131.冒険者ギルド調査

 王命として冒険者ギルド王都支部に調査が入った。

 王都には国内の冒険者ギルドをまとめている本部と王都内からの依頼を受ける王都支部がある。

 冒険者ギルドは国ごとに運営されているもののそれらをまとめる総本部がアッジリアにある。

 男爵家ではとても冒険者ギルドには手を出せないので助かる。


 俺たちは王室でお茶を飲んだりして時間をつぶした。

 街にもまた繰り出していろいろな食べ物を買った。


「すみません、砂糖と塩、コショウをください」

「はいよぉ」


 香辛料屋さんへ行って調味料を買う。

 砂糖もここの管轄だった。

 大きな袋で買ったらオマケしてもらえたのでお得だった。

 またエルダニアには戻るつもりなので、金貨の残金と相談しながら買えるだけ買う。

 いくらあっても余ることはない。

 賞味期限とかもないので一生分買ってしまってもいい。

 どうせ俺にはアイテムボックスがある。


「坊主、ずいぶん買ってくれるじゃないか」

「地方都市へ持って帰りたかったもので。向こうだと輸送費が掛かって高いんです」

「あぁだろうなぁ。いやぁ目ざとい子もいるもんだ」


 店主なのか若いお兄さんに声を掛けられた。

 店主というよりはその息子みたいだ。


「ミルクティー飲んでくか?」

「あ、ありがとうございます」


 みんなでぞろぞろきたので奥へみんなで行く。


「その子たちはお友達かい?」

「いえ、その、お嫁さんです」

「あははは、お嫁さんか。こりゃ傑作だ」

「あはは」

「いいねいいね。そういうしっかりしてるところもいいね」


 なぜか俺の評価がいい。


「紅茶美味しぃ」

「おいち」

「うまいみゃう」


 お紅茶にミルクティーは砂糖も入っていてとても美味しかった。

 さすがこういう商売をしている店だけはある。


 こんなふうに一週間ばかり。


 また王宮の応接室に通された。

 今回は王様と秘書の人だけだった。おじいちゃんはいない。


「エド、ごほん。報告だ」

「はい」

「冒険者ギルドだが、ちょっとやっかいでな」

「どうしました?」

「どうも名簿にある人物の送金のうち宛先が定かでないものを誤魔化すようにという上からの指示だったらしい」

「じゃあギルド職員は」

「命令に従っただけだな」

「ふむ。それで上というのは」

「それがなギルド副会長の側近という金髪男が一番怪しいということになった」

「金髪ですか」

「王家の血が入ってそうだな」

「えっ、ああ、はい」


 隔世遺伝で黒髪が出る王家だけどほとんどの人は金髪だ。

 金髪の人は珍しくはないものの庶民は茶髪が多いので金髪がほとんどというのは血筋だ。

 金髪の男性と言われたらまっさきに思い浮かぶのは上級貴族だ。


 ここで俺がギードさん家の話をする。

 エルフ諸侯はティターニア正教会を信仰していて俺たちラファリエ教会派と対立関係にある。

 この国の貴族の中にもエルフと血縁関係があってその中に矛盾しているようだけどティターニア正教会の信者がいるのではないか。


「わかった。なるほどな。だとすると一番怪しいのはクメールバルミサン家だな」


 なにやらあたりをつけたらしい。


「エルフ諸侯と婚姻関係がある。通じているのだろう」

「なるほど」

「それで不正行為をしたギルド職員は」

「ああ全員捕まえたよ。全部で十三人だ。国外追放の上奴隷落ちだな」

「奴隷落ちか」


 奴隷労働は厳しいものがある。

 よくあるのは船の漕ぎ手だ。場合によっては命を落とす危険な仕事が多い。

 職員の中にはもちろん女性もいる。

 若い女性の奴隷とかもう何に使うかなんて分かり切っている。

 命令されたとはいえ可哀想ではあっても罪は罪だ。


「首切りは」

「それは首謀者だな。待ってろよ。必ず尻尾を掴んで見せる」


 それからさらに一週間。

 当初予定を大幅に超過しているけど、おじいちゃんは何も言わない。


「なあに何日でも泊っていきなさい」

「ありがとうございます」


 とても寛容な人だった。

 お金だってかかるだろうに、微塵もそんなそぶりを見せない。

 これが貴族というもなのだろう。感心してしまう。

 ご飯も美味しいものをいただいて、たまに王宮から手紙や呼び出しがある。


「見てみてみて、海だよぉ、船があるうぅぅ」


 ミーニャも大興奮。

 ラニアまで目を丸くして見つめていた。

 シエルなんてぴょんぴょん跳ねて頭ががくがくしそうになっていた。


 大型帆船がずらりと五隻は並んでいる。

 向こう側の埠頭には漁船がたくさん係留されているのが見える。

 今は夕方で漁の時間ではないのだろう。

 おそらく漁は日の出から昼頃までだと思う。


 手前の大型帆船はマストがいくつもあって白い帆が張られていた。

 もうすぐ出航するのだと思う。

 残りの帆船は帆を畳んでいた。


「ほら船が出ていくよ」

「「「おぉおぉお」」」


 やはりそうだったようで船が出ていく。

 大きな船が動いているところは圧巻だ。

 帆船だけど半ガレー船のようで漕ぎ手用のかいが見える。

 同じタイミングで同じように櫂が動いている。


「どこまで行くんだろうな」

「遠くだよぉ、ずっと遠くうぅぅぅぅ」


 水平線を指さしてミーニャが叫ぶ。


「ミーニャも遠くいきたい?」

「うんっ、いつか一緒に行こ」

「おう」


 そうだった。魔族が治めるラトアニア大陸にも一緒に行ってくれると前に話していた。

 俺さえいればどこへでもついてくる気でいる。


 かわいいお嫁さんたちを横目に船を往来を眺める。いい天気だ。

 これで早く首謀者が捕まるといいんだけど。


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