第8話 ほのぼのダンジョンでピンチ
「ユノちゃんこんにちは~」
「こんにちは!!今日もよろしくお願いします!!」
大会まであと3日となった木曜日。
今日もサクラの下で、のの花と花音はレベル上げに励む…
はずなのだが。
「あら?ユカちゃんはどうしたの?」
「ああ~、ユカは補習になっちゃって……。課題も出るので今日は来れないそうです」
のの花が苦笑いを浮かべた。
花音はテストで赤点を取ってしまい、放課後も学校に残っているのだ。
かくいうのの花も、あと2点低ければ補習だった。
「そう、残念ね。だけどイベントは待ってくれないし……。今日は2人で頑張ろっか」
「はい!!それで、今日はどこへ?」
「今日はいよいよ、ダンジョンに挑むわよ」
「おお!!」
「ダンジョン」というワードに、のの花は俄然ワクワクしてきた。
今までモンスターを狩ってきた野外エリアに比べて、ダンジョンは報酬がいい。
その分、出てくるモンスターも強くなるが。
「じゃ、行こうか。まずは西側にある、ゴブリンがいっぱいのダンジョンよ」
「は~い。お願いします!!」
2人は街を出て、ダンジョンのある西の森の中へ入っていった。
「ここが、ダンジョンの入口よ」
サクラが、石でできた重そうな扉をポンポンと叩く。
この中に、大小さまざまなゴブリンが住み着いているのだ。
「モンスターに関しては、今のユノちゃんなら十分倒せると思うわ。今日は、ジョブチェンジした時の装備交換をいかに素早くやるかとか、どのタイミングでどのスキルを使うかとか、よりイベントを意識してやってみよう」
「分かりました。待ってろ~、ゴブリン!!」
ユノが石の扉をグイっと開いた。
中は洞窟のようになっていて、かなり薄暗い。
早速ゴブリンが出てくるが、それをのの花は短剣で斬りまくって突き進んだ。
小さなゴブリンなら一撃、中くらいのサイズでも二、三撃で倒せている。
AGIが比較的高いので、ゴブリンの投石や剣での攻撃も軽々避けていった。
ウサギやリスなら少し躊躇するのの花だが、ゴブリンはかわいくもモフモフでもないので容赦なく倒されていった。
のの花は無事被ダメ0のまま、ボス部屋の前までたどり着いた。
入り口と同じような石の扉を開き、より薄暗さの増している部屋の中へ入っていく。
のの花が部屋の中央へ恐る恐る進んでいくと、パッと部屋が明るくなった。
部屋をぐるっと囲むように配置されていた松明に火が付き、部屋の全体を照らし出す。
のの花は、自分の周りの地面の色が暗いことに気付いた。
ゆっくり上を見上げると、桁違いにでかいゴブリンと目が合う。
「わあああああ!!」
のの花は驚きのあまり大声を上げた。
ゴブリンはこちらを見つめて、よだれを垂らしながら「うぅぅぅ」とうなっている。
「ユノちゃん!!こいつがこのダンジョンのボス、キングゴブリンよ‼頑張って倒して!!」
「分かりまし……たぁぁぁぁ!!」
のの花が答え終わらないうちに、キングゴブリンが右手に持ったこん棒を振り下ろす。
間一髪で避けたが、こん棒は土の地面に大きなクレーターを作った。
それを見てのの花は震えあがる。
「うぅ、これじゃ迂闊に近づけないなぁ……」
基本的にのの花は、剣士(短剣)で攻撃・盾使いで防御・回復士で回復という戦闘スタイルを取っている。
近づけないのは短剣使いにとって大きな痛手だ。
「HPも高そうだし、地道に削るし……かぁぁぁぁ!!」
のの花が頭の中で作戦を練っていようと、キングゴブリンは構わず攻撃してくる。
地面に2つ目のクレーターができる。
今度はこん棒がわずかにかすった。
HPゲージが15%くらい減少する。
かすっただけでこの威力だ。
「わわ!!まずい!!装備交換しなきゃ!!」
のの花は急いで、回復士の装備に交換した。
リュウの店で買った木製の杖に、スノーラビットの毛皮で作った真っ白でモフモフな服だ。
この杖と服には、与える回復効果を上昇させる働きがある。
剣士の装備と回復士の装備では、回復スキルの効果が大違いだ。
「【回復・中】!!」
最初のスキルガチャで手に入れた【回復・微小】の2段階進化スキル、【回復・中】を使う。
HPの10%程が回復した。
回復士には回復スキルのクールタイムを短縮する補正があるため、SPさえあれば回すことができる。
取りあえず、死ぬ心配はなさそうだ。
「問題はどうやって攻撃するかだよね……」
キングゴブリンはこん棒を地面と水平に持つと、体を軸にしてぐるぐる回り始めた。
回転しながら、のの花に向かってくる。
より、近づけなくなった。
「もいっちょ、装備交換!!」
盾使いの装備に切り替え、木製の大盾を構えるのの花。
ただキングゴブリンの回転はどんどん加速していく。
のの花は、この盾でこん棒を防げる気がしなかった。
「えっと……逃げる!!」
のの花はAGIに補正のかかる剣士の装備に交換すると、部屋の中をあちこち逃げ回った。
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