第19話 はじめてのケーキ

「どうぞ、ごゆるりとお楽しみください」


 聖王国をでた後、竜王国につくには何日かかかるらしくて途中でホテルに泊まった。

 馬車を降りると、すごい豪華な建物に通されたんだ。

 私は豪華なベッドのあるお部屋に案内されて、そこにあったテーブルにはお菓子がいっぱい並んでいた。


「警備の関係でこちらでのお食事となります」ってテオさんがなぜか申し訳なさそうに言うの。


 凄い。これ食べていいのかな?


 いっぱい並んだお菓子に私は思わず、テオさんの顔を見てしまう。

 だって見た事のないようなお菓子がテーブルいっぱいに並んでる。

 昔デイジアだけはもらえていたけれど、私は決して貰う事のできなかった甘いお菓子。

 おばあ様はお菓子は駄目って考えだったし、お母さまはデイジアにしかあげなかった。


 だから私はお菓子を食べた事がないんだ。


 一度お母さまに「食べなさい」って言われて食べようとしたら、「本当に食べようとするなんて意地汚い子」って怒られたことがあったの。

 レイゼルさんと住むようになってからは甘いクッキーは作ってもらったことはあったけれど生クリームとかきれいなケーキとか名前のわからない美味しそうなお菓子は、はじめて!いろいろあって、私は思わず唾をのむ。


 これはやっぱりルヴァイス様用のお菓子だよね。


 食べちゃ駄目だよねって見ていたら、テオさんが困ったような顔をして


「お菓子はあまり好きではありませんでしたか」


 と、言うの。違うよ。そうじゃない。


『これ食べてもいいの?』


 私が紙に書いて聞くと、テオさんは驚いた顔をして

「ああ、これは言葉がたりなくて申し訳ありませんでした。

 どうぞソフィア様がお召し上がりください」って微笑んでくれた。


 キュイも嬉しそうに「キュイー」ってお菓子を食べだすの。


 凄い。あこがれのケーキだ。

 

 どれから食べよう。あれも美味しそうだし、赤いのも美味しそう。

 白いふわふわしたものが乗ってるのも、シャイの実がいっぱい乗ったケーキもきれい。

 どれもみんな美味しそうでどれから食べたらいいのかわからない。

 私がじーっと見ているとテオさんがやっぱり困った顔をして。


「何かお気に召しませんでしたか?」


 っていうの。私はぶんぶん首を横にふって


『どれから食べようか迷ってるの』


 紙に書くと、テオさんが手を顎にあてた。


「ああ、なるほど。好きな種類をと思いましたが選択肢が多すぎるのも確かによくありませんね。

 では私のお勧めをお皿にとりますがよろしいですか?」


 そう言ってくれたから、私はうんうん頷いた。

 何個かお皿にとってくれて、私の前に置いてくれる。


『ありがとう。テオさん』


 私が紙に書くとテオさんが微笑んでくれた。


 赤い色のソースのたっぷりかかったケーキを食べると凄く美味しい。

 

 凄い、甘くてとってもおいしいよ!!


 私がキュイに振り返ったらキュイはもうほっぺにいっぱいつけて食べていた。


「お口にあいましたか?」


 私が嬉しくてほほ笑むと、テオさんがまたお勧めケーキをお皿にとってくれる。


 すごいね。お姫様になったみたい。テオさんがとってきてくれるお菓子は全部美味しくて、私は嬉しくていっぱい食べるんだ。


 ……こんなに美味しいのに一人だけで食べるのもったいないレイゼルさんにも食べさせてあげたかったな。


 そんなことを考えていたら、服を着替えたルヴァイス様がお部屋に入ってきた。


「あー」


 私がお辞儀しようと立ち上がったら、ルヴァイス様が手をあげて


「いや、そのままでいい。食事を楽しみなさい」


 そう言って私の前の席に座った。


 私一人食べていていいのかな。ルヴァイス様にも分けないと!?

 私がルヴァイス様の分をとるか迷っていたら、テオさんが笑って


「竜王陛下は甘いものは苦手ですから、お気になさらず、どうぞお食べください」


 そう言くれる。でもどうしよう。デイジアの時みたいに後から怒られないかな?

 私が迷っていたら、ルヴァイス様がふむって頷いた。


「ソフィア。これから大事な話がある」


『大事なお話?』


「まず、竜王国にもリザイア家に相当する「竜神官」たちが女神アルテナを祭るラウシャ教が存在する。

 それはわかるか?」


 私はうんって頷いた。それは聖女のお勉強をしているとき習ったよ。

 竜王国はラウシャ教の竜神官達が聖杯ファントリウムで竜王国に【聖気】をまいているから、リザイア家の権威が及ばないって。

 

「おそらく、ソフィアを妃にすると竜神官達に通達すれば、奴らは必ず反対するだろう」


 その言葉に私はびくっとなる。

 どうしよう。竜王国でも私はいじめられるのかな?


「もちろん、全力で守る。だが私一人では限界はある。

 そこでソフィア、そなたに協力をしてもらいたい」


『協力?』


「ああ、ソフィアの地位を確立するために私の婚約者となってもらうことは話したと思うが……」


 うんうん。婚約者になることでリザイア家から私を助けてくれたんだもん知ってるよ。


「竜神官達を黙らせるためにはさらに演じる必要がある」


 やるよ! ルヴァイス様が私を助けてくれて研究を手伝ってくれるんだもの!

 私も頑張ってルヴァイス様の役にたたなきゃ!


『うん!がんばる!!』


 私がそう書くとルヴァイス様は笑ってくれた。

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