第59話 うーんっと頑張る!
「お初にお目にかかります。ソフィア様。
古代の子エルフの末裔のソフィア様に会えるとは……」
ルヴァイス様の膝の上に座って、私はもう何人目かになる貴族の人に挨拶をされた。
あれからルヴァイス様は徐々にだけど回復している。
呪いが完璧にとけたわけではないけれど、体に過剰だった瘴気を払ったことで痛みは消えたみたいなの。
薬を飲んでしばらくしてから、ルヴァイス様に、
「もし私に何かあった場合、研究所を守ってもらいたい。ともに歩んでもらえるだろうか?」
って聞かれたから、もちろん「うん」って答えたんだ。
私に苦労をかけるかもしれないけれど手伝いしてほしいってルヴァイス様が頼ってくれた。
すごく嬉しかった。
私だってルヴァイス様の婚約者だもの、お仕事は半分!苦労も喜びも全部半分こ!
ちゃんと手伝えるって紙に書いたら、すごく優しい顔でありがとうって言ってもらえた。
ルヴァイス様はいつも私を守ってくれたんだもの。だからルヴァイス様が大変な時は私だって頑張るよ。
こうやって竜王国の貴族の人達と会うのもそのお仕事の一環。
【ファテナの花】の栽培は「私」の許可なくはできない事になっている。
厳重に管理された貴族の庭園でしか栽培は許されない。
【聖気】と【瘴気】のバランスを考えて、テオさんの宮廷魔術師たちの指示のもと厳重に栽培される。だから皆私に許可がもらいたくて私に会いにくるの。
私は言葉が喋れないから、ルヴァイス様の膝の上で笑っているだけで会話はすべてルヴァイス様が対応してくれている。
一応私もエリクサーは飲んでみたんだけど、私の喉は治らなかった。
ジャイルさんが言うにはたぶん喉も外的要因じゃなくて【セスナの炎】の呪いなのかもしれない。
だから私はニコニコしているんだ。役に立てているか不安だけれど、ルヴァイス様はそれだけで助かるって言ってくれたから。
なんだかデイジアになったみたいで、ドキドキする。
聖女ってこんな感じだったのかな。
こんな緊張することを何時間もしていたのは純粋にすごいと思う。
研究所の聖気のいらない作物ももう少ししたら徐々に貴族たちに作らせるって言っていた。
聖気のいらない作物や【ファテナの花】が世界中に広まれば、教団の力は一気に弱まる。
リザイア家も竜神官達も横暴なことができなくなるんだ。
教団の力が弱まれば誰も研究所の研究を邪魔する人はいなくなる。
きっと世界はいろいろ便利になるはずだよ。
ルヴァイス様の目指した世界。
レイゼルさんの目指した世界。
研究所のみんな。
そして私の目指す世界。
その夢をかなえるために、ルヴァイス様に頼り切りじゃなくて頑張らなきゃ!
◆◆◆
「今日はすまなかったな。
何があっても私が守ると約束したはずが結局はソフィアの手も借りなくてはいけなくなった。
矢面に立つ形にしてしまって申し訳ない」
謁見の間でたくさんの貴族との面会を終えて、私のお部屋に戻ると、ルヴァイス様が私の頭をなでてくれた。
護衛の人たちは扉の前で待機していてくれている。
ルヴァイス様は私を私のベッドに卸して座らせると、目線を合わせるためか、跪いたポーズになる。
『大丈夫だよ! 夢のためだもの私も頑張らなきゃ!』
そういうと、ルヴァイス様が微笑んでくれた。
でも――。
私はかがんで私の前にいてくれるルヴァイス様の顔をなでなでしてみた。
「ソフィア?」
寝込んでいた時期が長くて、ルヴァイス様はだいぶほっそりしてしまってる。
私を守ってくれようとして、お薬を減らしたせいで、ルヴァイス様の呪いは進行してしまった。
すごく痛そうで、辛そうで。もうルヴァイス様が苦しむ姿は見たくない。
今だってエリクサーで瘴気を消して治したけれど、呪いが消滅したわけじゃない。
ルヴァイス様の呪いは瘴気を吸い込んでしまう呪い。
また無理をして瘴気をため込んだたら大変だもの、倒れちゃう。
『私を守ってくれるのはすごくうれしい。でももう一人で無理をしたら嫌。
だから手伝えてうれしいよ。ルヴァイス様は謝らないでほしいの。本当に役立てて嬉しいから』
私がそう紙に書くとルヴァイス様は驚いた顔をして、目を細めた。
「……そうだな。
これからはソフィア、そなたの力も借りたい」
その言葉に嬉しくて私はうんって頷いた。
うれしいよ。こんな私でもルヴァイス様の役に立てるのはすごくうれしい。
『ルヴァイス様の役に立てるならなんだってする!』
そう書いたらルヴァイス様は私の頬にキスしてくれて
「愛してる。ソフィア」
そう言って、またおでこにキスを「それでは残りの仕事にいってくる。ソフィアはゆっくりやすみなさい」とお部屋をでていった。
……。
………。
いま、キスされた。愛してるって言ってもらった。
他に誰も見ている人がいないのに。
私はあわあわと周りを見回した。
お部屋にいるのはキュイだけでキュイが不思議そうに『キュイー』って私を見るの。
ルヴァイス様と入れ違いにクレアさんが部屋にはいってきてどうかしましたかっていうの。
『な、なんでもないっ!!』
私は紙に書いてそのままベッドにもぐりこむ。
きっとルヴァイス様は疲れてるだけ。
ずっと番のふりをして謁見の間で演技をしていたから癖でやっちゃっただけ。
だって茶髪で醜い私がそんなこと言ってもらえるわけないもの。
それでも……。
ルヴァイス様に愛してるって言ってもらえたのがうれしくて、私はベッドの中でゴロゴロする。
うれしいな。うれしいな!
私もルヴァイス様が大好き!
うーんっと頑張るからね。ルヴァイス様!
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