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で、その<コスプレ感溢れる変質者>は、
「いや~、師匠が死んだからあたしも一つ<修行の旅>とやらに出てみようと思ったんだが、見事に行き倒れてな。いよいよヤバさが半端なくなってきたところにお前達が見えたからなんか恵んでもらおうと思ったのだ」
などとそれこそ見も蓋もないことを。やっぱりロクでもない奴だった。でも、
「悪いが俺もこいつも食事を必要としてないから食べ物なんて持ってない」
正直に答えた。そうだ。ノーラは<ネクロゴーレム>で俺は<不死者>。メシを食わない程度じゃ死なん。まあ、ノーラはともかく俺は腹は減るから、だからこの先に集落でもあればメシにありつけるかなと思ってたんだが……
と、<コスプレ感溢れる変質者>は、
「そんなあ~……」
さすがにしおらしい様子を見せる。するとノーラが、
「そこに熊がいますよ? 捕まえれば食べられるんじゃないでしょうか?」
森の中からこちらに向かってノシノシと歩いてくる影を指差して言った。確かに熊だった。それもかなりでかい。グリズリーって感じだろうか。でもその瞬間、
「ゲッタァアア! ビィィィィ……っっ!!」
「やめろぉーっっっ!!」
<コスプレ感溢れる変質者>がいきなりヤバいことを口走りやがったのでツッコんだんだが、時すでに遅く、そいつが口にした<それ>以外の何物でもないって感じの<極太ビーム>が腹の辺りから迸って、正面の熊ごと森を抉っちまいやがった。
<魔法少女>が<ゲッ〇ービーム>ブッパするとか、何の冗談だ?
だがそれ以上にヤバいのがその威力だ。熊は影も形もなく、ビームが奔り抜けた山の斜面ごと森が抉られて、さらにその先にあった隣の山のどてっ腹に穴を開けちまったのが見えた。
「たかが熊一匹
俺は思わずツッコんだが、
「いや、でも、敵を相手に<なめプ>はするなといつも師匠が……」
とかなんとか言い訳始めやがった。一ミリも反省してなさそうな表情で。
「だからっていちいち環境破壊すぎんだよ! しかも肝心の熊まで消し炭どころか蒸発しちまってんじゃねーか! それじゃ食えねーだろ!」
俺も思わずそう口走ったが、
「でもマスター、他にも動物が……」
ノーラがまた指差しながら言うからよく見ると、なるほどビームが掠めてそれが致命傷になったらしい猪やらなんやらが<ビームが奔り抜けてできた道>の脇にちらほらと。
「にしたってやり過ぎだ! 加減ってもんを考えろ! お前今までどうやって生きてきたんだ!?」
俺が正直な疑問を口にしたら<コスプレ感溢れる変質者>は、
「いや、だからさっきみたいに道に倒れて……」
って、物乞いかよ!! 呆れる俺に、
「お前、面白い奴だな。みんなもっと同情してくれるんだが、お前みたいに怒ってくれた奴は初めてだ。あたしは<リョウ>。見ての通りの<魔法使い>だ」
だと。
……<魔法使い>……?
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