ネクロゴーレムと魔法少女と頭の中身が五十歳の十三歳の少年のパーティがなんやかやで旅を続ける物語

京衛武百十

ノーラとリョウとファロ

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「マスター。次はどちらに向かいますか?」


「そうだなあ。取り敢えずこっちに行ってみよう。集落でもあれば御の字だ」


「そんなこと言って。また思い付きだけですね?」


「ああそうだよ。でも、予備知識がない以上、あれこれ考えたって無駄だ。生きるも死ぬも運次第」


「死ねないマスターが言っても説得力がありませんよ?」


「ほっとけ!」


貧乳黒髪の十五歳の女の子の死体を素材にしたゴーレムである<ノーラ>は、俺が旅に出てから最初に仲間になった奴だ。『死体を素材に』って言ったら普通は<ゾンビ>を思い浮かべるかもしれないが、ノーラはちょっと違う。あくまでゴーレムを作る術式で作られているそうなので、<ゴーレム>なんだ。


<ネクロゴーレム>


と言うらしい。でも、死体を利用してるだけなのでノーラというのは後から付けられた名前で、基になった女の子の人格も記憶も引き継いでない。人工的に生み出された人格と術者の知る限りの知識を詰め込んだだけの、ロボットのような存在である。


材料は人間の死体でも魔法によって構成されていることからとんでもなく頑丈で力も強く、常識がないところもあるが知識だけは豊富だから、結構役に立ってくれている。基本は<使い魔の類>だからか俺を勝手にマスター認定してそう呼ぶ。


元の女の子が亡くなったのは、飢饉による餓死らしい。可哀想な話だがこの世界じゃ別に珍しいことでもないのでいちいち同情しててもきりがない。だから俺ももう切り替えてる。


こいつはネクロゴーレムの<ノーラ>だ。それ以外の何者でもない。ちなみに臭くはない。


そして俺の名前は、


<ファロ>


ただの<ファロ>だ。名字の類はない。別に珍しくもない<転生者>だ。前世で五十で事故死したな。


ま、興味はないだろうが、俺のことをざっと話しておくと、普通に家庭を顧みなかったことで嫁さんと子供に愛想尽かされて離婚されて、まあ、『切り替えていこう』とせっかくできた時間を活かそうと、憧れの<ケイターハム・スーパーセヴン>を買って峠を流してたら、センターラインをはみ出してきたSUVに突っ込まれて呆気なく死んだらしい。


で、こっちの世界で生まれ変わったらしいんだが、なんか頭のおかしい魔法使いに誘拐されて実験台にされてそれをきっかけに前世の記憶が戻ったらしいんだよ。


ファロとしての記憶も人格も残ってて、その上で前世の記憶にもアクセスできるようになったって感じか。人格はファロのそれで上書きされてるみたいだけど、五十のオッサンの記憶が乗っかってるもんだから、ま、一応は十三のガキだがものの考え方はすっかりオッサンだよ。


なんか、魔法使いの実験が成功したみたいで、どうやら<不死者>らしい。


とまあそんな感じで、<死ねない仲間>のノーラと、当てもなく旅をしてるところだ。


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