第2話 ほのぼの初戦闘
「何でこんなスキルが、HRなんだろう……?」
キャラメイクを終え、スタート地点である第一層の広場に降り立ってからも、のの花はステータス欄を見つめて首をかしげていた。
ユノ
Lv1
ATA:21(+3)
DEF:21(+3)
AGI:28(+3)
DEX:15
LUC:15
HP:40
SP:20
《使用可能装備》
初心者用短剣
《スキル》
N【回復・微小】
R【虚像分身】
HR【雑用】
「雑用って、もう名前からして強くないよね……はぁ……」
ATA、DEF、AGIには、短剣を選んだことで+3の補正がかかっている。
これはジョブ補正といい、選んだジョブごとに若干ステータスが向上するのだ。
「お待たせ~」
ステータスを見つめるのの花の肩を、キャラメイクを終えた花音がポンポンと叩いた。
手には弓矢を持っている。
「待ってないよ~。花音……じゃなかったユカは弓矢にしたんだ」
VRMMOにおいては、お互いが知り合いでもプレイヤー名で呼び合うのが基本。
「うん。ユノは短剣かぁ。いいね。あ、とりあえずフレンド登録しよ?」
「そうだね。えっと、私のIDはこれ」
「了解」
フレンド登録を済ませると、花音は苦笑いを浮かべながら言った。
「スキルガチャ、あんまいいの出なかったよ。ユノはどうだった?」
「私はね、一応HRが出たんだけど」
「え?嘘マジで?最初のHR排出確率って、確か0.05%だよ?さすがユノ……運がいい……」
「いや、出たはいいんだけど……私のステータスの、スキルのとこ見てみてよ」
フレンド登録をすれば、お互いのステータスが見られる仕様になっている。
花音はフレンド欄からのの花のステータスを見て、やはり首をかしげた。
「何これ?名前もひどいし、効果もほぼ使えないじゃん」
「だよねぇ。なんでこんなのがHRなんだろ」
「まあ、ガチャでいいスキルが出なくてもそんなに気にしなくていいって攻略サイトに書いてあったし、取りあえずここから動いてみようよ」
「そうだね。まずはどこに行けばいいんだろう?」
「う~んとね……」
2人はきょろきょろと辺りを見回した。
今いるのは第一層中央部の街。
ここにはアイテムショップや鍛冶屋などの商店エリアがある。
周りをぐるっと囲む城壁の外に出れば、モンスターのいる探索エリアだ。
「街の近くのモンスターなら初期装備でも倒せるらしいし、初討伐行ってみる?」
「分かった。じゃあ、レッツゴー!!」
「ゴーゴー!!」
2人は仲良く並んで、鼻歌交じりに歩き出した。
城壁のすぐ外は広い草原になっていて、ちらほらモンスターと戦っているプレイヤーがいる。
そのほとんどが、のの花たちと同じ初期装備だ。
「この辺のモンスターは結構狩られてるね……もうちょい、奥に行ってみようか」
「え~、でもそっちは暗い森だよ~?」
「大丈夫だって。モンスターのレベルはそんな変わんないから」
心配そうなのの花をよそに、花音はずんずんと進む。
仕方なく、のの花も後を追った。
「この辺は、あんま人いないね」
「そりゃ、こんな怖いところ初心者の装備で来たくないよ……」
のの花はびくびくして、花音の陰に隠れている。
「あ、いた!!モンスター!!」
「ひぇぇぇぇ!!」
花音の声に、のの花が悲鳴を上げる。
笑いながら花音が言った。
「ほら、モンスターっていってもリスだよ?かわいいって」
のの花がこっそり覗くと、花音の前にいるのは確かにちょっと大きいくらいのリスだ。
途端に、のの花は悲鳴を上げていたのが馬鹿らしくなった。
「倒して……いいんだよね?」
「そりゃ、モンスターだもん」
「倒さなきゃ……ダメなんだよね?」
「そりゃ、モンスターだからね」
「あ、でもかわいそう……」
「いや、だからモンスターなんだって……」
もともと、のの花はウサギやハムスターなんかのモフモフした動物が大好きだ。
こちらを見つめているリスも例外ではない。
「ちょっと撫でるくらいなら……」
「あ、ちょっ、危ないって」
花音が止めるのも聞かず、のの花はリスに手を伸ばす。
「いったぁぁぁ!!」
当然、噛みつかれた。
HPが1減少している。
「だから言ったのに……」
あきれ顔の花音を振り返って、のの花が「ひ~ん」と涙を浮かべる。
後ろから、リスが容赦なく引っ搔いた。
「あぎゃぁぁぁ!!」
再び響くのの花の悲鳴。
花音はため息をついて、弓矢を構えた。
「ほら、のの花どいてて」
のの花がどくとすぐに、ひゅうっと矢を放つ。
数mの至近距離、さすがに外すことはなかった。
リスの体が、一撃で光となって消えていく。
『モンスター初討伐を達成。称号 《駆け出し冒険者》を獲得しました。』
「ああ!!リスぅぅぅ!!」
「そっちかよ!!」
のの花の悲鳴と花音のツッコミが、静かな森に響き渡った。
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