青春なんていらないと思ってました

天草 仙

転校

青春は残酷だ。何かに成功してもそれは青春。失敗してもそれは青春。誰かを死の縁に追い込んでもそれは若気の至りであり青春。そう。この世の大抵の事象は善か悪かの有無に関わらず、たった一言の「青春だから」で全て済まされるのだ。だが、本当にそれで良いのだろうか?以前の俺ならばそれを受け入れ許容していただろう。だが、今の俺は違う。「青春」に親友を殺され、心から「青春」を恨んでいる俺ならば絶対に受け入れはしないだろう。だからこそ俺は思うのだ、この感情すらも「青春」で済まそうとする奴らが心の底から憎いと。




「西木葵と申します。家庭の事情でこの街に引っ越して来ました。まだ、この学校や街に慣れておらずふてぶてしい所や至らない所があるかもしれませんがどうぞ宜しくお願いします。」

と俺こと西木 葵は親の再婚をきっかけに引っ越す事となり、今現在進行形で堅苦しい転校の挨拶を朝のホームルームでしている所だった。まあ、俺自身友達などは一切合切作る気はないし作れないと思うので、あくまでも集団に適応して快適に学校生活を過ごすためである。

「はーい!はーい!質問です!彼女って居ますか?」

っと俺が挨拶を終えたのとほぼ同時におそらくクラスの一軍の女子の中で2番目くらいに権力がありそうな少女がそう言ってきた。因みに権力うんぬんは第一印象に基づいた完全にただの偏見だ。

「居ませんよー」

「えーなら立候補しちゃおうかなー」

立候補?本当に俺と付き合いたいなら初対面のどこの馬の骨かもわからない男に言い寄ってしまうその貞操観念の歪みから問いただしたい所だがおそらくは冗談なので俺は作り笑みを浮かべその場をしのぐのだった。



あの挨拶から約1ヶ月。だんだんとこのクラスについて分かってきたことがある。まず俺の今の立ち位置だが、転校してから1週間は男、女関係なしに話しかけられたが今はそれも落ち着き毒にも薬にもならない無難な男子としてここでの地位を築いている。だが、それを許さんとばかりにこちらにちょっかいをかけてくる女が居る。転校初日に言い寄ってきた女、河野さらだ。河野は取り巻きを連れて遊びの誘いや飯の誘いをしてくる。そこまでは良かったのだが、少し気になる所があるのだ。俺はてっきり河野は頭が悪いただの女子だと思っていたのだがそうではなく、確固たる確証はないが分かりにくく摘発しにくい陰湿ないじめをしていると思われるのだ。というか河野に本格的に絡まれるようになってからクラスメイトから距離をおかれるようになったのだ。まあそれは良いのだが、俺は相当面倒くさいやつに目をつけられたみたいだった。

そんな日々を過ごしていたある日俺は河野から合コンに誘われていた。

「ねー!合コン来ない?」

といつもの不気味なくらい純粋無垢な笑みを浮かべ河野が俺の手を握ってきた。

「メンバーはうちのクラスの港さんと他クラスの佐田さんだよー!男子は葵くんと他校の男子2人呼んどくね!」

他クラスの佐田という女子は知らなかったが、港という女子は知っていた。港は無口だが学業優秀であり、人形のように整っている顔をしていることこらクールビューティーとしてこのクラスで確固たる人気があるのだ。ちなみに河野がこのクラスで2番手だったと思ったのは港が居たからだったりする。

まあ、実際は河野の尻に敷かれて居るようだが。

こうして俺はとりあえず河野は敵に回したくなかったので一応参加することにするのだった。


~次回~メインヒロイン登場します!次回がこの作品の真のメインの部分なので読んで下さったら嬉しいです!!!

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