死の剣『ブラックデスソード』でも死なないし、約二十に重なっていた防御魔法もデコピンだけで全部破るし、そんなの……。
「反則じゃないか」
二人に聞こえないくらいの音量で呟く。
すると、何かを察知したのか、クロノが自分に視線を向けてきた。
だから頬を膨らませて拗ねておく。子供っぽいが、力では敵わないからこうして拗ねるしかできないのだ。
大佐はそんな自分を意地悪な目で見ながら、机の引き出しから勲章を取り出し、クロノの胸に付けた。
「おめでとう。
今日からクロノ。お前を『中佐』に任命する」
「ありがとう」
勲章を貰ったクロノは嬉しそうな顔をしている。
正直悔しい。
拗ねながら、クロノへ一言。
「ふん、すぐ自分がその勲章を奪ってやる」
そう言い放つと、大佐が意地悪な笑みを浮かべながら口を開く。
「そんなことを言っていいのかスリカ。もうクロノはお前の上官だぞ」
そうだった!
大佐の一言で、ガーディアンズの軍規が頭に浮かぶ。
上官への侮辱は確か……!?
思い出し、全身からだらだらと汗が出てきた。
確か、鞭打ち1,000回……。
悔しさと鞭打ちの恐怖が交わり、ぎこちない動きのまま、敬礼して改めて言い直した。
「……奪ってやります。クロノ……中佐」
……だが少佐である自分が、新米中佐相手に、そう簡単に屈してたまるか!
少佐というプライドですぐに恐怖を乗り越えた自分は、身長差があったので見上げるように目だけを上げて、キッと鋭い視線で圧を込めながらクロノ中佐を睨む。
自分の迫力に
が、あろうことかクロノ中佐は、睨みつける自分の頭を、動物を撫でるような手つきで撫でてきた。
そして一言。
「いいぞ、いつでも奪ってみせろ。スリカ少佐」
その余裕な態度に、悔しさが爆破しそうになる。
でも、ガーディアンズの少佐として、軍規はちゃんと守らないと……。
「ぐっ、ぐぬぬぬぬ……」
自分の悔しがる姿を見たクロノ中佐は、撫でていた手の動きをどんどん早くしていく――。
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