第37話 デイジア視点


「アルベルトが会ってくれないってどういうこと!?

 私の婚約者でしょう!?」


 王城前の門で、デイジアをのせた馬車は門番に拒まれた。


 神殿を追い出されてからというものデイジアの境遇はひどいものだった。

 掃除や、洗濯、庭の手入れなどを、侍女たちにいびられながらやらされている。


 デイジアの母グラシアもグラシアの兄の娘が聖女になったことで、神殿を追放となり権力をふるえなくなった。


 デイジアがこのような不遇な境遇から逃れるにはアルベルトに頼るしかないのだ。

 それなのにアルベルトはデイジアに会ってくれようともしない。


「先ほどお話した通りです。

 アルベルト様との婚約はデイジア様が一方的に破棄されたはず。

 アルベルト様はリザイア家のラシャ様の妹レーテル様と婚約のお話が進んでおります」


「そんな!!アルベルトは私の大切な婚約者よ!!」


「門の前で誰が騒いでるかと思えば君か」


 門番と揉めていると、アルベルトが歩み寄ってきた。

 アルベルトの姿を確認してデイジアは目を輝かせる。


「アルベルト!!会いたかった!!」


「会いたかった?竜王と結婚すると私を先に捨てたのは君だろう?」


「そ、それは母が勝手にやったこと、心はずっと貴方に!!」


「私は君の身分に惚れたんだ、君だってそうだろう?

 自己顕示欲が強くてわがままなお前などに誰が惚れるか。

 君のせいで私は大恥をかいたからね。

 竜王に投げられた情けない男と陰口をたたかれてる。

 全部お前らに関わったせいだ。

 不愉快だもう来ないでくれ」


 そう言って去っていくアルベルト。


 デイジアはただ門の前で情けなく立ち尽くす事しかできない。


 許さない。なんでこんなことになったの。

 私は今頃竜王陛下に嫁いで誰にも慕われる【金色の聖女】になるはずだったのに。

 どこで、どこで歯車がくるったの?


 デイジアはへたりと地面に座り込んだ。

 隔離された屋敷から抜け出してやっとアルベルトのもとにたどりついたのに、自分にはもう何も残っていない。


 いまさらすごすごと、あのぼろい屋敷に戻ることもできない。


 こんなことになったのもあいつのせいだわ――。


 デイジアの竜王陛下を奪ったソフィア。あの妹さえいなければ、デイジアは今頃竜王陛下と結婚し【金色の聖女】と皆から慕われていたのだ。


 そうよ、全部あのソフィアのせいよ。

 絶対、なにがなんでも復讐してみせる。


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